前の話
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しとしと、ぽつり。雨の日。
なんだか死ぬにはいい日だと思ったから。
「ねぇやんさん、海とか行かない?」
湿気のせいか、元気の無い金髪にそう声をかけた。
ぱしゃ、ワイパーが水を弾く音が車内に響く。
2人でのドライブもこれで最後って思うとちょっと寂しい。
だんだんと人も家も少なくなってきて、途中小さなホームセンターでロープを買った。
白い、白いロープ。店員さんには変な目で見られたけど。
さて、必要なものも揃ったし、ドライブ再開。
建物なんかなくなって、木しか見えない上り坂を登る、のぼる。
木々が開けた先、大きく口を開けて僕らを迎えたのは灰色にうねる海。
「わぁ……すごいねぇ。」
最期の地にするには我ながらいい場所だったかも。
しばらく海岸沿いを走って、おあつらえ向きな崖を見つけて。
「ここにしよっか。もうすぐ一緒になれるねぇ。」
きりやんをお姫様抱っこで崖っぷちまで運ぶ。
なんか照れちゃう。今までは人目もあったし、なかなかこんなことできなかったから。
ざばん、ざざぁ、じわじわ削り取るように強く波が打付ける絶壁。
座り込むきりやんの隣に僕も腰掛ける。
全てを洗い流さんと降りつける雨が僕らを溶かして、すっかり冷たくなってしまった彼を引き寄せた。
きつく、きつくロープを結ぶ。絶対に離れないように、ずっと一緒にいられるように。
くたり、寄りかかるきりやんの肩を抱いて立ち上がった。
「ね、やんさん。海に溶けて、蒸発して雨になってまた巡ろう。」
そしたらずっとおんなじでしょう?
返事はない。声なんて数日前から聞いてない。ここにあるのは、つめたく冷えきってしまった空っぽの骸。僕が犯した、最初で最後の罪。
あぁ、愚か。自業自得だけどやっぱりひとりは寂しいから。
どぼん、海がひとりとひとつを飲み込んで、何事もなかったようにまた鼓動した。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。