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第1話

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2024/06/29 23:18 更新
 しとしと、ぽつり。雨の日。
なんだか死ぬにはいい日だと思ったから。

「ねぇやんさん、海とか行かない?」

湿気のせいか、元気の無い金髪にそう声をかけた。



ぱしゃ、ワイパーが水を弾く音が車内に響く。
2人でのドライブもこれで最後って思うとちょっと寂しい。
だんだんと人も家も少なくなってきて、途中小さなホームセンターでロープを買った。
白い、白いロープ。店員さんには変な目で見られたけど。
さて、必要なものも揃ったし、ドライブ再開。
建物なんかなくなって、木しか見えない上り坂を登る、のぼる。
木々が開けた先、大きく口を開けて僕らを迎えたのは灰色にうねる海。

「わぁ……すごいねぇ。」

最期の地にするには我ながらいい場所だったかも。
しばらく海岸沿いを走って、おあつらえ向きな崖を見つけて。

「ここにしよっか。もうすぐ一緒になれるねぇ。」

きりやんをお姫様抱っこで崖っぷちまで運ぶ。
なんか照れちゃう。今までは人目もあったし、なかなかこんなことできなかったから。
ざばん、ざざぁ、じわじわ削り取るように強く波が打付ける絶壁。
座り込むきりやんの隣に僕も腰掛ける。
全てを洗い流さんと降りつける雨が僕らを溶かして、すっかり冷たくなってしまった彼を引き寄せた。
きつく、きつくロープを結ぶ。絶対に離れないように、ずっと一緒にいられるように。
くたり、寄りかかるきりやんの肩を抱いて立ち上がった。

「ね、やんさん。海に溶けて、蒸発して雨になってまた巡ろう。」

そしたらずっとおんなじでしょう?
返事はない。声なんて数日前から聞いてない。ここにあるのは、つめたく冷えきってしまった空っぽの骸。僕が犯した、最初で最後の罪。
あぁ、愚か。自業自得だけどやっぱりひとりは寂しいから。
どぼん、海がひとりとひとつを飲み込んで、何事もなかったようにまた鼓動した。

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