高校に入学してすぐの頃。忘れられない日。
あーちゃんに呼ばれた私は、
放課後の誰も居ない教室であーちゃんが話すのを待った。
微笑みながらそう聞く海愛。
直球に聞く。海愛らしくない。
あの海愛が放課後に呼んでくるなんて、
こんなつまらない話なわけがない。
私は軽く考えていた。それが間違いだった。
聞いた瞬間、海愛の表情が曇る。
そして言った。
嫌な予感がする。
困惑する私に構わず彼女は続ける。
曖昧な答えに嫌気が差す。
は?何が辛いのか分からない?
何を言っているんだろう。
仕切り直しというように笑って言う彼女。
イラッとしてしまう。
だって、おかしいから。
少し詰まりながらも、海愛に問う。
意味が分からない。親友じゃないの?
……そうだ。こいつは、逃げた。
逃げている、これが悔しかった。
でも私は普通に接してきたのに。鬱?ふざけるな。
涙を浮かべる朝凪にかまわず続ける。
許さない。
そうだ。こいつには、良い親が居て、
友達が居て、成績だって悪くなくて。
学校には居場所がある?
そうか、こいつは知らないのか。
私が虐めを受けていること。何も分かってないのか。
親友のくせに。
すると、朝凪は少し口を閉じ、そのあと続けた。
初めて見る朝凪の表情に困惑しつつ言う。
お前の辛さ?知らない。
何が辛いのか自分でも分かってないのに
私がお前の気持ちを分かるとでも思っているのだろうか。
もう、よく分からなくなって、
思いっきり叫ぶ。
こいつが親友だったなんて、信じられない。
憎い。逃げた。親友にも頼らず、
勝手に自分で病んでその辛さを盾にする。
学校に居場所はたくさんあっただろ。
なんで不登校になるんだよ。



















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!