第2話

ep.1
779
2026/02/13 13:48 更新
放課後、音楽室。
誰も来ないはずの場所で、彼はスマホを強く握りしめていた。
サンウォン
サンウォン
……はぁ、めんど
昼間の柔らかな笑顔は消え、低く本音を零す声。
ネクタイを緩め、壁にもたれるその姿は、
“王子様”なんて言葉とはほど遠かった。
サンウォン
サンウォン
期待とか理想とか……勝手に押しつけんなよ
やばい。まずい。
昔から本当にツイてない。
完璧王子様に裏の顔があるなんて。
私はバレないように息をひそめた。
なのに。
バタンッ
はぁぁ.....やってしまった
サンウォン
サンウォン
誰か、いるの?
あなた、絶体絶命の大ピンチです。
(なまえ)
あなた
あにょはせよ....
一瞬の沈黙。
サンウォン
サンウォン
.......見た?
低い声。冷たい、というより、疲れた声。
私は慌てて首を振った。
(なまえ)
あなた
ご、ごめんなさい!聞くつもりじゃ――
サンウォン
サンウォン
....別に
彼は視線を逸らし、壁から離れた。
その距離が、なぜか近い。
サンウォン
サンウォン
誰にも言わないで。頼む。
王子様モード....
(なまえ)
あなた
.....言いません
答えると、彼は少しだけ、ほんの少しだけ安心した顔をした。
サンウォン
サンウォン
ありがと
サンウォン
サンウォン
いつもここにいるの?
ピアノの鍵盤から手を離した彼が、少しだけこちらを見る。
私は一瞬だけ考えてから、首を横に振った。
(なまえ)
あなた
たまに来ますね、一人になりたいときとか、心を落ち着かせたいときに
サンウォン
サンウォン
....そっか
サンウォンは小さく息を吐いて、ピアノの椅子に腰を下ろした。
サンウォン
サンウォン
俺も、そんな感じ
彼はそう言って、鍵盤に指を置く。
音を出すか出さないか、そのぎりぎりで止まる。
サンウォン
サンウォン
ここならさ、何も考えずに素でいられる
サンウォン
サンウォン
誰かの理想じゃなくて本当の自分。
(なまえ)
あなた
人気者は.....大変ですね
サンウォン
サンウォン
それ、皮肉?ㅎ
(なまえ)
あなた
い、いえ!
慌てて首を振る。
(なまえ)
あなた
その……みんなに見られて、期待されて。
それって、すごいことですけど……
言葉を探しながら続ける。
(なまえ)
あなた
すごく疲れそうだなって
一瞬の沈黙。
それから、サンウォンは小さく笑った。
サンウォン
サンウォン
名前は?
(なまえ)
あなた
あなたです
サンウォン
サンウォン
1年生?
(なまえ)
あなた
あ、はい。1年生です
サンウォン
サンウォン
だと思った
そう言って、彼はピアノの蓋に肘をついた。
サンウォン
サンウォン
2年のイ・サンウォンです。どうも
急にちゃんとした自己紹介をされて、思わず背筋が伸びる。
(なまえ)
あなた
知ってます……
そう言った瞬間、しまった、と思った。
サンウォン
サンウォン
だよね~ㅎㅎ
彼は苦笑する。
サンウォン
サンウォン
知られてないほうが、逆にびっくりする
その笑い方が、少しだけ寂しそうで。
私は思わず口を開いていた。
(なまえ)
あなた
でも
彼がこちらを見る。
(なまえ)
あなた
でもさっきの先輩は、普通でした....!
サンウォン
サンウォン
普通?
(なまえ)
あなた
はい
「普通ね....」
そう呟く声は、とても低くて、柔らかかった。
彼は私を見て、少しだけ口角を上げる。
サンウォン
サンウォン
ここではイ・サンウォンでいられるのかも、
心臓が、どくん、と鳴る。
どういう意味なんだろう。
サンウォン
サンウォン
ねね、キミが嫌じゃなければ、放課後ここで待ち合わせしよう

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