第26話

A.朔間 零だから。
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2024/05/16 08:47


あなた
 はい、わんつー、わんつー 
あんず
 わ、わんつー、わんつー 
あなた
 くるっと回って〜 
あんず
 ま、回って〜 
あなた
 決めポーズ! 
あんず
 き、決めポーズ! 




 ふわり。 ターンをしたことで揺れた髪を横目に、数分間止まることなく動かしていた体をやっと止めた。




 ───現在、私とあんずは零くんの頼みでダンスレッスンを行っている。


 私が講師のスペシャルレッスンだ。





 私と横並びになり、見よう見まねで踊っていたあんずも決めポーズでハート(これまた私のマネ)を作ってから動きを止めた。





 
明星 スバル
 おぉ〜! 2人ともすごーい! 
氷鷹 北斗
 ふむ。 何かを学ぶ時はその道の達人から学べ、とおばあちゃんが言っていたが、まさにその通りだな。
遊木 真
 うんうんっ♪ 転校生ちゃん、さっきより格段に成長してるよ!


あんず
 ぜぇ……、はぁ……。
 やっと、終わった……。 
あなた
 お疲れ様、あんず。 
あんず
 あり、がとう、あなたちゃん……。 
 っはぁ〜〜……、スポドリが染みる……。 


 
朔間 零
 ご苦労じゃ、2人とも 
朔間 零
 流石あなたの嬢ちゃん、と言ったところじゃのう……♪ 
朔間 零
 転校生の嬢ちゃんも、突然すまなかったの


 「ぜえはあ」と息を切らしてしゃがみこむあんずにタオルとスポドリを渡せば、息絶え絶えながらもお礼を述べられた。



 くつくつと喉を鳴らして労いの言葉をかけてくれる零くんは、果たして本当に心の底から労ってくれているのか。


 真実はコンフィデンスマンにしかわからない。




氷鷹 北斗
 ところで、朔間先輩。
 突然転校生とあなたに踊らせて、一体何がしたかったんだ? 
氷鷹 北斗
 場合によっては許さんぞ 
朔間 零
 口の利き方には気をつけるが良いぞ、坊や


 鋭く言い放ったホッケ〜に、零くんは小揺るぎもせずにこやかに笑った。


朔間 零
 敵を作るような言い方は感心せんのう。
朔間 零
 ……生徒会と戦うために、今はひとりでも多く味方につけておきたい時期じゃろ?
氷鷹 北斗
 ……何故、俺たちが生徒会に翻意を抱いていると知っている? 
朔間 零
 我輩はなんでも知っておるよ、この学院のことならなんでも。 


 おそらく無自覚に後ずさったホッケ〜を、零くんは身じろぎもせず観察している。


 ……いや、見定めている。


 何の打算も無しに、ぬけぬけと己の領域に入ってきた無力な子供たちを、推し量っている。


朔間 零
 おぬしら、迂闊じゃからのう。 
朔間 零
 阿呆でも気づくわい、もっと慎重に行動せい


 小言を並べながらも、零くんの表情は稚気に溢れている。




 今日の仕事の予定を思い出しながらホッケ〜と零くんのメンチ合戦を見つめていると、ふと、ねぇねぇ、と私は後ろから肩を叩かれた。

明星 スバル
 ねぇねえあなた、これってつまり俺たち遠回しにアホって言われてるってこと??
遊木 真
 ええっ!? そうなの!? 
あなた
 あぁ、そうかも。 
 零くんそういうの得意だしね。
明星 スバル
 そんなっ! 俺とウッキ〜でアホコンビだよ!?ホッケ〜とサリ〜までアホなの!?
遊木 真
 さらっと衣更くんも巻き込まれた!? 
あなた
 そうだね、アホフォースだよ 
明星 スバル
 そんな〜っ!!
 嫌だよ俺っ、TrickAhoなんて〜っ!
 
あなた
 どんまい。 

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