第126話

     ~咲side~
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2023/01/19 05:31 更新
咲(さく)
咲(さく)
はぁはぁ......!
初めての場所に、初めての国。迷いながらも、空港から病院へと直行した。
慣れない英語でたどたどしく受付でたずねると、なんとか通じたらしく病室へと案内された。
咲(さく)
咲(さく)
葵......!
バンッ
ドアを開けるとそこに葵の姿はなかった。
お父さん
お父さん
鳳くん、これはこれは。よく来てくれたね
咲(さく)
咲(さく)
すみません、俺。こんな、いきなり......はぁっ
はぁはぁと息を切らしながら返事をする。正直飛行機でもあまり眠れなくてヘトヘトだった。
お父さん
お父さん
謝らなくていい。葵は手術中だよ
咲(さく)
咲(さく)
あ、そうですか.....っ
お父さん
お父さん
とりあえず入って、こっちに座りなさい
咲(さく)
咲(さく)
失礼、します
葵にたどり着いたという安堵から、崩れ落ちるようにしてパイプ椅子に腰かけた。
咲(さく)
咲(さく)
あの、こないだはどうも
お父さん
お父さん
さて、なんのことかな?
とぼけていても目は真剣。俺のことを考えてくれたのは、ほかでもないこの人だ。
毎日病院を訪ねていたある日。しびれを切らしたのか先生はようやく葵のことを教えてくれた。
『いいわ、親御さんから許可が出たから』
許可を出してくれたのは、葵の父親だ。
もう遠慮はしない。迷わない。葵を手放してたまるか。何年経っても、葵への気持ちは変わらなかった。
だったらさ、そばにいるしかないじゃん。たとえ葵が俺のことを好きじゃなかったとしても、もう一度好きになってもらえるようにがんばればいいだけだ。
手放すくらいなら、何度でもぶつかる。
手の届く距離に来たんだ。
ツラい思いは二度とさせない。今度はもっと、きっと寄り添えるはず。
咲(さく)
咲(さく)
俺、葵のことが真剣に好きです。今日までずっと忘れられませんでした。だから、すみません。目覚めたら一番に気持ちを伝えます
そう宣言してから、さらに深く頭を下げた。
認めてもらえないかもしれないけど、それでもいい。時間はたっぷりあるんだ。
葵は必ず目覚める。手術は成功する。
お父さん
お父さん
鳳くん、ありがとう。葵もきっと、喜ぶよ

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