第125話

     🖤
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2023/01/19 05:21 更新
この気持ちはずっと前から、離れてもなお変わらない。
どうやっても忘れられなかった。そして、これからもきっと、忘れることなんてできない。



その日は久しぶりになかなか寝つけなかった。
メッセージの返信ができないまま、気づけば移植手術の日が一週間後に迫っていた。
あれから一度も咲からのメッセージはない。なければないで、ホッとした。これ以上かき乱さないでほしい。
穏やかに手術に臨みたいんだ。
それなのに......。
メッセージがくることを期待してる私がどこかにいる。未練がましいったらないよね。
忘れようとすればするほど、どんどん忘れられなっていく。
今でも胸の大半を咲がうめ尽くしているなんて。
いよいよ手術が明日に迫った日の夜。
お父さんがお見舞いに現れた。
お父さん
お父さん
黙っていようと思ったんだけど
そんなふうに切り出して、言葉をためるお父さん。
葵
なに?
お父さん
お父さん
日本の先生から連絡があって、毎日のように鳳くんが病院を訪ねてくるそうなんだ
葵
え......?
お父さん
お父さん
葵のことを気にしているらしい。
葵
ウソ......
お父さん
お父さん
葵のことを本気で大切に思ってるんだろうな
葵
......
やめてよ。
また心がかき乱される。
葵
お、父さん.......わた、し、いいのかな?
お父さん
お父さん
葵がしたいようにするといい。鳳くんも、それを望んでるんじゃないか?
詳しく説明しなくても、お父さんは私の言いたいことを察して返事をしてくれた。
同じ経験をしたからこそ、私にそう言うんだろう。あくまでも咲の味方というわけだ。
胸にくすぶる咲への想いを我慢できない。
だけどわざわざ不安にさせるようなこともないかな。
もし、手術が終わって無事だったら一。
迷わず気持ちを伝えよう。
そう心に誓って、私はそっと目を閉じた。

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