藤原塔子さんと出会って間もないある日
学校帰りに買い物をしていると辺りはもう真っ暗
秋は好きだが日が短い
森の夜道はもっと暗くなる
早く帰ろうと思ってもすぐに暗くなる
そう思い帰り道を歩いていた
歩いているとスーツ姿の男性に呼び止められた
この人が藤原塔子さんの旦那さん
この人もどこか優しい雰囲気の人
そう言われ買った物も半分以上も持ってくれた
私は片手に買った物を持ちもう片手には狐桜を抱っこし歩いていた
そんな他愛もない話をし家に着く
家には明かりはなく誰もいないようだった
家におじさんはまだ帰ってきてはいない
良かった
もしおじさんに誰かと一緒に帰って来たと知られたら何をされるか分からない
そう優しそうに微笑んでいた
ふと藤原滋さんが腕を上げるのが見えた
とっさに殴られると思い目をギュッとつぶる
少し間が空き痛みが来ないことを不思議に思い目を開ける
すると頭を撫でられた
母と父以外に撫でられた事がない
不思議に思い藤原滋さんを見る
その顔は少し悲しそうな顔をして微笑んでいた
頭を撫で続けながら言われた
今まで助けてくれる人なんていなかった
ここに来るまでは
ここの人はとても優しい
夏目貴志も田沼要も多軌透も
そして藤原夫妻も
そういうと微笑み腕を下した
そして来た道を帰ろう背中を向ける藤原滋さん
そういえばと思い出したことがあり声に出す
藤原滋さんはこちらを見て微笑み了承してくれたらしく手を振ってくれた
自分にまだあんな大きな声が出るなんて驚いた
―――――――――――――――――
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!