第31話

特別編 君の誕生日③
5,427
2020/08/07 14:20



『…ん。』


おでこに冷たいものを感じて目を覚ます。


「…あなた。」


誰かが私の名前を呼ぶ。

お母さん…?

かと思ったが声が違う。

この声はお母さんじゃない。

男の人の声……。


「あなた」


優しく私の名前を呼んでいるのは…。

大好きな彼の声。

徹だ。


『…とーるっ…!』


目蓋を半分ぐらい開けたところでようやく視界には徹の姿が入る。

徹だ。

いるはずのない徹だ。

徹が目の前にいるなんて。






目覚めよずきるよ…____




『って、よくない!!!』


勢いよく飛び起きる。

このような状況前にもあった。

あの時だ、“ あの時。”


徹「だいぶ治ったみたいだね!」

『そういえば身体結構軽くなってる…。



じゃないから!!
どうしてここにいるの!?

部活は!?練習試合は!?』


練習着を着ているわけでもなく、制服を着ているわけでもなく、私服を着ている彼。

え、また部活放棄してここに来たの?

私はちゃんと家の用事って送ったよね?

どうして…?

頭がパニック状態になる。


徹「はいはい、落ち着いて。
今、17時だから。
ちゃんと練習試合終わってからやってきましたよー。」

『え…?』


壁に掛けてある時計を見る。

17時13分。

本当だ。

だから徹私服なんだ……。


『私、結構寝てた…?』

徹「らしいね。あなたのお母ちゃんが死んでるかも。なんて言って笑っていたぐらいだし。」

『お母さん…。』


笑ってないで心配ぐらいしてよ。

と心の中で思いつつ徹に熱計ってと言われたので、体温計を脇に挟む。


『……37.4。』

徹「だいぶ熱は下がった感じかな。
でも、まだ安静か。」

『……うん。
というかどうして徹がここに?』

徹「え、今更?」

『だって私、家の用事って……。』

徹「そんな嘘で及川さんを騙そうとしたってダメだからね!
しかもこの前と同じ方法だし!」


“この前”


『あ…。』


そう言えば…。

ついこの間も風邪を引いた。

その時の私は今回と同じように徹が部活をサボって欲しくはなかったので徹には家の用事と言って嘘をついたが…。

結局、先生達が風邪で休んだと言ってしまったので放課後徹は家に来た。


『すっかりこの間の風邪のこと忘れてた…。』

徹「なんとなくそんな事だろうとは思った。一度失敗したら学ぶあなたがまた同じような事してるからね。」

『…自分、馬鹿だ。』

徹「熱で頭がやられてじゃない?
というかあなた!褒めて!」

『?』

徹「今回はあなたが風邪を引いたと知ってもちゃんと練習試合に参加してその後に来たから!」


前回も前々回も部活サボって私のところに来たので私は物凄く怒った。

心配してくれるのはとてもありがたいけど、部活を優先して欲しいと。

二回も怒ると三回目は流石に学んだようだ。


『……徹、偉いよ。』

徹「…。



なんかあなたに褒められるとか戸惑う…。」

『何、それ。
徹が褒めてって言ったんでしょ。』

徹「でもまさか本当に褒めてくれるとは…」


目をまん丸にしながら言う徹。


『ならもう二度と褒めないからね。』

徹「え!!??
ごめん!嘘だから!!」


おどおどしている徹を笑いながら、喉が渇いたのでサイドテールに手を伸ばしペットボトルを取るが、空だった。


『徹、悪いけどお母さんに水持ってきてもらうように頼んでもいい?』

徹「あ、そうそう。あなたのお母ちゃんいないよ。」


…はい?


『…お母さんいないってどう言う事?』

徹「なんかお店に急遽行かなきゃならなくなっちゃったから今日は帰ってこないって!」


…高熱出して寝込んでいる娘を置いていくかなぁ普通。

誰が私の看病してくれるの…。


徹「あなたのお父ちゃんも出張中なんでしょ?」

『うん、昨日からね。』

徹「今日この家にいるのは?」

『まぁ私だけになるね。』

徹「と言う事で今日は及川さんが看病します!」


…。

はい?

さっきから話が転々と進んで行きよく分からない。


『徹が看病するの?』

徹「あなたのお母ちゃんに任されたからね!」

『申し訳ないし、移すかもだから帰って欲しいんだけど…。』

徹「いや、今日は帰りませーん!」

『…泊まるの?』
 
徹「許可入れ済み!」


お母さん…。

お願いだから私の知らないところで勝手に話を進めないで。


徹「何して欲しい?
及川さんなーんでもするから!」


と言って腕まくりをする彼。





今日は記念日。


徹の誕生日であり

付き合って一年目の日。





___私は彼に看病してもらいます。












…。

当日完結できなかった…。

続きは明日以降です。

多分更新できない日が続くかもしれませんが待っててほしいです!🙏

特別編は次で終わりです!

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