『…次期時守に、お前が指名された』
なんで、僕だったんだろうか。他にいただろうに。
大方、歴代の親族の中で一番能力値が高いとかどうので選ばれたんだろう。
望んでもないことに誰が一体得をするって言うんだ。
風がそよぐ。夜の風は少し肌寒かった。
もう部屋に入ろうと思い、踵を返そうとした時、何やら音が聞こえた。
目を凝らしてみると、一つの逃げる影と、複数の追う影。
紫色の頭……その逃げる影に見覚えがあった。
急いで部屋に入り、ローブを纏ってベランダから高さを気にせず飛び降りた。
後ろからは複数人の足跡。しくじってしまった。
手を伸ばす。すると、彼は迷わず僕の手を取った。
彼がしっかり捕まったのを確認してから追っ手から逃げる。
取り敢えず、ChroNosまで逃げることにした。
逃げ切ったら、何があったか聞こう。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!