百鬼学園の学園長室。
あなたは、その部屋で今年新たに採用された人間教師の書類を握りしめていた。
そう言われ改めて資料に目を通すと、証明写真の横に アベ ハルアキ とカタカナでルビが振ってある。
改めて書類の証明写真に目を落とすあなたを見ながら、学園長はお茶を啜ってため息を吐いた。
もっと詳しく読んでおこうと、名前欄以外の経歴などに目を通したあなたは、ぎょっとしたように目を見開いた。
怪訝そうにあなたは眉をひそめ、学園長に尋ねる。
あからさまに嫌そうな表情をしたあなたと、学園長は視線を合わせる。
渋々ながらも了承したあなたの頭を、学園長は二、三度撫でる。
その撫で撫でで、あなたの機嫌は一瞬にして良くなった。
そうして迎えた晴明の赴任日。
仕事の都合上あなたは晴明に会うことは出来なかったが、晴明の顔を見ると晴明の姿がどうしてもちらつくため、初日にたまたま会えなかったのを良いことに、それからどうにかこうにかして晴明と遭遇しないようにしていた。
うまくいけばこのまま会わなくて済むかもしれない、なんて淡い希望を抱いていたが、その希望は晴明赴任の数週間後に打ち砕かれた。
出会ってしまったのは教師寮の廊下。
ちょっとした用事があって立ち寄ったところ、向こう側から歩いてきた晴明とあなたは出くわしてしまったのだ。
突然の邂逅に何の心の準備も挨拶の台詞も用意していなかったあなたは、動揺がなるべくばれないよう平静を装って当たり障り無い言葉で返す。
晴明の屈託無い笑顔に、あなたは一瞬動揺したがそれを表に出すことなく、取り繕い笑いをより一層強くした。
あなたは晴明に一礼をすると、足早にその場を後にして、職員寮を出ると、学園長室には戻らず、学校を囲む森の中に逃げ込み、人一人多い隠せるような大樹を見つけると、大樹に背を預け、その場にへたり込んだ。
バサッ、と鳥の羽が羽ばたくような音がして、踞っていたあなたの視界の端に、黒い羽が飛び込んできた。
それを見て、反射的に顔を上げた。
呟くように名を呼んだあなたに、蘭丸は少しだけ苦しそうに顔を歪めた。
と一言だけ呟くと、すぐにいつもの調子に戻った
地面に落ちた焼け落ちたように真っ黒な蘭丸の羽を拾い、手元で遊ばせながらあなたは蘭丸に話し始めた。
絞り出すような声であなたは言う。
蘭丸が見つめるあなたの顔は、憎しみに満ち満ちていた。
地に向かって声を振り上げるあなたを抱き寄せて、蘭丸はポンポンと頭を撫で、軽く背中をさすって落ち着かせる。
しばらくあなたの愚痴を、あなたを落ち着かせながら聞いていた蘭丸だったが、あなたが段々落ち着いてきたのを確認すると、蘭丸は抱きしめていた腕を放して、横に座った。
そう言って、くいくいっと丸めた手を回す蘭丸に、あなたはふはっと吹き出した。
笑って笑顔を見せたあなたに、蘭丸は安心したように微笑み、いつもの調子に戻った。
ぬらり、との不気味な効果音と共に、学園長があなたと蘭丸の間に割って入るように姿を現した。
二人同時に名前を呼ぶと、学園長は少しお面をずらしながら、蘭丸の方をぎろりと見た。
怪訝そうな顔をする学園長から睨まれている蘭丸をかばうために、あなたは声を上げた。
晴明と出会ってから蘭丸に慰められるまでの経緯を話すと、学園長は軽く眉間を押さえながらも納得してくれた様子だ。
学園長の言葉に被せるように叫んだあなたの様子にぎょっとし、蘭丸は慌てて止めに入る。
急いで話題を逸らそうとして、蘭丸は学園長にも話題を振る。
首根っこを学園長につかまれ、引きずられていった蘭丸の二人をあわあわしながら追いかけて行くあなた。
百鬼学園、波乱の年の始まり始まり。
せっかく新しいアカウントで投稿し直すので、吹き出しの色とか細かいところとか色々変えてます。
拙い文ですが応援よろしくお願いします!












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!