第2話

第壱話 ~邂逅~
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2025/04/24 13:26 更新
あなた
安倍あべの晴明せいめい
 百鬼学園の学園長室。
 あなたは、その部屋で今年新たに採用された人間教師の書類を握りしめていた。
学園長
…いいえ、安倍あべ晴明はるあき君、ですよ、あなたさん
 そう言われ改めて資料に目を通すと、証明写真の横に アベ ハルアキ とカタカナでルビが振ってある。
あなた
ああ、本当ですね…、失礼しました
学園長
いえ、私も始めた見た時は見間違えてしまいましたからね、
それにどうやら生まれ変わりのようですし、
無理もありませんよ
あなた
生まれ変わり…
…それにしても本当にそっくりですね、さすが子孫です
 改めて書類の証明写真に目を落とすあなたを見ながら、学園長はお茶を啜ってため息を吐いた。
学園長
全くいつの間に子を成していたのでしょうね、
嫁を全く取らなかったくせに
あなた
服に萌えないからって、
どんな美女からの求婚にも応じませんでしたからね
あなた
にしても晴明の子孫がよりにもよって教職の道を…、
これも運命なんですかね
 もっと詳しく読んでおこうと、名前欄以外の経歴などに目を通したあなたは、ぎょっとしたように目を見開いた。
あなた
前職の人間の学校ではヤンキーに絡まれて30秒で退職…
これ本当ですか?
学園長
ええ、本人にも確認を取りまして、間違いありません
あなた
晴明の子孫で生まれ変わりなのにこんなにヘタレとは…
学園長
双子のお兄さんもいましてね、そちらはかなり弟さん思いで強気な性格でしたよ
人の性格なんて、結局は環境なんですかねぇ
 怪訝そうにあなたは眉をひそめ、学園長に尋ねる。
あなた
妖怪に対しての耐性はどうなんですか?
このヘタレ具合じゃ、妖怪みた瞬間逃げだしません?
学園長
まあ人型の妖怪も多いですし
何より退魔の力がありますからね、死にはしないでしょう
学園長
本州に繋がる扉の存在もしばらくは伏せておきますから、
逃げ帰られる心配はひとまず無いでしょう
あなた
それならいいのですが…
学園長
貴女も、是非仲良くしてあげてくださいね
人型ですし、女性と言うこともあって警戒されにくいでしょう
あなた
え、私がですか?
 あからさまに嫌そうな表情をしたあなたと、学園長は視線を合わせる。
学園長
貴女が晴明のことが嫌いなのは分かりますがね、晴明君には何の関係もないんです
接する機会は少ないでしょうが、せめて態度には出さないでくださいね
あなた
…畏まりました
学園長
よろしい
 渋々ながらも了承したあなたの頭を、学園長は二、三度撫でる。
 その撫で撫でで、あなたの機嫌は一瞬にして良くなった。
 そうして迎えた晴明の赴任日。

 仕事の都合上あなたは晴明に会うことは出来なかったが、晴明はるあきの顔を見ると晴明せいめいの姿がどうしてもちらつくため、初日にたまたま会えなかったのを良いことに、それからどうにかこうにかして晴明と遭遇しないようにしていた。
 うまくいけばこのまま会わなくて済むかもしれない、なんて淡い希望を抱いていたが、その希望は晴明赴任の数週間後に打ち砕かれた。
安倍晴明
あれ?初めまして…、ですよね?こんにちは!
 出会ってしまったのは教師寮の廊下。

 ちょっとした用事があって立ち寄ったところ、向こう側から歩いてきた晴明とあなたは出くわしてしまったのだ。
あなた
あ、こ、こんにちは…
安倍晴明先生…ですよね?
 突然の邂逅に何の心の準備も挨拶の台詞も用意していなかったあなたは、動揺がなるべくばれないよう平静を装って当たり障り無い言葉で返す。
安倍晴明
はい!数週間前に赴任してきて…、あの、
失礼ですが貴女は…?
あなた
あ、申し遅れました、私、あなたの名字あなたの下の名前と申します
お好きに呼んで下さいね
安倍晴明
あ、じゃああなた…先生でいいんですかね?
職員室で見かけたことないんですけど、先生なんですか?
あなた
ああ、私普段は職員室にはいないんです
学園長室で、学園長先生の秘書をしていまして
安倍晴明
学園長の秘書さん!?
そ、そうだったんですね…!
あ、僕のことは晴明って呼んで下さい!
 晴明の屈託無い笑顔に、あなたは一瞬動揺したがそれを表に出すことなく、取り繕い笑いをより一層強くした。
あなた
……はい、改めてよろしくお願いします、晴明先生
では私、仕事がありますのでこの辺りで失礼しますね
安倍晴明
あ、引き留めちゃってすみませんでした!
じゃあまた!
 あなたは晴明に一礼をすると、足早にその場を後にして、職員寮を出ると、学園長室には戻らず、学校を囲む森の中に逃げ込み、人一人多い隠せるような大樹を見つけると、大樹に背を預け、その場にへたり込んだ。
あなた
はあっ、はあっ、はあっ……!
あなた
違う、違う違う違う違う、
彼は晴明せいめいじゃない、晴明せいめいじゃない…!
あなた
晴明せいめいじゃないのにっ……!!
烏丸蘭丸
あれー?あなたちゃんだ
 バサッ、と鳥の羽が羽ばたくような音がして、踞っていたあなたの視界の端に、黒い羽が飛び込んできた。
 それを見て、反射的に顔を上げた。
烏丸蘭丸
何してるの?こんなところで
あなた
…朱雀…
 呟くように名を呼んだあなたに、蘭丸は少しだけ苦しそうに顔を歪めた。
烏丸蘭丸
……もう朱雀じゃないよ
 と一言だけ呟くと、すぐにいつもの調子に戻った
烏丸蘭丸
まーったくもう!あなたちゃんたらいつまで経っても覚えないなー!
僕、今は烏丸蘭丸だよ
あなた
私にとってはいつまでも朱雀だ
…道満様も、きっとそうだ
烏丸蘭丸
…あなたちゃん相変わらず頑固ー。
それで、何か悩み事?そんな苦しそうな顔しちゃってさ
 地面に落ちた焼け落ちたように真っ黒な蘭丸の羽を拾い、手元で遊ばせながらあなたは蘭丸に話し始めた。
あなた
朱雀も道満様から聞いているだろう、あの人間教師のこと
烏丸蘭丸
あー、安倍晴明君だっけ?
あっちゃんに写真見せて貰ったけどさー、
…ホント、そっくりだよね
 絞り出すような声であなたは言う。
あなた
別人だって…、例え子孫だろうが生まれ変わりだろうが、
晴明ではないと、分かっていたはずなのに…
烏丸蘭丸
あなたちゃん…
烏丸蘭丸
それで、そんなに怒ってるの?
 蘭丸が見つめるあなたの顔は、憎しみに満ち満ちていた。
あなた
当たり前だろう!!
あんな、あんなそっくりの容姿で!
しかも子孫で生まれ変わりだと!?
彼と晴明に直接の関係はない!
血が繋がっていようが他人だ、
そうだ他人だ分かってる!
だが……!!
烏丸蘭丸
はいはいどーどー、落ち着いて
 地に向かって声を振り上げるあなたを抱き寄せて、蘭丸はポンポンと頭を撫で、軽く背中をさすって落ち着かせる。
烏丸蘭丸
よしよし、うんうんそうだよね、
そっくりだもん、
似てるからびっくりしちゃったんだよね
あなた
…そうだ…、急に会ってしまったから驚いて…
…あの男はいつも急だ、いつも勝手だ…
勝手に現れて勝手に消えていく…
散々踏み荒らされた我々を置き去りにして…!
ああ勝手だ腹が立つ…!
あなた
だが一番腹立たしいのは、
そんなやつが頭から離れてくれない私自身だ!
安倍晴明っ……!!
烏丸蘭丸
うんうん、よしよし落ち着いて
大丈夫だよ、大丈夫…
 しばらくあなたの愚痴を、あなたを落ち着かせながら聞いていた蘭丸だったが、あなたが段々落ち着いてきたのを確認すると、蘭丸は抱きしめていた腕を放して、横に座った。
烏丸蘭丸
落ち着いた?
あなた
…はい、取り乱しました
すみませんでした、ありがとうございます
烏丸蘭丸
いいってことよ!
お礼なら、お兄さん今度お馬さん連れてってほしいな~!
あ、コレでもいいよ!
 そう言って、くいくいっと丸めた手を回す蘭丸に、あなたはふはっと吹き出した。
あなた
それって、私の奢りでか?
烏丸蘭丸
もっちろーん!
じゃなきゃお礼にならないでしょ!
あなた
ははっ、わかったよ
 笑って笑顔を見せたあなたに、蘭丸は安心したように微笑み、いつもの調子に戻った。
烏丸蘭丸
やったー!言質取ったよ!約束だかんね!
学園長
おや、随分楽しそうなお話をされていますね
 ぬらり、との不気味な効果音と共に、学園長があなたと蘭丸の間に割って入るように姿を現した。
烏丸蘭丸
あっちゃん!
あなた
道満様!
 二人同時に名前を呼ぶと、学園長は少しお面をずらしながら、蘭丸の方をぎろりと見た。
学園長
あなたさんの戻りが遅いので、
様子を見に来てみれば…、
貴方、何してくれてるんです?
烏丸蘭丸
ええーっ!?違うよ誤解だって!
僕あなたちゃんのメンタルケアしてあげてたのに!
学園長
は?メンタルケア…?
 怪訝そうな顔をする学園長から睨まれている蘭丸をかばうために、あなたは声を上げた。
あなた
あの、その通りなんです
実は……
 晴明と出会ってから蘭丸に慰められるまでの経緯を話すと、学園長は軽く眉間を押さえながらも納得してくれた様子だ。
学園長
…事情はわかりました、しかしあなたさん、
貴女がまだそこまで晴明を恨んでいるとは…
あなた
恨んでいるに決まっています!
道満様に殺人の罪を着せて、朱雀を妖に陥れた奴なんて…!
 学園長の言葉に被せるように叫んだあなたの様子にぎょっとし、蘭丸は慌てて止めに入る。
烏丸蘭丸
あー!タンマタンマ!
さっきまでの僕の苦労が水の泡になっちゃう!
烏丸蘭丸
あ、そうだ今日飲み行こ!
ね!ね!行くよねあっちゃん!
 急いで話題を逸らそうとして、蘭丸は学園長にも話題を振る。
学園長
…仕方ありませんね、あなたさん、
晴明への恨み言は酒の席で聞きますから、今は仕事を進めますよ
あなた
は、はい!失礼しました!
朱雀も、…迷惑をかけました、すみません
烏丸蘭丸
いーっていーって!
約束通り、今度パチかお馬さん、連れてってね☆
学園長
その話、詳しく聞かせて貰いましょうか
烏丸蘭丸
ありゃりゃ
 首根っこを学園長につかまれ、引きずられていった蘭丸の二人をあわあわしながら追いかけて行くあなた。

 百鬼学園、波乱の年の始まり始まり。
 せっかく新しいアカウントで投稿し直すので、吹き出しの色とか細かいところとか色々変えてます。
 拙い文ですが応援よろしくお願いします!

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