第3話

過ぎる記憶の歳月
115
2025/11/18 03:00 更新

寮を出て歩いていると、薄い色のツンツンした髪が視界に入る。
神薆
か〜つき♪
爆豪
…離れろやボケェェ
神薆
文化祭の出し物、宴みたいなものになったのよね。楽しみよね!
あたしよく分からないんだけど
爆豪
分かんねぇのかよ
神薆
まあ、正しく進めば良いわよね♪

そのまま歩き進める。
何気に勝己って変な所で気遣ってくるわよね。歩幅合わせてくれてる。
それとも歩幅小さいのかしら?




「なぁ聞いた?」
神薆
…?

「ヒーロー科A組ライブやるんだって。俺たちの為に」

「私たちの為って何それ?自意識過剰なんじゃないの?」

「ほんといい気なものだよ」
神薆

勝己の様子を見てみると、まぁ嫌そうな可愛い顔。
神薆
…あっ、ジャージの上着忘れた。
爆豪
ハッ

寮に戻って来て早々共有スペースに呼ばれた。
どうやら文化祭の事で決める物がまだあるらしい。
耳郎
皆の意見をある程度総合すると楽曲は4つ打ち系だよね。
ニューレイヴ系のクラブロック、ダンスミュージックだと本当はEDMで回した方がいいけど、皆は楽器やる気なんだよね?
神薆
…?
耳郎
ベースとかドラムやってた人いる?
神薆
…ねぇ、ドラムとベースってなぁに?
わかんねぇ。楽器じゃねぇか?
上鳴
つーかおまえ、昔音楽教室に行かされてたつってたじゃん!
瀬呂
爆豪ちょっとドラム叩いてみろよ!
爆豪
誰がやるかよ
瀬呂
かなりムズいらしいぞー

すると勝己は無言で範太から棒2本受け取り、何か叩き始めた。
耳郎
か、完璧…
上鳴
爆豪ドラム決定だな!
爆豪
そんなくだらねぇことやんねぇよ俺
神薆
これなぁに?
多分ドラムっつってたと思う
神薆
これがドラムね
これは?
…棒?
神薆
棒…
爆豪
なるはずねぇだろ!

焦凍と話していると大声が耳に響く。
ん…なに、勝己?
爆豪
あれだろ?他の科のストレス発散みてぇなお題目なんだろ?
神薆
…勝己もしかして…
爆豪
ストレスの原因がそんなもんやって自己満以外のなんだってんだ
ムカつく奴から素直に受け取るはずねぇだろうが!
なぁ!?
神薆
葉隠
ちょっと!そんな言い方!
爆豪
そういうのが馴れ合いだっつってんだよ!

…やっぱりさっきの言葉気にしていたのね。
爆豪
ムカつくだろうが…俺たちだって好きでヴィランに転がされてんじゃねぇ
何でこっちが顔色うかがわなきゃなんねぇ
神薆
爆豪
てめェらご機嫌取りのつもりならやめちまえ!
殴るんだよ!馴れ合いじゃなく殴り合い!
やるならガチで!
神薆
ふふ…
爆豪
雄英全員音で殺るぞ!
…ビリビリした
神薆
そうね

その後順調に進んだ。
耳郎
そうだ、神薆なんだけどさ
目覚めたばっかだしダンスはキツイよね?
神薆
えぇ…
瀬呂
んじゃ演出?
上鳴
イマイチ何ができるのか知らないんだけど、
神薆
ライアの金糸を裂いてみるとか…
綺麗よ、おすすめ。あたしがこの目で見たから。
耳郎
わかった。
神薆
…難しそうな動きをするのね。
緑谷
どうして親愛さんここにいるの?
神薆
興味よ♡
緑谷
興味…
あっ、通形先輩!エリちゃん!
通形
というわけでこれからエリちゃんと雄英内を回ろうと思ってんだけど緑谷くんと神薆さんもどうだい?
緑谷
はい!
神薆
えっ、あたしも?
通形
エリちゃん、思ってたよりも懐いてたみたいで
壊理
幸せの人!
神薆
そうよ〜楽園のエデン♪
鉄哲
ってA組の緑谷とエリシアじゃねぇか!
神薆
エデンに変えたの、そう呼んでくれるわよね?
寧人♡
物間
あれあれあれ?こんな所で油売ってるなんて余裕ですかァ?
して、エデンね、覚えたよ女神!
壊理
めがみ?
物間
おやおや無視かい?いいのかい?A組はライブ的なことをするんだってね
いいのかなァ?今回ハッキリ言って君たちより僕らB組の方がすごいんだが?

寧人は嫌みたらしく笑いながら話す。
壊理はあたしの服に捕まる。
物間
準備しといた方がいいよ。僕らに喰われて涙するその時の為のハンカチをね!アハハハハハハ!

ゴンっと音が鳴り倒れ込む寧人。
泡瀬
ごめんよA組。拳藤がいねぇから歯止めが利かねぇ
緑谷
物間くんとセットのイメージあったけど…
泡瀬
今回は別。あいつはミスコン出るのよ
緑谷
ミスコン!?
鉄哲
物間じゃねぇけどお互い気張ってこーぜ!
通形
いきなり雄英の負の面を見せてごめんよ、エリちゃん
神薆
負の面
神薆
…出久、出久♪
緑谷
どうしてついて来てるの?
何か買う物あった?僕ついでに買って来ようか
というかなんでヒロス来てるの?
神薆
いえ、お散歩♪あとオシャレ
緑谷
お散歩なんだ
神薆
あとは出久の手助けに
緑谷
ありがとう、でも多分大丈夫だよ
神薆
売ってないわよ
緑谷
やばいね
神薆
あった!
緑谷
それ紐!
神薆
もう〜〜ロープって何よ!
緑谷
怒らないで…ほら、買えたし!急いで帰ろう!
ジェントル
おっと
緑谷
すみません

出久がぶつかる。
もしかしてこれがジェントルとラブラバ?そうね背丈が確かにそう。
ジェントル
気をつけたまえよ。ゴールドティップスインペリアルの余韻が損なわれるところだったじゃあないか
神薆
ごーるどてぃっぷすいんぺりある
ジェントル
さァ行こうラブ…ハニー
ラブラバ
ハニー!?えぇ私はハニー

出久は近くの家のような建物を眺めた。

緑谷
へーあの家、喫茶店か何かなのかな?わかんないな
神薆
きっさてん?
ジェントル
ゴールドティップスインペリアルが何かを知らなければその発想には至らぬわけだが、
君わかる人間かね?幼いのに素晴らしい!
緑谷
あの…僕はそんなに…友達が淹れてくれたから知ってるだけで…
(何か聞き覚えのある声だな…)
ジェントル
ほほう〜そんな高貴な友が…
いい友人を持っているね
緑谷
はい…人には恵まれて…
(待てよ…)

…ジェントルが個性を使うならばあたしはすぐ出久を守る。
ジェントル
では失礼
緑谷
待ってください!
ルーティーンってやつですか?
ジェントル
ルーティーン、何のことかな?
緑谷
動画見ました
ジェントル
ラブラバ、カメラを回せ
緑谷
ウチに手ェ出すな!!!
神薆
デク、待って!
ジェントル
今回は”雄英入ってみた”
緑谷
そんなことさせない!
ジェントル
外套脱衣のついでに張らせてもらった。
リスナー諸君ならば承知のはずだが?

空気の幕が出久に立ち塞がる。
あたしは出久の前に金糸を張って跳ね返し、モーディスに代わりキャッチする。

ジェントル
申し訳ない少年!私は行く!
緑谷
謝るなら学校に手を出さないでよ!
ジェントル
そいつはできぬ相談!ジェントリートランポリン!
サフェル
掴まって!!
緑谷
っ…!

サフェルで走り、出久は飛び、ジェントルを追いかける。
緑谷
かける思いは皆同じだ!
ヒアンシー
デク様!!!

鉄鋼の組み置かれた場所で繰り広げられる戦い。
落ちそうな鉄鋼を金糸で止め、出久も力で保つ。

逃げれば追いかける。
草の茂った場所に倒れた二人を、出久は押さえつける。
緑谷
抵抗しないで!もう諦めてくれ!

ラブラバの個性を使ってまた起き上がる。
もう〜〜なんなの!!
緑谷
もっと、強くて速い人たちと、戦ってきた。まだ負けてないぞ!
キャストリス
緑谷
夢の為ならっ、人の頑張りもそこに懸ける情熱も、
やっと目の覚めた少女の素敵な記憶も!!
笑い方を知らない女の子の笑顔も奪えるのか!
神薆
!?
ハウンドドック
うちの生徒の匂いだ!!!
二人いるだろう!!!
神薆
ハウンドドック、出久は今雄英生徒だけど、あたしは今エデンよ。
緑谷
…!
神薆さん、それでヒロスに…
神薆
仮とはいえ免許扱いになるはず。
あたしはヒーロー活動をしたわ、ねぇ?
ハウンドドック
…賢いな、褒められる事じゃないが
神薆
そういうものでしょ
通形
よう!二人ともお疲れ!
壊理
あのね!最初は大きな音でこわくって、でもダンスでピョンピョンなってね
ピカって光ってデクさんいなくなったけど、ぶわって冷たくなってね
神薆
壊理
プカーってグルグルーって光ってて、女の人の声がワーってなって私、わああって言っちゃった

…笑った。
良かったね壊理、出久。
緑谷
楽しんでくれて良かった
神薆
えぇ、良かったわね。

片付けに回ろうと壊理から離れると、背後からトントンと肩を叩かれた。
振り返ると出久が微笑んでいて、なんだろうと見上げる。
緑谷
初めての文化祭はどう?
神薆
…そうね、今だけは世負いも忘れられるわ。
とっても楽しい、素敵な記憶ね♪
緑谷
ふふ、良かったよ。

…あたしのことも気にしていてくれたのね、本当に優しい子。
まるでカスライナの様ね。

その後、あたしは出久に誘われてルミリオン、壊理と一緒に文化祭を回った。
宴よりは催し物の精度は低いが十分楽しめた。
緑谷
今日はありがとう!楽しかった

夕日の沈むオレンジ色の光を浴びながら、あたしたちは校門にいる。
壊理の寂しい雰囲気を掴むと、出久は何処からか赤い物体を取り出す。
緑谷
エリちゃん、サプラ〜イズ!
通形
リンゴ飴!売ってた!?俺探したよ

…あれがリンゴ飴っていうのね…オンパロスにはなかったわ。
壊理はそれを頬張ると、嬉しそうに笑いながら呟く。
壊理
フフ…さらに甘い
緑谷
また作るよ。楽しみにしてて
壊理
うん!
…あ、エデンさん!
神薆
何かしら?
壊理
私、今日幸せ…だったと思う…!
エデンさん、幸せのイメージだから、伝えたくて!
神薆
…ふふ♪

その日は通常通り寮で過ごしていた。
そろそろかな、と石板…テレビを覗くと、やはりエンデヴァーの戦いが映されていた。
焦凍がいる、隣に。
ふざけんな…

…どれだけ嫌っていたとしても。
知って仕舞えば他人の様には振る舞えない。

エンデヴァーは高々と舞い上がり、ハイエンドを地面へ叩きつける。

勝利のスタンディング。いや、始まり。
えぇそうね、燈矢のことも含めて、全ての始まり。

決着が見えると、焦凍は座り込んで息を整えようとする。

…昔のあたしだったら、あそこに加勢しに行ってたかな。
昔のあたしだったら、焦凍に寄り添っていたかな。
なんだかもう、愛を感じ取れなくなったな。
ヒアンシー
…ショート様、私の合図に合わせてゆっくり呼吸をして下さいますか?
っ…はぁ、…すぅ…
ヒアンシー
…イカルンいりますか?
…はぁ、す…?

ヒアンシーは焦凍にイカルンを抱えさせ、精神的安定を図った。
案の定落ち着いた焦凍に、ヒアンシーはまだ不安そうに見つめる。
ヒアンシー
…ショート様…
…大丈夫だ、ありがとな…神薆…
先生も…
イレイザーヘッド
俺はいい、落ち着いたなら部屋で休め
はい…
上鳴
すごかったよな~昨日のエンデヴァー
切島
ああ、脳無にぶっ倒れされた時には肝冷やしたけどよ
最後は勝利とガッツのスタンディング!くう!漢だぜ!!
尾白
さすがNo1だね!
緑谷
轟君、エンデヴァーの容態は?
ああ、命に別状はないそうだ
峰田
自慢の父ちゃんだな!轟!
あぁ、そうだな。
あと神薆、ありがとな
神薆
…え?
あの時俺を落ち着かせてくれただろ、助かった
神薆
…えぇ、もう大丈夫なら良かったわ♪

焦凍がパニックになっていたのは覚えている。
落ち着かせる…ならヒアンシーのはず。
あたし、ヒアンシーに貸した記憶、ない。

神薆
…摩耗?または…

先生に告げられ運動場γに出た。
初期と段々コスチュームが変わって来ている。
徐々に、あの頃に近付いているのを感じさせる。
物間
さあA組!!今日こそシロクロつけようか!!

運動場で待機していると、B組がやって来る。
あら、合同練習?
神託には見なかったかも。もしかしたらそんなに重要なシーンじゃ無いのかもね。
ブラドキング
今回特別参加者がいます
イレイザーヘッド
ヒーロー科編入を希望している普通科C組 心操人使くんだ。

人使は首に捕縛布を巻き、口元に変声機マスクを着けている。
コスチュームは体操着。
心操
俺は立派なヒーローになって俺の個性を人の為に使いたい

とても素敵な目標。
叶うわよって伝えたい。
神薆
イレイザーヘッド
参加したいか?
神薆
いえ…これは見ているからこそ楽しめる物よ
それに、もうイレイザーヘッドには迷惑掛けられないし…。
イレイザーヘッド
…あぁそうだな、一人でどうにかできるようになんなきゃいけない。
だが…制御できる奴をサイドキックの様にするのも視界に入れておけよ。
神薆

あたしの個性、本当に暴走したら制御なんて出来ないと思う。
なんたって世負いの子の肉体に世負いの子が宿るんだもの。
あたしの体を借りたカスライナは多分、制御不能の獣状態になってしまう。壊滅の運命を歩む者。

…それに、あたしのこれは個性では無いから…イレイザーヘッドの抹消は効かない。まだ言ってないし、彼も抹消ではなく捕縛布で制御しているから気が付いていないはず。


暫く眺めていた。
…なんとなく、視線を離したくなくて試合を見つめる。
今は響香達と取陰達の対戦。






『決めてんだよ!俺ァ!勝負は必ず完全勝利』


『4:0無傷』


『それが!本当に強ぇ奴の勝利だろ!』






違う、それは圧倒的力量の差が無いと出来ない勝利の方法よ。
相手が弱く無いと出来ない。
君は自身で傷を付けてしまうの、痛々しくて見てられない、信じられない程の…。

ねぇ…もし輪廻をしていなければ、もしも神託を知らないまま生きて…過ごしていれば…
あたしは普通の女の子になれていたのかな。

もっと素敵な生活を送れていたかな、キュレネ?
神薆
…っ…
長夜月
「替わろうか?」
神薆
…えぇ。
長夜月
神薆
っは、…
イレイザーヘッド
物間、神薆。
ちょっと明日、エリちゃんのとこ来い
物間
???
神薆

長夜月…ちゃんと良いところで戻してくれたんだ。有難いわね。
でも…
神薆
ごめん、もうちょっと…歳月はあたし使いたく無いの…
長夜月
「あんたの願いなら良いよ、いつまで入ればいい?」
神薆
あたしが良い、って言うまでかしら?♪
壊理
ゆうえいのふのめん…
物間
ハハハハ、何言ってんのかな?この子
通形
文化祭の時、君のこと"雄英の負の面"と教えたんだ
イレイザーヘッド
おう、緑谷、通形、悪いな呼びつけて。
物間に頼みたいことがあったんだが、如何せん。
エリちゃんの精神と物間の食い合わせが悪すぎるんでな
物間
僕を何だと思ってるんですか?アッハハハハ
イレイザーヘッド
それと…俺が呼んだのは神薆だ。
緑谷
(明らかに雰囲気が落ち着いていた…やはり個性か。だとしたら誰だ?落ち着いているって聞いた人は…
死の…いやこの場で死の必要はない。浪漫か?)
イレイザーヘッド
お前は…
長夜月
あるデータの内で3月は永夜の帷って言われてるの。
だから、それに因んであたしのことは長夜月って呼んで。
エデンの先生、イレイザーヘッド?
イレイザーヘッド
やはりか…
長夜月
エデンに無理をさせたらダメだから、あたしが代わりに手伝ってあげるよ。
イレイザーヘッド
どうだ?物間
物間
うん…スカですね…残念ながらご期待には添えられません、イレイザー。
イレイザーヘッド
そうか、残念だ。
緑谷
物間くん、スカって?
物間
僕は個性の性質そのものをコピーする。
何かしらを蓄積してエネルギーに変えるような個性だった場合、その蓄積まではコピーできないんだよ。
通形
なんでコピーを?
イレイザーヘッド
エリちゃんが再び個性を発動させられるようになったとしても、
使い方がわからない以上、またああなるかもしれない
物間がコピーして使い方を直に教えられたら彼女も楽かと思ってな。
長夜月
因みに、前から言っているけれどエデンの"あれ"はこの子とは違うから、全く参考にならないよ。
イレイザーヘッド
神薆の個性の本質がわからない以上、全く違うとは言い切れないだろ。
長夜月
どうかな…
イレイザーヘッド
はぁ、まあそう上手くはいかないか
壊理
ごめんなさい、私のせいで困らせちゃって…
私の力…皆を困らせちゃう…こんな力無ければよかったなぁ。
緑谷
困らせてばかりじゃないよ!忘れないで!
僕を救けてくれた!使い方だと思うんだ。
だから、君の力は素晴らしい力だよ
壊理
私、やっぱりがんばる
長夜月

「エデン、出て来たい?」

まだ良いわ。
お願いして良いかしら?長夜月。
長夜月
「あんたの願いなら本望だよ。」
じゃあ、もういい?
イレイザーヘッド
お前は目の前で何か巻き戻してみろ。
長夜月

長夜月はその場で、雄英校舎の窓に手をつけた。
歳月を使うと、窓は割れ始める。
また再び窓に手をつけ、歳月を呼び覚ますと綺麗に戻る。
長夜月
歳月は記憶を頼りに時間を動かす。
決まっている運命から外れる事はできない。
緑谷
(…決まっている運命…オールマイト…)
長夜月
安心して、いずれあんたはちゃんと使える様になるよ。
壊理
…幸せさん…
峰田
雪だー!
切島
心頭滅却乾布で摩擦!
飯田
転ばない様にな
神薆
ゆき…?
瀬呂
ねえ、轟たち何時くらいに帰って来るか聞いてる?漫画の続き借りてェの
緑谷
6時くらいって
飯田
仮免補講最終日、二人が今日のテストで合格すれば、晴れてA組全員、仮免取得だ
耳郎
今頃テスト中かね?大丈夫かなぁ…
葉隠
大丈夫でしょ。爆豪くんも最近感じいいし
神薆
緑谷
…神薆さん
神薆
なぁに、出久?
緑谷
体調は大丈夫?
吐き気とかしてない?
峰田
…は?
緑谷
え?
峰田
お前…それは事後にやる会話だろー!!!
もしやお前神薆とそこまでいったんかクソやろうがぁああ!!!
緑谷
…えっ、え?いやいやいやええちがっち、ちが、ちが!!
神薆
…?
耳郎
峰田何してんの…ウチの神薆がそんなことするわけ無いでしょ
葉隠
そうそうっ、個性使ったって事だよね?
緑谷
そう!!!!!!
神薆
あぁ、彼女と会話出来た?
緑谷
いや…会話らしい会話はしてないけど…
神薆
歳月の事、聞いたのかしら?
大丈夫よ、出久が思っている様な明日にはならないから。
緑谷
Mt.レディ
楽観しないで。
良い風向きに思えるけれど裏を返せばそこにあるのは、危機に対する切迫感。

教室の机でぼーっとしていると、Mt.レディとミッドナイトが教室にやって来る。
Mt.レディ
勝利を約束された者への声援は果たして勝利を願う祈りだったのでしょうか!?
ショービズ色濃くなっていたヒーローに今、真の意味が求められている
イレイザーヘッド
特別講師として彼女を招いたんだ、お前ら露出も増えて来たしな
Mt.レディ
授業内容はヒーローインタビューの練習よ!

何人か呼ばれた後、あたしも壇上に上がらせられた。
インタビューって…何を話せば良いのかしら?
メディアっていうのもよく分かってないし…。
Mt.レディ
素晴らしい活躍でしたね!
エデン!
神薆
…ふふ♪
褒めてくれて嬉しいわ、大好きな皆を守る為ならもっと頑張れちゃうわね♡
Mt.レディ
(何この子、可愛い…。)
どんな必殺技をお持ちで?見せてください!
神薆
うーんそうねぇ…皆大好きだから必殺技なんて作った事無いけど…

あたしは空中に蕾を創り、弓を引いてそれを穿つ。
すると蕾から綺麗な花弁達が舞う。
神薆
ふふっ、ちょっとしたサプライズよ。
あたしの素敵なところは、是非実戦で見てちょうだいね♪
Mt.レディ
(…妙に慣れてるわね…。)
素晴らしい、流石!!
神薆
…く、りすます…
緑谷
うん、今日25日だよ
神薆
緑谷
みんなでパーティやるみたい、神薆さんも参加するよね?
神薆
…宴…!
緑谷
うん、宴!
芦戸
はいっ、緑谷と話してないで神薆はこっちー!
神薆
緑谷

(…今まで、なんとなく大人びていた神薆さんが、年相応の笑顔だ…つられて笑っちゃった)

あたしは三奈と透と百に連れられ、部屋に行くとふわふわした洋服が用意されていた。
神薆
これを着るの?
芦戸
そう!ほらほら、みーんなお揃いなんだから!
葉隠
同調圧力〜!
八百万
神薆さんに似合うと宜しいのですが…
神薆
…どうかしら?
芦戸
良き!!!!
みんなのとこ行こー!!
葉隠
早く見せよ早く
八百万
とてもお似合いですわ!

共有スペースに戻ると、皆が準備を進めていた。
神薆
…その袋は?
芦戸
プレゼント!
神薆
…贈り物、あたし用意してないわ
芦戸
良いよ良いよー、クリスマス知らなかったんだし!
神薆
いえ…ライアから借りれるかしら、ちょっと時間使えば作れる筈。
葉隠
何作るのー?
神薆
うふふ、秘密よ♡
八百万
えっ、全員に?
神薆
えぇ、少し時間かかってしまったけど…ライアの加護が付いた物なの。
きっと助けてくれるわ、そういう子だから。
葉隠
えー可愛い!
飯田
む、腕輪か!
神薆
ミサンガの様に足につけても良いわ、使い方は自由。持っておくだけで良い…いや、必ず持っていて。
あたしからのお願いよ。
緑谷
お、光に当たると光るな。
神薆
キラキラしておしゃれでしょう?
爆豪
んで俺が…!!
神薆
良いから。
…君にこそ必要なの、お願い、持っていて…。
爆豪
神薆
誰もいない寮は静かね。

静寂な部屋に、一人あたしがポツンとしている。
今日は大晦日という、一年の節目の日らしい。
プロヒーローの護衛で皆は家に帰っているらしい。1日だけ。
あたしはといえば、親のいない家に帰る必要性も無く理由なく寮にいる。
騰荒
…パーティの際、アグライアの腕輪を持たせたのは何故だ?
神薆
皆…特に勝己を守って欲しくて。
このまま預言通り進むのなら、皆は言い表せないほどの死の淵に立たなければならない、そうでしょう?
騰荒
…心臓、か。
死についてはキャストリスの方が詳しいだろう。
神薆
アグライアの神性は、エーグルの戦いの時もとても役に立ってくれた。
一欠片でもそれがあれば、あたしはこの物語を完遂させる為に使うわ。
その為に…末っ子のあたしに少しだけついて来てくれているんでしょう、皆?
ケリュドラ
…ふん。
いずれその土地も僕の支配下になるだろうからな。
神薆
ケリュドラ
最初から僕の神権を使わなかったのは、摩耗を恐れたのか?
神薆
…より強力な神権程、摩耗が激しいのよ。
だからアグライアとケリュドラ、キャストリスはあまり使いたく無いの。
まぁ、アグライアには結構無理をしてもらっているのだけど。
ケリュドラ
楽園卿、カイザーの名において告げよう。
終焉の星神の名を借りた奴は、お前の一部だ。
それを取り戻す、つまり殺す。
そうすればお前は完成形となり、今までの神託やらの記憶は全てなくなる。
アナイクス
…それを狙っているという事ですね、彼女は。
神薆
あたしのこと大好きだものね。
長夜月となのかに似ているわ。
トリビー
安心ちて、エデンちゃん。
あたちたちはエデンちゃんが記憶を残したままの神託を見たよ。
神薆
…えぇ、ありがとう。
神薆
…炎じ…デヴァーのインターン?
あぁ、俺と爆豪と緑谷はエンデヴァーの所に行く。
相澤先生から聞いていたが、前回のインターンお前参加してなかったんだってな。
神薆
えぇ、まぁ…でもどうして?
認めたくねぇが、あいつは俺の事を踏まえて複数個性の伸ばし方について良く知ってる。
お前にとって、都合良いんじゃねぇかと思って。

電話越しに聞こえる焦凍の声に、少し驚く。
あたしを誘うなんて思わなかった。
エンデヴァーのインターン…何があったっけ…ええと…
確か時期的にホークスが連合に…
まぁ、近くで眺める分には都合良いかな。
神薆
ありがとう、そうするわ。
焦凍も無理しないでね
わかった

あたしたちは冬にふさわしい服装で、エンデヴァーの前に来た。
…焦凍は長袖なだけだけど。二人はマフラーを巻いている。可愛いわね。
あたしは制服のブレザーの袖を途中まで捲り、布を纏っていた。
おしゃれで可愛いでしょう?
エンデヴァー
ようこそ、エンデヴァーの元へ…なんて気分では無いな。
焦凍の頼みだから渋々許可したが、焦凍だけで来てほしかった。
神薆
溺愛?
許可したなら文句言うなよ
エンデヴァー
焦凍!!
爆豪
補講の時から思ってたが、きちィな
エンデヴァー
焦凍!本当にこの子と仲良しなのか?
爆豪
まァ、トップの現場見れンならなんでもいいけどよ
エンデヴァー
友人は選べと言ったハズだ!!
緑谷
インターン、許可して頂きありがとうございます
エンデヴァー

街を歩いていると、エンデヴァーがいきなり走り出す。
エンデヴァー
申し訳ないが、焦凍以外にかまうつもりはない!
学びたいなら後ろで見ていろ!!
緑谷
指示お願いします!

硝子操作の個性。終焉とか言っていたわね。
侮らないで欲しいわ、終焉なんて。
路地裏にエンデヴァーが入り込むと、そこを叩こうと奴の仲間が向かって来る。
も、ホークスが着いて対処した。
ホークス
そうなればエンデヴァーさん、俺たちも暇になるでしょ
神薆
(ヒーローが暇を持て余す社会に…)
ホークス
…イマドキ、エンデヴァーさんの所に女の子も来るんすねー
エンデヴァー
どういう意味だ
神薆
ショートを踏まえて、あたしに合う伸ばし方をしてくれるんじゃ無いかって、この子が言っていたわ、
エンデヴァー
焦凍…!!
信用してるわけじゃねぇ

その後、ホークスと別れエンデヴァー事務所に向かった。
皆はサイドキックの子達と話していたが、あたしは聞いていなかった。
というより、他の音に耳を澄ましていた。
ホークスとエンデヴァーの思考。連合の声。

思っていたより…あまりにも警戒心が無さすぎる。もしくは気付いた上で踊らされているか…
連合の施設に金糸を張った。テルミヌスの協力もあって。
あの子、あたしの願いなら大体聞いてくれるものね。

エンデヴァーが部屋から戻って来る。
エンデヴァー
ショート、デク、エデン、バクゴー。お前達は俺が見る。
だがその前に、デク、エデン、バクゴー、貴様ら三人のことを教えろ。
今貴様らが抱えている課題、出来るようになりたいことを言え。
緑谷
力をコントロールして最大のパフォーマンスで動けるようにしたいです
エンデヴァー
難儀な個性を抱えたな。君も、こちら側の人間だったか。
爆豪
No.1を超える為に、足りねーもん見つけに来た
エンデヴァー
良いだろう。では次、エデン
神薆
…貴方達の事が知りたい。
エンデヴァー
ふむ?
神薆
言い方を変えるわ、正しい道を辿りたいだけ。
その道に貴方と…焦凍と勝己と出久と…ホークスと。
つまり貴方を見せて頂戴、No.1ヒーロー?
エンデヴァー
…具体的な目標は成り立っていないのか。まずはそれを探すことが…
神薆
具体的な目標?
ロマンチックな結末に辿り着きたいだけよ。
宜しくね。
エンデヴァー
まぁいい。

そこから、何日か経った日。
神託通り焦凍の家に行った。
冬美
いらっしゃい!
忙しい中お越し下さってありがとうございます。初めまして、焦凍がお世話になっております。姉の冬美です!

礼儀正しく挨拶してくる可愛い子は、焦凍の姉で燈矢の妹、冬美。
冬美
突然ごめんね。今日は私のわがまま聞いて貰っちゃって。
改めて紹介するわね。私は焦凍の姉の冬美です。小学校で先生をしています。
焦凍の兄の夏雄。大学生
夏雄
どうも
冬美
焦凍、お友達、紹介してくれる?
ああ、ヒーロー科のクラスメイトで緑谷と爆豪と神薆。
緑谷
は…はじめまして!
冬美
とりあえず!冷めないうちに食べましょう!苦手な料理があったら無理しないで!食べなくてもいいからね
緑谷
はい!いただきます
神薆
いただきます♪

美味しそうなものを黙々と頬張る。
…さて、順調に進んでくれるといいんだけど。
夏雄
お手伝いさんが腰やっちゃって引退してからずっと姉ちゃんがつくってたんだから
緑谷
なるほど
冬美
夏も作ってたじゃん~代わり番こで
え?じゃあ、俺も食べてた!?

…かわいい。
夏雄
あー、どうだろ…俺のは味濃かったから、エンデヴァーが止めてたかもな。こんなもん食うなってさ

…子の、小さな反抗。
受け入れ難い大人への、気付いて欲しいという反抗。
大丈夫、順調に進んでる。
エンデヴァー
気付きもしなかった
冬美
しょっ…焦凍は学校でどんなの食べてるの?
学食で…
神薆
蕎麦
蕎麦だ
エンデヴァー
今度、夏雄の料理も
夏雄
ごちそうさま、席には着いたよ、もういいだろ

そう言って立ち上がった夏雄。
夏雄
ごめん姉ちゃん。やっぱり無理だ。
神薆
緑谷
ていうか、二人も知ってたんだ。轟家の事情
爆豪
へぇ!?俺のいるところでてめーらが話してたんだよ
緑谷
聞いてたの!!?
神薆さんも?
神薆
あたしは…

「緑谷君達に片付け手伝わせちゃってわるいなぁ」

「手伝わせないほうが2人にわるい」

「私だって夏みたいな気持ちがないわけじゃないんだ。
でも、チャンスが訪れてるんだよ。焦凍はお父さんの事どう思ってるの?」

「この火傷は親父から受けたものだと思ってる」

「お母さんは堪えて…堪えて…あふれてしまったんだ。お母さんを蝕んだあいつ…そう簡単に許せない」

「でもさ、お母さん自身が今乗り越えようとしてるんだ」

「どうしたいのか正直自分でもわからない…親父をどう思えばいいのか…まだ何も見えちゃいない」



すると突然勝己が扉を開けた。
爆豪
客招くならセンシティブなとこ見せんなや!!まだ洗いもんあんだろうが!!
冬美
あ!いけない!ごめんなさい、つい…
爆豪
晩飯とか言われたら感じいいのかと思うわ!フツー!四川麻婆が台無しだっつの!!
緑谷
ごめんなさい。聞こえてしまいました

轟くん、と出久は声をかける。
緑谷
轟くんはきっと、許せるように準備をしてるんじゃないかな
え?
緑谷
お父さんの事が本当に大嫌いなら"許せない"でいいと思う。でも、君はとても優しい人だから、待ってるように見える。
きっと今は…そういう時間なんじゃないかな…

…出久ってば、本当に主人公なのね。
緑谷
お兄さんが…
冬美
燈矢兄の事、緑谷君達に話してないんだ
率先して話すもんじゃねぇだろ
冬美
夏は燈矢兄ととても仲良しでね、よく一緒に遊んでた

燈矢、体質が母に似て熱に弱い。
その上父の炎司よりも火力は高く、最高峰を目指せた。
己を燃やさなければ。
神薆
…出久の手助け。
緑谷
ありがとう、黒鞭を出すまでの時間金糸で支えてくれてたね。
体調は大丈…
神薆
っあ、…

倒れかけたあたしの背後に、素早く龍霊を滑り込ませた。
あ…丹恒…。
神薆
…たんこ、
騰荒
お前は気を張り過ぎだ。
長夜月に任せても良い、自己犠牲は無に返すだけだ。
神薆
…ふふ…貴方が言わないで…
騰荒
立ち上がれるか?
神薆
騰荒
はぁ…やはりな。
長夜月
…あれ、丹恒?
どうして分離されてるの?
騰荒
わからない、良い変化とは思えないがな。
長夜月
ふぅん、帰りなよ
騰荒
そうさせて貰おう
緑谷
…今の…が、大地の…?
長夜月
そうだね、なんらかの理由でエデンから分離されてたけど。
暫くはあたしがエデンでいるよ。宜しくね。
瀬呂
遅ェーよ!謹慎ボーイズ!あと神薆!
上鳴
早く手伝わねーと、肉食うの禁止だからな!
緑谷
すぐやるね!
爆豪
肉を禁じたらダメに決まってんだろうが!イカれてんのか!
長夜月
電気、ヘアピン付けてるのね。とっても可愛いわ♪
上鳴
まじで!?
長夜月
今度ヘアアレンジさせて頂戴♡
上鳴
っしゃあ!もちろんー!
爆豪
ニラ切った奴誰だ!!
俺だ
爆豪
姉ちゃん泣くぞ!!
長夜月
ふふ♪
長夜月
わ…綺麗な花弁ね…♪
上鳴
知らない?桜ってぇの
春だけ咲くんだぜ!入学式とか卒業式とかの定番!
長夜月
桜…可愛いお花ね、あたしはチューリップが好きなんだけど、桜も好きだわ♪
上鳴
へぇー!

「あの麓にヒーローたちがいる!
我々は後方で住民の避難誘導だ!」

バーニン、エンデヴァーのサイドキックが高らかに声を上げる。

超常解放戦線。
もはや連合よりも更に大きくなった隊。
ホークスの参入のおかげで、情報をつかんだ。
やはり公安はやる事が違う。

「前線が動いた!私たちも行くよ!」
バーニンの合図に、皆が走り出す。


次の場面は、すでに更地になった街を眺めている所だった。
…長夜月、何したのかな。あれらの氷は温度がある。
つまり焦凍か、あるいはもう一人の氷の個性の子。
あれは長夜月の六相氷ではない。

辺りを見ると、少しだけ。長夜がいた。
記憶か。
ありがとう、長夜月。

ミッドナイト、クラスト…他にも、犠牲は沢山。
あぁ、止めたい、止めたいよ。止められないよ。
テルミヌス
止めてあげようか、愛しい私のエデン。
神薆
…また貴方…
テルミヌス
その身体、永夜の子に貸したね。
周りに長夜が纏わり付いてる。
神薆
…貴方は…あたしの、何?
テルミヌス
…教えるね。私は貴方の為の記憶の化身。
ヤーヌスの聖女から見せて貰ったでしょ?神託。
貴方、6000万回の輪廻を経て、人間性を失いかけてる。
神薆
テルミヌス
これだけ輪廻してて、まだそれだけの人間性が残ってるのは流石としか言いようが無いよ。
浪漫の子でさえ殆どを失ったのに。
神薆
…黙って…
テルミヌス
私は貴方を助ける為に生まれた。
ねぇ、はやく輪廻から抜け出そうよ。壊滅の運命を歩む世界に望みなんてない。そうでしょ?
神薆
黙ってよ…
テルミヌス
ここは現実世界のオンパロスの様なもの。ナヌークの瞳がオンパロスのカスライナを捉えている様に、この世界の壊滅がこの星に視線を向けている。
神薆
…あたしの運命は…壊滅よ…。
己を燃やし尽くしても、この世界を正しい運命へと導かなければならない…
だから、退いて…ねぇ、6005万回目のあたし!!!!

死龍ボリュクスを召喚した。
あたりは土煙が立っていて、とても見渡せそうにない。
出久は…勝己は…焦凍…は、…お茶子…はぁっ、…
テルミヌス
摩耗しきってるね、その身体。
ねぇ、オンパロスに…
神薆
戻ろうって?
テルミヌス
…流石。
神薆
あたしは知ってるわ、今オンパロスでも同じ様な結末を辿っている事を。
オンパロスのデータが…!!
テルミヌス
そうだよ。
一緒に消えよう、この運命に囚われた世界から。逃げよう、運命に縛られない世界まで!
神薆
…あたし達は脆弱なデータに過ぎない。その脆い命、それ一つだけで…世界を救えるってんなら…!

蕾が空に浮かび、勝手に破裂する。
地面には沢山の花が咲いていて、ロードが出来ていた。
壁は硝子張りになっていて、外にも花畑が続いている。
神薆
…"楽園"…やっと、自分の能力を出してきたね。
これがあたしの個性なのね、とっても素敵…
テルミヌス
…今はまだ帰らなくて良い。会話してくれる?
神薆
…なぁに?
テルミヌス
…貴方は今まで、黄金裔に心の傷を一緒に背負ってきて貰ってた。
今度は貴方の番だよ、心臓を刺されたのは…死、紛争、浪漫、詭術…だったっけ?
それで、鳩尾を刺されたのは法。
神薆
えぇ。
テルミヌス
この楽園から出れば、それらの傷は全て貴方が背負う事になる。
ねぇ、何処まで耐えられる?
私は心臓を2突きされたら耐えられないよ。
神薆
…っ、勝己は…心臓を己で破壊するのよ…焦凍だって、炎に灼かれて…お茶子は腹を刺された。
出久は…!
テルミヌス
…それが何?
神薆
止められたあたしが止めなかった、それらの傷で拭えるのなら喜んでこの身体を差し出すわ!
テルミヌス
…耐えられなかったらどうするの?
神薆
あたしはデータ、永劫回帰でまたやり直しましょう。
大丈夫、次はきっとうまくいくの。
テルミヌス
それは自身への言い聞かせた言葉でしょ?
神薆
えぇ…あたしへの言葉よ。
テルミヌス
…貴方は本当、研究のし甲斐がある…!
わかったよ、この楽園を終わらせる。じゃあね愛しいエデン、エリシア。
神薆
愛しいあたし、また明日…ね♪

楽園のような花畑の景色が消えると、目の前には処刑人がいた。
…いや、処刑人に似たあたしだ。
…さぁ、あたしに全ての制裁を。
神薆
ッげ、ふ…ぅ゛…!

心臓を貫かれた。
1,2,3,4,5,
鳩尾から黄金が溢れ出る。口内は鉄の匂いがした。
神薆
っ…この程度、どうって事ない゛でしょう…!?

あたしは立ち上がり、歩き出す。
上鳴
…え?
芦戸
嘘でしょ…?
なんで…先生もなの…に…
切島
嘘だろ…なぁ…あり得るかよそんな…
行方不明からのこれって…
耳郎
…なんで…

無線で伝えられた、震えた声。



『エデン 神薆莉薆』


『心臓を4箇所、鳩尾を刺され、顔面にヒビ割れ。』


『意識不明の重体です』


耳郎
心臓…鳩尾…って…
上鳴
助からねぇじゃん…
神薆

見る見る内に、エデンの心臓に金糸が集まる。
そして歳月が目を覚まし、エデンの身体が治っていく。
神薆
…あ、れ…気を失っていたの?

目を開くと、側にはボロボロのプロヒーロー達。
皆目を大きく開けて此方を覗く。
神薆

そして瞬間、無線で伝えられた。

『エデン 神薆莉薆』

『意識取り戻しました!!!!』

神薆
…あ…

歳月の力が薄らとしか残っていない。
自身の蘇生に殆どを尽くしたか…。
神薆
…長夜月…
緑谷
…神薆さん…どうして此処に?
神薆
出久、貴方が雄英を去るなら、あたしは貴方の手伝いをするわ。
緑谷
…ダメだよ、そうしたら君が危険だ。
神薆
貴方が一人で十分強いってことは分かってる、えぇ、この世界の誰よりも知っているわ。
でも、取り返しのつかなくなってからじゃ遅いのよ。
緑谷
ダメ、だ…
神薆
貴方に何を言われようと、あたしは貴方を守る。
貴方が死んだら、正しい方向へ行けないわ。
緑谷
…それでも…
神薆
これからは、ロマンチックで魅力的で、もっと残酷な運命なの。
あたしはそれを見届ける
緑谷
神薆
出久、一緒に踊りましょう?
.
そうやって騙して襲うつもりだろ!ここから出て行け!
.
やめてぇえ!!
緑谷
落ちっ着いて下さい!こんな雨の夜ヴィランの襲撃に過敏になるのもわかりますが、よく見てください。
この人に敵意はありません。この人のこと僕に任せてください。お願いします。
オールマイト
大丈夫かい!
緑谷
オールマイト
.
オール…え!?
緑谷
彼女を避難所へお願いします。
僕は一緒にはいられない。
オールマイト
待て!これ持って行きな!
トンカツ入ってるから元気でるぞ
緑谷
ありがとうございます

そうやって笑う出久は、マスク越しに可愛らしいと思った。

歴代継承者との会話の最中、出久はオールマイトから貰ったトンカツを食べている。
可哀想だから傘を差した。
緑谷
…ありがとう、神薆さん
神薆
…ねぇ、出久
緑谷
何?
神薆
クリスマス…?の時に、あたしが渡した腕輪、まだ持ってるかしら?
緑谷
…うん、君が必死にお願いしてきたから、毎回持ち歩いているよ。
神薆
…そう、良かった。
緑谷
…何か、テルミヌスと何かあったの?
神薆
…楽園
緑谷
神薆
あたしの個性、楽園なの。
緑谷
黄金裔じゃ…
神薆
あの子はあたしに楽園を築いた。あの場所では、あたしは怪我をしない。
緑谷
…でも、心臓と鳩尾を刺されたって聞いたよ。
神薆
…それは、データの中で黄金裔が受けた傷の肩代わり。
それで…蘇生の為に長夜月は歳月を使った。
緑谷
うん…
神薆
それで、歳月の機能が殆ど消えた。
緑谷
…えっ、?
神薆
あたしはもうきっと歳月が使えないわ。
それだけ、伝えておきたいと思って。
緑谷
…情報が多いな、つまり、蘇生で摩耗し過ぎて歳月が使えなくなったのか。
神薆
ええ
緑谷
…君に何かあったら、僕が守るよ。
神薆
…貴方が危険な目に遭えば、あたしが助けるわ。
これからはもう、さようならは無しよ。
緑谷
…善処するよ。
神薆
オールマイト、情報は持って無かったわ。
緑谷
また爆発するかもしれません。気をつけて
オールマイト
待ちなさい!二人とも、ご飯!食べてないだろ
緑谷
オールマイトもう大丈夫です。付いてこなくて。
僕らはもう大丈夫ですから。
オールマイト
そういうわけには…!
緑谷
僕はもう!
反動無しでオールマイトの100%の同等の動きもできます!
だから…だから…だから心配しないで!
オールマイト
待ちなさい!!!

出久はとうとう、恩師オールマイトの手を振り払った。


『皆がまた安心して過ごせる様に』


『皆がまた普段通りの生活を送れる様に』


『皆とまた笑って過ごせる様に』



金糸を伝ってくる出久の心情。
素敵…だね。
ディクテイター
焦燥からの暴走。独りを望みそして疲弊。
あの方の仰った通りでござぁすなああ

『神薆さん、聞こえてる?こいつは… 』

『ディクテイター、タルタロスのダツゴク、刺客。』

『今度こそオール・フォー・ワンの居場所教えてくれるといいな』


金糸伝う音が聞こえると教えた出久は、伝って説明をしてくれる。

『知ってます…いま、解決策を…』

神薆
いずっ、く、

あたしの腕を強く掴まれ、倒され、袋叩きにされる。
皆の持っている物は大した凶器じゃない。大して痛くもない。

…そろそろ来てくれるはず、ねぇ?
爆豪
A・Pショット!

空から小さな爆発の塊が降りてくる。
…やっと来てくれた、良かった。
爆豪
おまけも付いて、いたぞ、てめェら

あたしはすっかり安堵する。
緑谷
僕は大丈夫だよ。だから心配しないで離れて
爆豪
そいつぁよかった!
さすがワン・フォー・オール継承者様だぜ!
んで…

勝己は出久に向かって、自分の口角に親指を向けて言った。
爆豪
てめェは今笑えてンのかよ?
緑谷
笑う為に…安心してもらう為に…行かなきゃ…だから…どいてよ皆!
爆豪
どかせてみろよ!オールマイト気取りが!

あたしはただ、皆が出久を引き戻そうとしているのを眺めていた。



『死柄木にぶっ刺された時、言った事覚えてっか?』

『覚えてない』

『“一人で勝とうとしてんじゃねェ”だ。続きがあるんだよ』

『身体が勝手に動いて…ぶっ刺されて…言わなきゃって思ったんだ』


『てめェをずっと見下してた。無個性だったから。
俺より遥か後ろにいるハズなのに俺より遥か先にいるような気がして。』



『嫌だった。見たくなかった。認めたくなかった』



『だから遠ざけてたくて虐めてた。
否定することで優位に立とうとしてたんだ。
俺はずっと敗けてた』



『雄英入って思い通りに行くことなんて一つもなかった。
てめェの強さと自分の弱さを理解してく日々だった。』



『言ってどうにかなるもんじゃねェけど』



『本音だ、出久』



『今までごめん』




『ワン・フォー・オールを継いだおまえの歩みは理想そのもので何も間違ってねぇよ。
けど今、おまえはフラフラだ。
理想だけじゃ超えられねぇ壁がある。』



『おまえが拭えねぇもんは俺たちが拭う』



『理想を超える為におまえも雄英の避難民も街の人も…もれなく救けて勝つんだ』





出久がふらつくと、勝己が支えた。





『“ついてこれない”なんて言ってごめん』




『わーってる』



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