数日後。起きてもフィシの姿が見えないので、フィシの作業部屋へ行ってみた。
フィシが再生ボタンを押す。流れてきたのはーー
声が出せなくなったあの日、夢の中で聴いたことのある曲だった。
そう言うとメモを取り出し、可愛らしい文字で書きはじめた。
ボクは翻訳機に歌詞を入力し、何度も再生して発音をつかむ。
かなり難解な発音だったが、繰り返すごとに少しずつ特徴をつかんできた。
数時間してなんとかつかみきると、フィシがマイクを用意してくれた。
前奏が終わり、思いっきり息を吸う。
何回も収録しなおすのを覚悟していたが、案外あっさりと終わってしまった。

次の日。つい遅くまで寝てしまい、フィシに起こされてようやく起きた。
CDには「ラストソング/NEICHEL feat.マホロア」と書かれていた。
フィシが持ってきたCDプレイヤーに入れ、再生する。
その途端。
視界が白に包まれる。
目覚めると、ボクはCDとCDプレイヤーを抱えて、中世的な街並みに転がっていた。
どうやら、贖罪は終わったようだ。
そう思い立ち、CDを入れる。
すると、プレイヤーから彼女……フィシの歌声が聴こえてきた。
フィシは最近喋れるようにはなってきたが、ところどころ止まってしまうので歌えはしないはずだ、多分。
だが、このCDに記録された歌声には言葉のつっかえもない。
あのトンネルで聴いた歌声よりも、ショッピングモールで聴いた歌声よりも。ずっと伸びやかで、自由な歌声だった。
唐突に、アロさん……マホロアは消えてしまった。
これからは、1人で歩むことになるのだ。
視界の端に見慣れないものがあった。見ると、遊園地のチケットのようだった。
だが、割と色々な遊園地に行ってきた自信のある私でも見慣れないチケットだった。
また、見慣れない……いや、どこかで見たことのある文字が書かれていた。
翻訳機で文字を読みとってみた。設定言語はもちろん、あの人が使っていた言語。
アタリだった。
そう思って手に取ってみると、周りに風が起こる。
なんとかつかんで飛ばさないようにし、ついに風が止んだ。目を開けると、そこにはーー
遊園地が広がっていた。
それも、夢で見た遊園地。
また会えたのが嬉しくって、無事夢が叶ったのが嬉しくって。
私たちは、ハグをした。
こうして、私たちは、ボクたちは。
次元も時空も超えて、それぞれの目的を叶えたのである。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。