過去の記憶から戻る
音寧は病室のベッドの上で、ゆっくり目を開けた
窓の外には、いつもの景色
制服を着た生徒たちが歩いている
昔の自分なら
ただ悔しくて泣いていた
「なんで私は行けないの」
そう思っていた
でも今は違う
音寧は小さく呟く
隣で葵が驚いたように見る
音寧は少し笑った
葵は静かに聞いている
その言葉を聞いて、葵は少し微笑む
音寧は照れくさそうに笑う
もちろん不安はある
朝起きられるかな
授業についていけるかな
みんなについていけるかな
体育はどうしよう
でも
もう「無理だから終わり」じゃない
先生と相談する
学校と予定を立てる
体調を見ながら少しずつ戻る
“戻る方法”を探す
それが今の音寧だった
窓の外を見る
そこには、ずっと憧れていた場所がある
昔と同じ言葉
でも意味は違った
昔は、
「行けないのが苦しい」
だった
今は、
「行くために準備したい」
だった
葵は優しく笑う
音寧も頷く
もう、ただ待っているだけじゃない
教室へ続く道を、自分で少しずつ作っていく












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!