ある程度のことは我慢出来る方だと思ってた。
特別短気でもないし
苛ついたりすることはあるけど
心の中でぐっと堪えれば徐々に治まっていた。
……今回の件を除けば。
楽しそうにお菓子を食べ合う2人を見て
自分でも分かるぐらいイライラしていた。
さっきからあなたの下の名前に視線を送ってはいるけど
お菓子と渡会くんとの会話に夢中で全く気付きもしない。
笑い声が聞こえる度に机に置いていた右手が
無意識にとんとん、と動く。
あー……、ムカつく。
好意丸出しな渡会くんもだし
それに気付きもせずにこにこするあなたの下の名前にもだし
何より、こんな些細なことで苛ついている
自分に対してめちゃくちゃ腹立つ。
いや、それにしてもじゃね?
あなたの下の名前に食べてほしいって
それもうある意味告白じゃん?渡会くん。
あなたの下の名前もそーんな嬉しそうに笑ってたら
勘違いさせんだろ、気付けよ。鈍感。
つーかイライラしてねぇで会話に入れよ、俺!!
何かに気付いたのか
あなたの下の名前は渡会くんが一生懸命作ったであろう
お菓子を持ちながらこちらに近付いてきた。
いや、食べたくねぇし。
……食べたくないは嘘になるけど。
美味そうだし。
ふいっと顔を背ければ
視線を下に向けあからさまに落ち込んだのが分かった。
じゃあ私が食べる…、と持っていたお菓子を
口に入れながら俺の隣に座った。
何してんの俺、ただのガキじゃん。
俺達のことを不安そうに見ていた渡会くんが
あなたの下の名前に話しかけようと隣の椅子に座るのが見えた。
はぁ…、と小さく溜め息を吐いた俺は
渡会くんが手を伸ばすよりも先にあなたの下の名前の肩を掴み
半ば強引にこちらへ向かせた。
立ち上がろうとするあなたの下の名前を押さえて
もぐもぐ、と動く唇に顔を近付ける。
言葉が発せられる前にお互いの唇が重なった。
とろっとしたチョコが口いっぱいに広がり
唇を離した後でも甘い匂いが続いていた。
耳元で甲高い声が響いて、それに加えて
力強く頭を叩かれたからか一瞬くらっとした。
痛い、気のせいだよ、なんてやり取りをしている俺達に
何とも気まずい表情を浮かべた渡会くんが話しかけてくる。
でも。
一言加えた後、自分の方へあなたの下の名前を引き寄せながら
自分なりに作った笑顔を渡会くんへ向けた。
動物か !!!と叫ぶあなたの下の名前を無視して
覚えといて、それだけ言うと
渡会くんはバツの悪そうな表情だけ見せた。
あーあ、本当にガキだな、俺。
嫉妬丸出しなのめちゃくちゃかっこ悪いけど
そうでもしないと相手につけ込まれるし。
未だに文句を言っているあなたの下の名前を見ながら
腰に回している手に更に力を込めた。
end ...











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!