第9話

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2026/08/13 03:49 更新




    木曜日。



いつも通り朝の支度をしていると電話が。

あなた
 もしもし、湊? 
fw
 おはよー、何時頃学校着く? 
あなた
 うーん、8時20分頃かな 
fw
 おっけー、待ってるね 
あなた
 うん、あとでね 

叶やローレンとは違い、湊は学校で待ってるらしい。

なんとなくほっとした私は
いつも通り支度をして家を出た。

学校の校門に着くと見慣れた姿があった。

fw
 おはよー 
あなた
 おはよ、ここで待ってたの? 
fw
 んー?うん、家まで行くと気遣うかなって 
fw
 女の子って朝は用意が大変やろ 
あなた
 ふふ、相変わらずだね、湊は 
fw
 そ?ほら早く行こ行こ 

差し出された手をそっと握ると
にゃはは、と嬉しそうに笑った。


湊ってこういうとこ慣れてるなって思う。

叶やローレンの時みたいに一緒に行くのも
恋人感あって凄く良いなって思ったけど
少なからず待たせてるって感じてしまうから…
湊が言うように用意も時間かかっちゃうし
迎えに来ない優しさが凄くありがたく感じた。







教室に行くまでに湊が飲み物を買いたいらしいから
自販機まで着いて行った。

fw
 昨日ロレだっけ? 
あなた
 うん、そうだよ 
fw
 へぇ〜…
嫉妬された?
あなた
 あはは、うん、結構された 
fw
 ロレ分かりやすいもんね 
あなた
 湊は嫉妬しないの? 
fw
 …するよ、普通に 
あなた
 え、そうなんだ 
fw
 うん、するする 
…でもさ、
fw
 嫉妬してるってバレたら負けやん? 

にこ、と笑う笑顔はいつも通りなはずなのに
なんとなくいつもの湊じゃない気がした。

fw
 てかあなたの下の名前さ 

そう言いながら一歩こちらに近付いてくる。

一瞬、ほんの一瞬だけ。

私の髪をさらり、と触って
「 いっつもいい匂いする 」なんて呟いてきた。

「 なんのシャンプー使ってるん? 」とか
「 もしかして香水使ってる?何つけてるん? 」とか
いつもと変わらないやり取りなのに
どこか特別感を思わせる雰囲気を感じた。


湊だから…?
皆がいつも言ってるような"ホスト感"ってやつ?

絶妙な距離感に少し戸惑っていた。









お昼休みになるとすぐに湊が教室にやってきた。

こと、と私の机にミルクティーを置くと
「 お揃い〜 」と自分のミルクティーを見せながら笑った。

あなた
 あ、ありがと…
湊もミルクティー飲むんだ?
fw
 普段はあんま飲まないけどね
あなたの下の名前と一緒がよかったから

また、何気ない会話。

それでも言葉の節々に、朝と同じような
"特別感"を感じて1人ドキドキしていた。

「 そういえばさぁ 」、と
ストローをくるくると回しながら湊が口を開く。

fw
 キーホルダー可愛いね 
あなた
 あ、うん、…葛葉に… 
fw
 貰った? 
あなた
 うん。クレープも食べてきた 
fw
 かなかなは? 
あなた
 映画代とか…色々奢ってもらっちゃった 
fw
 ロレは? 
あなた
 ゲーセンでぬいぐるみ…
あとプリクラ撮ってきた

スマホケースの中に入っているプリクラを見せると
少しだけ眉間に皺を寄せた気がした。

ほんの一瞬だったけど…

あなた
 …湊、 
fw
 じゃあ俺は何あげよっかな〜 

そう呟く湊は、いつも通りの笑顔を浮かべていて。

気のせいかな、なんて思ってスマホを机に置くと
湊が私の手に自分の手を重ねてきた。

驚いて顔を上げた時にはもう手は繋がれていて
優しく微笑む湊と目が合った。

fw
 …今日は俺が彼氏だから 
あなた
 う、うん 
fw
 俺だけ見ててな? 

顔を近付けてきたかと思えば耳元でそう囁いてくるから
一気に心臓が速くなった気がした。


…距離の詰め方上手すぎだって。
さっきまで特に気にしてる感じしなかったのに。
急に"俺だけ見てて"なんて……

ドキドキしない方がおかしいよ。

fw
 にゃはは、ご飯買いに行こっか 
あなた
 …うん、行こっか 

手を握ったまま教室を出ると
私達は購買に言ってお昼ご飯を買った。

fw
 どこで食べよっかな〜 
あなた
 屋上行く?それとも中庭? 
fw
 んー…、ロレ達とはどこで食べたー? 
あなた
 えっと…、叶とは中庭で食べて 
ローレンは屋上だったかな
fw
 …ふーん 

少しだけ声が低くなった気がした。

湊?、呼びかけるといつも通りの笑顔。

fw
 使われてない教室あるから 
そこでもいい?
あなた
 あ、うん。大丈夫だよ 
fw
 よし、行くよ〜 

湊が連れてきてくれたのは3年生の1番奥の教室だった。

使われてないって言われてた割には
埃もなく綺麗で、何故かクーラーもついていた。

fw
 あー、涼しい
来る前につけててよかった
あなた
 あ、湊がつけたの? 
fw
 うん、先生にお願いして
クーラーのリモコン置いてもらってる
あなた
 あはは、凄いね 
fw
 誰も来ないし内側から鍵かけれるし 
最高だよ、ここ
あなた
 へぇ…、穴場なんだ 
fw
 …"なんでも"できるし 
あなた
 え、 

そっと囁かれた言葉を理解する前に
湊は私の腰に手を当てて自分の方へと引き寄せた。

距離が縮まり心臓が速くなる中、湊の顔が近付いてくる。


もしかして、キス、される…?


ぎゅっと目を瞑ると、予想に反して
「 ゴミついてる 」、とだけ呟きすぐに離れた。

恋人ごっこのルールでキスやそれ以上は駄目なのに
何故か受け入れようとしていた自分が凄く恥ずかしくて
照れ隠しに咳払いをした。

fw
 …ネトフリ見る? 
あなた
 …え、見れるの? 
fw
 うん、スクリーンあるよ
もう繋いであるんよねぇ

何事も無かったかのようにリモコンを操作して
大きなスクリーンに映画が映された。

あなた
 ( だいぶ、調子狂う… ) 
fw
 ………… 

映画はアクションものだった。

初めて見たけど迫力があって、感動的な部分もあって
何で今まで見なかったんだろうと思うぐらい面白かった。

夢中で見ていたらいつの間にか終わっていて
私は急いでスマホの画面を見た。

あなた
 えっ、やばいよ湊!1時間半も経ってる! 
fw
 え?あー、ほんとだ 
fw
 面白かったね 
あなた
 面白かった…けど授業始まってる  
fw
 今日ぐらいいいやん? 
fw
 もうちょっとゆっくりして次の授業から行こ 
あなた
 ふふ…、んーー、そうだねぇ 
あなた
 たまにはいっかぁ… 

大きく伸びをしながら湊の方を見ると
何だか凄く嬉しそうな顔をしていた。

あなた
 どうしたの? 
fw
 んー?可愛いなって思って 
あなた
 いきなり何っ、 
fw
 いきなりやないよ? 
いっつも思ってる
fw
 いつもは我慢してるんだよー? 
あなた
 そ、そうなの? 
fw
 うん。だって可愛いなんて言ったら
対抗してくる奴が4人もいるでしょ?
あなた
 あー…、確かに  

湊は小さく溜め息をくと
少しだけこちらに体を寄せて「 それにさ 」と続けた。

fw
 可愛い、とか好きってさ
2人きりの時に言いたいんよね、俺
あなた
 え、ぁ…、そうなんだ 
fw
 2人きりの時に言うと"本気感"が増すやん 
fw
 あなたの下の名前の照れた顔もゆーっくり見れるし? 

私の顔を覗き込むように呟きながら
にこ、と優しく微笑んだ。

fw
 あー…、さすがに次の授業は出ないとね 
fw
 行こっか? 
あなた
 う、うん、そうだね 

どことなくほんわかした、甘い雰囲気のまま
私は次の授業を受けることになった。








   放課後。


前の授業が体育だったから汗の臭いが気になって
鞄の中を漁っているとサラとこころが話しかけてきた。

あなた
 どしたのー? 
hskw
 ねー、星川汗臭くない?
汗ふきシートとか忘れちゃった
ammy
 あまみやも忘れちゃったの 
あなた
 私も探してるんだけど見当たんなくて… 
購買で買ってこよっかな
fw
 あなたの下の名前、お待たせ〜 
あなた
 あ、湊……、ごめん、ちょっと待ってて 
fw
 どしたん?なんか用事? 
あなた
 あー、えっと…汗かいたから…… 
fw
 ん? 

湊が一歩近付くから私も一歩下がって。

「 何で逃げるん? 」なんて言いながらも
確実に距離を詰めてくる。

あなた
 あ、えっと…、さっき体育があって…… 
汗臭くないか、気になって、さ…
fw
 ……え、そんな理由? 
あなた
 え? 
fw
 逃げられたからなんかしちゃったかと思った 
あなた
 ご、ごめん…… 

「 謝らんでいいよ 」、そう言いまた一歩近付く湊から
私は反射的に一歩下がる。

fw
 ストップ 
fw
 俺さぁ…… 

私の手を掴み更にぐっと距離を詰めると
肩ぐらいまで顔を寄せてきた。

あなた
 湊っ…、 
fw
 …全然分からん 
fw
 シャンプーかなんかのいい匂いしかしない 
あなた
 ほんと…? 
fw
 うん。仮に汗かいてたとしてもさ 
fw
 体育だったんでしょ?
普通やん、人間なんだから

その言葉を聞いて
なんとなく肩の荷がおりた気がした。

湊は私の手を離すとにこり、と笑い軽く頭を撫でた。

fw
 俺なんか配信終わりとか汗やばいよ 
fw
 それでも今日はいっぱい動いたんやな〜て思 
うだけ

湊の優しさが分かる瞬間だった。

それを後ろで聞いていたサラとこころが
「 さすがふわっち〜 」と拍手をする。

fw
 なにがさすがか分からんけど  
hskw
 だって今の対応100点だったよ! 
fw
 いやいや、普通普通 

そう言い湊は私の鞄を持って手を差し出してきた。

fw
 ほら、今日はデートやん 
fw
 汗のこと気にしてテンション下げるのもった 
いない
fw
 今からめちゃくちゃ楽しむんだし 
あなた
 ふふ…、うん、そうだよね 

さっきまで気にしていたのが嘘みたいに
普通に湊の隣に並んで笑っていた。

そのまま手を取りサラとこころに手を振った。

hskw
 ねぇ、みゃみゃ〜? 
ammy
 んー? 
hskw
 ふわっちってああいう何気ない優しさずるく 
ない?
ammy
 うんうん、だからモテるんだよねぇ 

サラとこころがそんなことを言っているなんて
私と湊は全く知らなかった。










ショッピングモールに着いた私達は
何をするでもなくお喋りをしながら歩いていた。

fw
 ねぇ、今日凄い可愛い 
あなた
 えっ、いきなりだね  
fw
 お昼も言ったけどさ
いきなりじゃないからね
fw
 いつも可愛いって思ってる
でも今日はいつもより可愛い
あなた
 ふふ…、ありがと、嬉しい 
fw
 …昨日ロレに見せた顔と違う? 
あなた
 もー、なんでそんな気にするの 

湊は笑って、少しだけ視線を逸らした。

fw
 ……気になるやん 
fw
 好きな子なら、さ? 

さらっと出てきたその言葉は
嘘でも、いつもの冗談混じりな感じでもなかった。


真っ直ぐとぶつかってきた言葉に返せないでいると
湊は私の頭を撫でてにこり、と笑った。

「 行こう? 」、その言葉に小さく頷いた。

fw
 あ、ここ見る? 
あなた
 うん、見たい 

パステルカラーを基調としたその雑貨屋は
可愛い物がたくさんあって
あれもこれも、と目についた。

あなた
 あ、これ可愛い 
fw
 つけてみ? 

小さな蝶モチーフのヘアクリップ。

可愛い物は大好きだけど
正直私には似合わないんだよなぁ…

fw
 ほら、貸して 

湊は蝶のヘアクリップを手に取ると
「 じっとしてて 」と覗き込むように顔を近付けてきた。

髪をそっと耳にかけてクリップを留める。

あなた
 っ…
( 息止まりそ…… )
fw
 ………… 

指先が耳に触れてドキドキが伝わるかと思った。

fw
 ん。可愛い 

湊の方を見ながらありがと、と微笑むと
少しだけ驚いた表情を浮かべて黙ってしまった。

あなた
 湊…? 
fw
 いや…… 
fw
 これ他の4人に見せたくないなぁって 
あなた
 なんで? 
fw
 絶対嫉妬する 
fw
 葛葉は拗ねそう 
fw
 かなかなは笑いながらも怒ってそう 
fw
 ロレとか普通にキレそうだし 
fw
 ひばは"見たかった"ってうるさそう 

全部当てはまってそうでつい笑ってしまった。


…1番4人のこと気にしてなさそうだと思ってたけど。
もしかしたら誰よりも意識してるのかも。

fw
 ね、ゲーセンあるから行く? 
あなた
 うん、行く! 

ゲーセンに着くと湊は真っ先に
プリ機のある場所へと足を向けた。

fw
 プリクラ撮ろうや 
あなた
 うん、いいよ! 

プリ機の中に入り背景を選ぶ。
背景が変わる間待っていると
湊が私の後ろから抱きついてきた。

あなた
 えっ、ぇ、 
fw
 今日は恋人同士やん? 

そう言い私の肩に顎を乗せてくる。


待って、めちゃくちゃ近いって…!


いきなりの行動に恥ずかしくなった私は
シャッターが切られる前に手で顔を隠してしまった。

fw
 えー、なんで顔隠すの? 
あなた
 だ、だって恥ずかしくて…! 
fw
 照れてるってこと?俺が抱きついたから? 
あなた
 うん…、そう 
fw
 にゃはは、うれし 

言いながら次のシャッターが切られる時。

私の頭にちゅ、とキスをしてきた。

まさかの展開に思考が追いつかないでいると
「 照れた顔も可愛い 」なんて言ってきて。

あなた
 っ…… 
fw
 ちゅーは駄目やけどこれはありよね? 
あなた
 ぅ、ぅん、大丈夫、だと、思う… 
fw
 にゃはは、あなたの下の名前可愛すぎ 

この後落書きをしたけど

"照れてるあなたの下の名前可愛い"だとか
"俺がちゅーしたから照れた"とか
"💜ふわ(彼氏) 🩷あなたの下の名前(彼女)"なんて書いてて。

終始、湊の思うつぼだった。








景色が綺麗なんだよ、と連れてこられたのは
3ヶ月ほど前にできた大きな観覧車だった。


ゆっくりと上がっていく観覧車の中で
向かい合って座り合う。

いざ面と向かうと照れくさくなって
私はずっと小さくなっていく街並みを見つめていた。

fw
 ねぇ、俺さ 

喋り出す湊に顔を向けると
真っ直ぐとした瞳で私を見ていた。

あなた
 ん…? 
fw
 葛葉みたいに独占欲強くないし
かなかなみたいに器用じゃない
fw
 ロレみたいに真っ直ぐでもないし 
ひばみたいに素直じゃない
fw
 それでも、さ 

ふっと笑いながら私の手を握る。

暖かいその手から
ドキドキと速くなる脈が伝わってきた。

fw
 今日1番楽しかったって
ちょっとでも思ってほしい
あなた
 …うん 

観覧車が下に着くまで、手を繋ぎながら
夕焼けに染まる街並みを2人で眺めていた。
















観覧車を降りた後は
少しだけ遠回りをしながら家に帰った。

fw
 明日ってひばやんな? 
あなた
 うん、そうだね 
fw
 そっかぁ…
ひばには負ける気しないなぁ
あなた
 なんで? 
fw
 今日のあなたの下の名前
俺のことずっと見てくれてたし
あなた
 み、見てないよ! 
fw
 にゃはは、見てた 

湊は小さく笑うと私の顔を覗き込んだ。

fw
 ……選んでくれたらいいな 

一瞬真面目な表情を浮かべたかと思ったら
いつも通りの笑顔に戻っていた。

fw
 あーあ、もう着いちゃったね 
あなた
 そうだね… 
fw
 …ちゃんと会えるのは……
もし俺を選んでくれたら、日曜日、だね
fw
 またね 
あなた
 うん、今日はありがと 

私の髪を耳にかけながらにこり、と笑うと
「 あげる 」と一言呟き背を向けた。


触れられた髪には
雑貨屋で見ていたヘアクリップが。

「 湊!ありがとね 」、背を向け歩き出す湊に
声をかけると、こちらに振り向き小さく手を振った。


ヘアクリップを外し
少しの間それを眺めた後私は家に入った。




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