話を遡ること11年前
幼稚園に通っていた俺はそこそこ仲良い友達もいて充実した生活を送っていた。年中になって愛華が俺の家の近くに引っ越してきた。初めては何とも思っていなかった。でも────
そうして、俺と愛華は次第に仲良くなり1番の友達となった。バスは隣同士、常に一緒、幼稚園でも家でも遊んだ。そして俺はいつの間にか愛華の事を好きになっていた。
小学生になって愛華に「伸くんの好きな人誰?」と聞かれた。
そして俺は「愛華」と答えた。
でも、愛華からの反応はなかった。
そうして俺は愛華にフラれたと思った。
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月日は流れ、小4のある日、愛華と同じ班になった。それから愛華はおかしくなった。
よく泣いてる所を見かけるようになった。理由を聞いても頑なに言わない。
でも、今ならわかる。同じクラスの女子にいじめられていたからだ。その時俺は何で泣いてるのか、どうしたらいいのかわからなかった。
でも、愛華は俺といるときや親友といるときは笑顔だった。だから俺は勝手に安心していた。
その後も仲が良かったが小6になると喋らなくなった。今までもあった周りからの冷やかしが急に気になるようになったからだ。
そうして、疎遠になった────
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そのまま中学に上がったが関係は変わらず、そして愛華はモテ始めた。もとからモテていたが中学では今まで以上にモテて、告白も多くなった。
また、なぜか俺と愛華が幼馴染だと知った奴らに愛華の事を色々聞かれた。
俺は愛華がコクられたと聞くたびに焦った。
他のやつに愛華を取られたくなかった。
しかし、愛華は誰のものにもならなかった。
告白は全て断っていたそうだ。
俺は同じ部活で仲良くなった星に「早くコクれ!」と言われるようになった。
俺もコクろうとした。でも、ある日───
愛華が隣の席のやつと仲良さげに喋っているのを見てしまった。異様に近い距離、普通のクラスメイトとは違う仲の良さ。
「愛華はあいつに恋している」そう確信した。
そして、この恋を諦めようとした。
でも、無理だった。
諦めようとするたびに愛華が頭の中に出てきて、頭の中は愛華でいっぱいだった。
愛華はいつの間にか俺の頭の中に居座っていた。
そして、もうすぐで卒業だ。
愛華に告白するやつがこの1,2ヶ月で異様に増えた。その度に愛華は断ったいた。
俺は不思議だった。なぜ愛華はフり続けるのか。告白したやつらの中にはイケメンもいた。でも、愛華はフった。
どうしてフるのか、理由があるのか、知りたい。
そんなこと思っていたら、愛華が消えた。
俺のせいだ。俺のせいで高梨が愛華を……
高梨から話を聞いたとき、ものすごく怒りが込み上げてきた。そして、つい殴ろうとしてしまった。星が止めてくれたから俺は殴らずにすんだけど……
俺が怒ったとき高梨の顔は青ざめていた。それだけ俺は怒っていたのだろう。まやが代わりに殴ってくれたお陰で少し落ち着いた。
とりあえず今は愛華の救出が優先!
俺の片想いなんざどうだっていい。
愛華が無事でさえいてくれれば…………
でも、全てが終わって落ち着いたら愛華に言いたい
「好きだ」って────
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。