第10話

最終話
1,288
2025/08/25 04:00 更新
数週間が経った。


深澤と付き合って、佐久間の毎日は少しずつ変わっていた。


どんなに疲れていても、深澤の声を聞けば安心できる。


眠れない夜は、深澤が「電話しよ」って言ってくれて、他愛もない話をして眠りにつける。
佐久間
(なんで今まで気づかなかったんだろう)

深澤の隣にいる心地よさは、阿部といるときとは違う。


安心とか、ぬくもりとか、そういう言葉じゃ足りないほど、柔らかいものだった。




だけど


時折、不意に胸がちくりとする。


ふとした瞬間に、阿部と目黒が楽しそうにしているのを見ると、


ほんの少しだけ、


置いていかれたような気持ちになる。





ある日。


仕事終わりにふっかと飲みに行った帰り道。


夜風がひんやりしていて、気持ちよかった。
佐久間
あー、美味しかった!
深澤
だな
深澤
佐久間酒よ弱ぇくせにすぐ顔真っ赤にすんの面白い
佐久間
うるさいなぁ
深澤
可愛いって意味だよ

深澤がふっと笑って、当たり前みたいに手を繋いでくる。


それだけで胸がぎゅっとなった。
佐久間
...ふっか
深澤
ん?
佐久間
俺さ、ちゃんとふっかのこと好きだよ、嘘じゃない
深澤
わかってる
佐久間
でも……時々ね、胸が痛くなるんだ
深澤
...あべちゃんのこと?
佐久間
......うん

ふっかの足が一瞬止まる。


でもすぐに、握った手に力をこめてきた。
深澤
……それでいいよ
佐久間
え?
深澤
すぐ忘れろとか、俺のことだけ見ろとか、言わねぇよ
深澤
佐久間が苦しんでたの知ってるから
佐久間
ふっか...
深澤
その痛みごと、俺がもらう

佐久間の視界が滲んだ。


嬉しくて、切なくて、どうしようもなく泣きたくなった。
佐久間
俺...ほんとダメだな、ふっかこんなに優しいのに……グスッ
深澤
バカ、泣くなよ
佐久間
泣かせてんのお前だろ笑

立ち止まった佐久間を、深澤がそのまま抱き寄せた。


夜道で、車の音が遠くに響く中、ただ二人で寄り添う。





それから数日後。


楽屋で阿部と目黒が隣で話しているのを見て、佐久間の胸はまた少し痛んだ。


でも、その瞬間、頭をぽんと叩く手があった。
深澤
おーい、考え込むな
深澤
俺がいるだろ?

小さな声で、佐久間は
佐久間
うん

と答える。

まだ完全に痛みが消えたわけじゃない。


だけど、その痛みを抱えながらでも、幸せになれるんだと思えた。








隣にいてくれる深澤と一緒なら。













佐久間
ありがとう、ふっか










                     __𝐹𝑖𝑛.
















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