あの事件から数日後。あんなに警戒していたイギリスも今は僕がいないと不安で泣いてしまうくらい懐いてくれるようになった。また、たどたどしかった話し方も前程ではないが多少淀みなく話せるようになり、よく話しかけてくれるようになった。
「イギリス、今日はイギリスの家族が来てくれるよ」
僕に抱きつきすりすりと頬ずりしていたイギリスが動きを止め、見上げる。
「家族?」
僕強く抱きしめ、涙を浮かべるイギリス。てっきり喜んでくれると思っていた僕は慌てて涙を拭いキスをする。すっかり甘えん坊になったイギリスは僕からのキスに喜びもっとしてほしいと僕の首に腕を回した。
愛おしさに内心悶えつつもイギリスの記憶を取り戻すために必要な行為だから会ってもらわないといけない、と言うことを説明する。
「会うだけ?フランスとお別れしない?」
もじもじとそう尋ねるイギリス。僕とお別れしなきゃいけないと思って泣いちゃったんだ。なにそれ可愛すぎる。
「あはは、そんなこと心配して泣いちゃったの?」
細い腰に腕を回して抱き寄せ、耳元で囁く。
「大丈夫だよイギリス。君が泣いて嫌がったって僕は君を手放すつもりはないよ。」
僕の知らないところでまた傷ついてしまったらと思うと怖くて仕方がない。僕は白馬の王子様じゃないからイギリスがピンチになっても駆けつけることが出来るとは限らないし、何より君に抱いているこの感情はそんなに純粋なものじゃない。
「……僕もフランスと離れるつもりはないもん」
ぷくっと頬を膨らませるイギリス。前のイギリスと違い表情がころころと変わって忙しない。
「……ずっとそう思ってくれたらいいな」
きっと記憶が戻ったら僕の元から去るだろう。今のように添い寝をすることもキスすることも叶わない。
僕達は付き合っていないのだから。
僕はカナダ!今日は父さんのお見舞いに来たんだ。
兄さんは用事があってまた今度ってなったけれど、僕が兄さんの分、父さんと話せばいいよね!
「父さーん!フランスさーん!カナダだよー!」
フランスさんは父さんの友達で、今回父さんの面倒をみてくれているんだ。
父さんとも仲いい(?)し、面倒見もいいから大丈夫だと思っていたんだけど……
「フランスさん……その……そういう趣味なの?」
父さんが嬉しそうにフランスさんにつけられたリードを握っている。
「別に趣味じゃないけど、イギリスがこうしないと安心できないって……」
趣味じゃないという割にはなんだかやけににやついているような……まぁ父さんが楽しそうなら良いか
「父さん、僕はカナダ。よろしくね。」
手を差し出すとおずおずと握ってくれた。不安そうな顔も可愛いね!
父さんの手を離さずに握っていると右上から鋭い視線を感じた。冷や汗がタラタラと流れてくる。
「そろそろ離してあげて。イギリスも戸惑ってるからさ」
にっこりと笑うフランスさん。でも目は全く笑っていなかった。
父さんを預けたのは失敗だったかもしれない。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!