第85話

月光
240
2026/01/31 03:00 更新
コツコツ、と誰かの足音が廊下に響く。
私は音がする方に目線だけ向けると、五条先生が優雅に歩いているところだった。

…あの人の周りだけステージみたい。
ランウェイ的な?

だなんて、どうでもいいことを考えていると五条先生が私に向かって手を振る。
五条悟
やぁ、調子はどうだい?
あなた
今絶賛戦ってますね。
五条悟
誰と?
あなた
呪霊以外に誰がいるんですか。
五条悟
え、どこにいんの?
あなた
多分透明になってて見えないんですよね。でも実体はありそうですよ。蹴った時手応えありましたし。
五条悟
そりゃまた厄介な呪霊だね〜
心底楽しそうに笑いながら五条先生は私のそばまで歩いてきた。
そしてじっと私の目線と同じ方向を見た。
五条悟
あ〜…たしかに何かいるね。実態がない呪霊とか初めてだよ。
あなた
姿が見えないんで攻撃が効いてるのかとかもわからなくて。
五条悟
ん〜…まぁ、何回か殴ればいけるでしょ。
あなた
脳筋すぎません?
呆れながら五条先生をじと…と見つめる。
当の本人は上機嫌にニコニコと笑っている。

なんかテンション高くない?
呪霊
ゴジョオ…フ、タリィ…¿
たどたどしい発音で呪霊の声が響いた。
五条悟
てかさっきも僕の名前言ってたよねこいつ。なんで知ってんの?そんな有名なの僕?
あなた
有名っちゃあ有名じゃないですか?現代最強の呪術師なんですし。
五条悟
それ呪霊側にも通じるの??
あなた
さぁ…?
五条悟
それに2人って言ってない?僕1人だけしかいないのに。
あなた
さっき私に対して五条悟?て感じだったので多分私のことを五条先生だと思っててもう1人来たから五条悟が2人?てなってるんじゃないですか?
五条悟
何そのややこしい状況。ウケるね。
あなた
ウケなくていいです。
五条悟
なんであなたの下の名前のこと僕だと思ったんだろうね?似てるところ髪色くらいじゃない?
あなた
色だけで判断してるんじゃないですか?
五条悟
単純〜
五条悟
鎌が浮いてるように見えるのもウケるね。
あなた
今ですか?結構序盤から浮いてましたけど。
五条悟
あはは!知ってる〜
呪霊
ウゥゥゥ…!!
ビュン!と鎌が私と五条先生の間に振り下ろされる。
私と五条先生は同じタイミングで左右に飛ぶ。
五条悟
危な〜
あなた
無駄話してるからですよ。
五条悟
あなたの下の名前との会話は無駄じゃないよ。僕にとって大切な───
あなた
あーはいはい。
さらっと冗談を言う五条先生に適当に返事をしつつ、私は目の前でゆらゆら揺れている鎌を見つめる。

鎌があるところらへんに適当に呪力当て続けてたらいいのかな…

私は鎌を握っている奴がいるであろう位置に手のひらを突き出し、自分の手の中に呪力が込められていくイメージをする。

某サイヤ人のなんとか波みたいなイメージで…

どん!と呪力を放つとドコォ!となんともいい音が響く。
呪霊
ガァァァアアァッッ‼︎
あなた
念のためもう一発!
呪霊
ウガァァァアアァァッッッ‼︎‼︎
カラン、と鎌が空中から落ちる。
それと同時に何かが蒸発したような音が静かに響いた。
五条悟
…どうやら終わったみたいだね。
パチパチ、と軽く拍手をしながら五条先生は落ちた鎌を拾いにいく。
五条悟
あ〜やっぱり、これ呪具だね〜。
あはは、と軽く笑いながら手に持った鎌を器用にクルクル回す。

危ないな…

私は若干五条先生から距離を取りつつ口を開く。
あなた
なんで呪霊が呪具なんか使ってるんです?
五条悟
なんでだろうね?ていうか、あなたの下の名前に呪具について説明してなかったね。
思い出したかのように呟くと、五条先生は私に呪具について軽く説明してくれる。

簡単にまとめると呪具とは、呪いが宿った武具。
呪力がない真希さんが呪霊を祓うために使ったり、呪力を込めるために使ったりと色々あるらしい。
五条悟
この鎌、見たことないやつだな…
あなた
呪具ってどんなのがあるのか管理されてるんですか?
五条悟
大体ね。全部把握できてるわけじゃないから全く新しい呪具が出てくることなんてザラにあるよ。
五条悟
といっても、僕は初めて出会ったけどね。
五条先生は鎌を指先でなぞりながらふっと笑う。

その姿が月光に照らされてとても神秘的に見えた、なんて絶対に言わないけど。
綺麗だな。

私は今日何度目か分からないどうでもいいことを考えながら五条先生を見つめた。

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