二月の始まり。
雪の降る日曜日に、それは起こった。
プルルルル、プルルルル、となる電話の
着信音。
私、赤根葵はその音のする方へ、眠い目をこすりながら歩いて行った。
その受話器から流れる声が伝えたものは、にわかには信じられなかった。
「蒼井茜さんが事故に遭いました。」
ガタッと、私以外に誰もいないリビングに、受話器が落ちる音がうるさいほど響いた。
「どうにか一命は取り留めていますが、それでも"後二十分ほど"しか...」
気がついたら、私は病院に向かって走っていた。
茜くんが搬送されたのは、私の家から走っても十五分ほどかかる位置にある、この街の大きな病院。
(まだ好きって言えてないのに...っ!)
まだ、茜くんには逝ってほしくない。
だけど。
病院に着く頃には、もう茜くんは死んでしまっているのかもしれない。
だけど、きっと生きてくれている、そう言う希望を持って。
ただ、走った。
病院に着いたのは、家を出てから二十分以上も経ってからだった。
茜くんの病室は、◯◯◯号室。
◯◯◯号室
◯◯◯号室!!
扉は、ガラガラっと、大きな音を立てて開いた。
そこには、ベッドの上に寝ている、茜くんがいた。
彼は、苦しそうにこちらを向いた。
そんな彼を見て、私はもう、彼はいなくなってしまいそうなんだって、強く感じた。
だけど、それを止めたくて。
私は、ぎゅっと、茜くんの服の裾を握りしめた。
苦しそうな声、顔。
きっと、これが。
私は、そう悟った。
信じたくはなかった。
でも、きっと、これから茜くんが言うのが、
彼の「最期の言葉。」
そう言う私の声は、自分でもわかるほど涙ぐんでいた。
本当に、それが最後だった。
ぴたっと、彼の体からは血の巡りも、
何も感じられなくなった。
もう、その場にいるのも悲しくて。
私は逃げるように病室からでた。
茜くんの死から、何日か経った。
覚悟には、数日間かかった。
だけど、もう決めたんだ。
学校の屋上。
風が強く吹いていた、この日。
私は、そこから飛び降りた。
私は、ジリリリリ、ジリリリリという音で目が覚めた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。