それはー
1年生の時だった。
俺は何気なく廊下を歩いていると、目の前で歩いていた女子が何かを落としているのを見た。
落としたものを拾ってあげると
その日、俺の中で何かが咲いたような気がした。
あの笑顔をまた見てみたいと思った。
そう、思ってたのにー
4年生の秋ごろだろうか。
事件は起こった。
いつも通り教室から出ると、隣の教室から声が聞こえた。
それは、泣いているあなたの名字と
不快な笑みを浮かべている隣のクラスの女子だった。
そう言っている彼女が持っていたのは、3年前に俺が拾った、あの手紙だった。
ビリビリ
目の前で、手紙が破られているのを、俺は呆然と見ていた。
いや、「見ているしかできなかった」
どう助けに入ればいいのかが分からなかった。
きっと俺が来てもあいつらは適当にごまかすだろうし、無駄だ。
結局あの日、女子たちとあなたの名字がどうなったのかは知らない。
ただ彼女を守ることができなくて家でひたすらに泣いたのは覚えている。
そして今年の4月、クラス票を見て彼女の名前があることに気づいた。
やっと、同じクラスになれた。
喜ぶ俺の心とは裏腹に
またよからぬことを考えてるだろ。
でも、もう何もできなかった時の俺じゃない。
本当に腹が立つ。
いじめるあいつらに、何もできない俺に
あなたの名字は、何も悪くないだろ。
今度こそ、俺が守る。
泣いているところを。
きっとあの日、お前に笑顔を向けられて、俺は恋に落ちたんだ。
今なら分かる。
好きだから、もう絶対に泣かせたくない。
なんでそんなにかまうのかって?
お前の笑顔を、もう一度見たいから。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!