ここまで来れば大丈夫....か?
取り敢えず、急いでボンベを救う方法を考えないと
だが、あの魔獣は泥のような姿で
物理ダメージを与えても、すぐに回復する
炎で燃やしたり、氷で凍らせるのが早いが
そうするとボンベにも被害が出る
半永久で治せるとは言え、傷が出来る時は勿論痛いし
半永久は心の傷までは癒せない
マズイ……、
ボンベが近づいてきてる
まだボンベをどうやって止めるのか思いついていない
…もっと時間が欲しい
…
…
私は一か八かの賭けで物置に入った
頼む、バレないでくれ
物置の奥に積まれた段ボールの裏に
身を潜める
早くどこかに行ってくれ…
そう願っていると、音がしなくなった
…何処かに行った?
…いや、それにしては不自然なような……
安心と不安の心の隙間のタイミングで
肩に手を置かれ
呼吸音が鳴る
このままここに居るのは危ない
本能で察知して
私はボンベを振り払った
窓から身を乗り出して、
翼で空を飛んで行く
後ろからボンベも追いかけて来ているな
このまま森まで行こう
内心冷や汗をかきながら、それを隠すように
大きな態度をとってみせた
森まで加速をかけて
全力で飛んで行く
そして学校からある程度離れた辺りで
私は森の中に入りこんだ
…
勝手に学校から抜け出した事を
後から怒られるだろうな…
ボンベは強く拳を握った
…
魔獣に侵されているとはいえ
きっと…この言葉はボンベの本心に掠っているだろう
普段は気に留めて居ない程度の心のモヤを
気付きもしない胸の歪を
魔獣はこうやって形にする事がある
収穫祭の際、
暴走していた私は死を考えた
そしてナイフを自身に突き付けようとした
…
それにいち早く気付き、
尻尾で私の手を掴んで止めたのは
他でも無いボンベだ
私が普段と同じように構えると
ボンベは一瞬迷った後に、爆弾を作った
魔獣がボンベに絡みつき、
後ろから抱きしめるような形になる
ボンベが強く踏み込んで、
地面を蹴り上げ、爆弾でスピードをあげながら
迫ってくる
速い
ボンベが手を振ると同時に爆弾が飛んでくる
迫り来る爆弾をナイフで斬ると
大きな爆発音と共に、火薬が飛び散る
爆風が頬を刺激する
髪が吹き上がり、目の前を己の髪が遮ぎる
ナイフを空振りさせ、
空を斬ると渇いた音が鳴る
身体に着いた砂埃を、パッパッと手ではらう
そして今度は私からナイフを突き付ける
ボンベはナイフを避け、
手首を右手で掴み、二の腕を左手で叩いて攻撃をいなす
手を掴まれたら足で腹を蹴りつける
手が緩んだ隙に身体を捻り、そのまま
左脚を軸に右で回し蹴りを喰らわせる
地面を蹴られた勢いで滑るが
倒れそうになるところで、ボンベは足に力を入れて
踏みとどまった
ボンベの口角が怪しく上がった
あれは寒気と高揚感に身体が震えている顔だ
…最高に良い表情だ
殴ったり、蹴ったりすると泥が飛び散り
全体の量が減るが
本当に一瞬の隙で元に戻るな
…
やはり、魔術を使わないと止められない、か…
…待てよ、
…あるじゃ無いか
私のとっておきの魔術が
…
既存の物でも、誰かの複製でも無い
私の私だけの魔術
ボンベはにやりと口角を上げ、
私の横腹を鞭のようにしなる脚ではらう
思い一撃だったが、私はボンベの足を鷲掴み
大きな動きで地面に向かって投げた
ボンベの呼吸が乱れ、一瞬だけ止まる
額に滲む汗と頬をつたう冷や汗
はやる心臓を抑えるように
ボンベは地を蹴り、私と距離を取った
…
本体の魔力と体力が落ちているせいか
魔獣も弱っているのが分かる
拳を握り締め、
ボンベの方へと走って距離を詰める
空気が目も肌も耳も刺激する
ボンベは体勢を整え、構えたが不安定なのが目に見える
ボンベを取り囲むような泥目掛けて
私は大きく飛び上がり、
重力に従うように力を抜く
拳を紫の魔力が包み、
左目が燃える魔力の熱に包まれる
轟音が森を包み、
爆風で木々が揺れる
拳はボンベの右頬を殴り、ボンベは宙を舞った
ボンベの身体が地面に落ちる前に受け止める
ボンベを抱えたまま
小さくなり、静かに燃える泥を小瓶に詰めた
…
一応、ボンベの頬に回復をかけておこう
私はボンベを抱えたまま、
学校に帰り、保健室に連れて行った
保健室にはタイミング良くバラム先生と
ムルムル先生がいた
私がそれだけ言うと、
バラム先生とムルムル先生は私からボンベを受け取り
バイダルチェックを始めた
それだけ言って小瓶を取り出すと
バラム先生は勢いよく受け取った
…
凄い勢いだったな、本当に
確かに戦法を思い付くまでは苦戦したが
攻撃したら一発だったぞ
私がそう言うと、
バラム先生とムルムル先生は固まった
アブノーマルクラス御一行が
ウォルターパークに居た時、私もそこに居た
無料チケットを貰えたから足を運んだだけだったが
あまりの眩しさと音のデカさに帰ろうと思った時
不自然な魔力を感じた
だから、私は様子を見る為にウォルターパークに残り
入間たちを見ていた
魔獣の鎮圧を行うアブノーマルクラスを横目に見ながら
一般市民や子どもの誘導も行っていたら
大きな魔力を3つ感じた
カルエゴ先生、バラム先生、そしてオペラさんの
三人が放った魔術は魔導書で見た事が無い
高火力の必殺技
これだ…!私はそう思った
カルエゴ先生とムルムル先生は
無言で顔を見合わせた
ボンベを止める為に使用した魔術、慈愛の一撃は
特定のものにだけ攻撃を当て、
それ以外には一切干渉しないという魔術だ
一部の敵にだけ照準を定め、狙う為
目の辺りに魔力が集中する
…
魔力はエネルギーでもあるから、火傷跡が残るのは
結構ありがちなんだが
回復をかけても中々治らないのは初めてだ
そこまで話していると、校内のチャイムが鳴った
時計を見ると、下校時間になっていた
…
もうそんな時間だったのか
保健室で礼をして出て行く
一応、魔獣は取り除いたが
…
どうなるだろうな
明日にはボンベが目を覚ますと良いんだが









![[参加型?]空の上で最後の遺言を、](https://novel-img-gcs.prepics-cdn.com/prcmnovel-tokyo-prod-converted-images/p/fLidrLhRSUUik4ZkTr7M83BhU0V2/cover/01KCTXMWS5RZ2WT40YN9XJ0C3Y_resized_240x340.jpg)


編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!