第92話

雪の足跡
158
2026/02/10 15:00 更新
hs × mh















雪が降った次の日、ミョンホに散歩に行こうと誘われたホシ。

外に出るとダウンを着ているのに、思わず「さむっ」と声が出るほどの冷え込みだった。

辺り一面、銀世界。
朝が早かったこともあって、近くの公園にはまだ誰の足跡もない。

「すごいな……」

ホシは寒さに耐えきれず、ポケットに両手を突っ込んで歩き出す。
その数メートル後ろを、ミョンホが静かについてきていた。

しばらく歩いて、ふと後ろを振り返る。

「……」

ミョンホは、ホシの足跡を一つも外さないように、丁寧に辿りながら歩いていた。
一歩一歩、真剣な顔で下を見つめて同じ場所に足を置く。


(なにそれ、かわいすぎだろ)


ホシは思わず口元を緩める。

普段は自分がよくふざけるせいで、周りからはミョンホの方が年上っぽいなんて言われがちだけど、こういうところはどう見ても弟だ。

「ミョンホっ」

名前を呼ぶとミョンホはぴたりと足を止めて顔を上げた。
冷たい空気のせいで、鼻が少し赤くなっている。

「なに?」

その顔があまりにも無防備で、ホシは思わず吹き出してしまった。

「なんで笑うの」

「いや……足跡、ちゃんと踏んでるのがさㅎ」

「だって…きれいだから」

当たり前みたいに言うミョンホに、ホシはまた笑う。


「じゃあさ、寒いし…」


ホシは歩き出しながら振り返って言った。


「あとで、あったかい飲み物買ってあげる」


その瞬間、ミョンホの表情がぱっと明るくなる。

「ほんと?」

「ほんとㅎ」

すると、ミョンホはさっきより少しだけ歩くスピードを上げた。
それでもちゃんと、ホシの足跡の上を踏みながら。


(……そこもかわいいんだっての)


ホシはポケットの中で手を握りしめながら
誰にも聞こえないように小さく息を吐いた。

白い景色の中で、2人分の足跡が1つになって静かに続いていた。

プリ小説オーディオドラマ