第12話

#011 嫌な予感と夜空
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2026/07/27 22:43 更新

  夜、ヴィラン連合アジト。

  いつもの薄暗い空間とは違い、
  今夜は妙な熱気に包まれていた。

  鉄製の大きなテーブル。その周りには、
  ヴィラン連合の面々が集まっている。

  死柄木弔、黒霧、荼毘、トガヒミコ、トゥワイス、
  スピナー、そして、静かに壁へ寄りかかる朱鷺。

  さらに今日は、"外部協力者"も姿を見せていた。
  まぁ僕らもそれと同じみたいなところでもあるけど。

マスキュラー
マスキュラー
ガハハハハ!!
マスキュラー
マスキュラー
ガキ共をぶっ潰していいんだろォ?!
マスキュラー
マスキュラー
楽しみだァ!!

  大きな笑い声がアジト中に響く。
  筋骨隆々の巨体を持つ、マスキュラー。

  彼ら僕と相性悪そうだからこれまで顔合わせする時でも
  一切話さず仮面、弔にもらった耳飾りをつけて

  ただ壁に寄りかかっているだけ。

ムーンフィッシュ
ムーンフィッシュ
………

  その隣では、白い髪をぼさぼさにした青年が、
  床へしゃがみ込みながらぶつぶつと呟いている。

  ムーンフィッシュ。

ムーンフィッシュ
ムーンフィッシュ
……肉……肉……

  口元から覗く鋭い歯。誰とも目を合わせない。
  そして…
 
マスタード
マスタード
ふん。

  一人だけ腕を組み、壁へ寄りかかっている男。
  マスタード。

  ガスマスク越しに部屋を見回している。

マスタード
マスタード
ガキ相手とは退屈だ。
荼毘 .
荼毘 .
油断すると足元を掬われるぞ。

  荼毘が煙草へ火をつけた。マスタードは鼻で笑う。

マスタード
マスタード
俺が?…ありえないな。
荼毘 .
荼毘 .
そういう油断が一番あぶねぇ。

  荼毘は短く返す。その二人のやり取りを
  聞きながら、僕はくすりと笑った。

朱鷺 .
朱鷺 .
面白い人たちだね。

  マスキュラーが朱鷺を見る。

マスキュラー
マスキュラー
お前、噂の仮面のヴィランか!!
マスキュラー
マスキュラー
その仮面の裏の素顔、見させてくれよ
朱鷺 .
朱鷺 .
あはは、それはご勘弁かな。
マスキュラー
マスキュラー
なら戦おうぜ!!!
マスキュラー
マスキュラー
まぁちゃんと戦えなさそうだけどな!!

  僕はアイスピックを一本だけ指で回した。

朱鷺 .
朱鷺 .
…まぁ、多少はね

  その穏やかな返事に、マスキュラーは大笑いする。

  その時。コン、コン。
  死柄木がテーブルを指先で叩いた。

  一瞬で部屋が静かになる。

死柄木弔 .
死柄木弔 .
……始める。

  誰も口を挟まない。
  黒霧が巨大な地図をテーブルへ広げた。

黒霧 .
黒霧 .
こちらが雄英高校、林間合宿施設周辺です。

  森全体の地図。高台、川、宿舎。訓練エリアなど…
  細かく印が付けられている。

  死柄木が地図を見下ろす。

死柄木弔 .
死柄木弔 .
目的は一つ。
死柄木弔 .
死柄木弔 .
爆豪勝己を連れ帰ることだ。

  短い。しかし、その一言だけで十分だった。

死柄木弔 .
死柄木弔 .
ヒーローを殺すことじゃない。
死柄木弔 .
死柄木弔 .
生徒を皆殺しにすることでもない。
死柄木弔 .
死柄木弔 .
目的を履き違えるな。

  マスキュラーが笑う。

マスキュラー
マスキュラー
ガハハハ!!!
マスキュラー
マスキュラー
でも殺していいんだろ?

  死柄木は冷たい目を向けた。

死柄木弔 .
死柄木弔 .
必要なら…な。
死柄木弔 .
死柄木弔 .
必要以上に暴れるな。
マスキュラー
マスキュラー
……ッチ、わかったよ。

  その返事がどこまで本気かは誰にも分からない。
  死柄木は視線をマスタードへ移した。

  そこからは、弔が、一人ひとりにやって
  もらいたいことを指示していった。

  そうして、最後の僕の番。
  死柄木は朱鷺を見る、黄金の瞳が死柄木を見る。

死柄木弔 .
死柄木弔 .
仮面。
朱鷺 .
朱鷺 .
うん。

  いつもとは違う呼び方。

  なんだか嫌な予感がする奴らがいる場で、
  まだ舞台の幕が上がっていない事を

  暴かれて狂わされるのは、
  たしかにスパイスとしては丁度いい。

  けど…まだそれは始まっちゃいない。
  始まるべきではない。

  だから弔には仮面と呼ぶようにお願いした。
  彼も僕の事情を理解しているし、

  僕らの良いリーダー。

死柄木弔 .
死柄木弔 .
お前は、個性を使え。
死柄木弔 .
死柄木弔 .
教師、生徒、プロヒーロー…
死柄木弔 .
死柄木弔 .
全員の注意を散らせ。
死柄木弔 .
死柄木弔 .
爆豪を奪うための舞台を、お前が整える。

  僕は静かに耳飾りを触った。

朱鷺 .
朱鷺 .
あはは、つまり…今回の主演は爆豪くん。
朱鷺 .
朱鷺 .
僕は舞台監督ってところかな。

 
  死柄木の口元がわずかに歪む。

死柄木弔 .
死柄木弔 .
ああ、最高の舞台を作れ。
朱鷺 .
朱鷺 .
了解。

  僕はゆっくりとうなずいた。

  その返事には、俳優として新しい役を
  受ける時のような高揚感が滲んでいた。

  部屋の空気が再び静まり返る。
  そうして…死柄木は全員を見渡す。

死柄木弔 .
死柄木弔 .
…明日、雄英を壊す。

  その一言に、誰一人として異論を唱えなかった。

  僕は静かに窓の外を見つめる。
  そうして、夜空に浮かぶ月を見上げ、小さく微笑む。

朱鷺 .
朱鷺 .
さて、どんな演出になるのかな。

  その笑みを見た荼毘だけが、
  煙草の煙を吐きながら小さく呟く。

荼毘 .
荼毘 .
……派手になりそうだな。

  幼なじみのその笑顔が、本気で「面白い」と
  思っている時のものだと、誰よりも知っていた。


  → #012

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