夜、ヴィラン連合アジト。
いつもの薄暗い空間とは違い、
今夜は妙な熱気に包まれていた。
鉄製の大きなテーブル。その周りには、
ヴィラン連合の面々が集まっている。
死柄木弔、黒霧、荼毘、トガヒミコ、トゥワイス、
スピナー、そして、静かに壁へ寄りかかる朱鷺。
さらに今日は、"外部協力者"も姿を見せていた。
まぁ僕らもそれと同じみたいなところでもあるけど。
大きな笑い声がアジト中に響く。
筋骨隆々の巨体を持つ、マスキュラー。
彼ら僕と相性悪そうだからこれまで顔合わせする時でも
一切話さず仮面、弔にもらった耳飾りをつけて
ただ壁に寄りかかっているだけ。
その隣では、白い髪をぼさぼさにした青年が、
床へしゃがみ込みながらぶつぶつと呟いている。
ムーンフィッシュ。
口元から覗く鋭い歯。誰とも目を合わせない。
そして…
一人だけ腕を組み、壁へ寄りかかっている男。
マスタード。
ガスマスク越しに部屋を見回している。
荼毘が煙草へ火をつけた。マスタードは鼻で笑う。
荼毘は短く返す。その二人のやり取りを
聞きながら、僕はくすりと笑った。
マスキュラーが朱鷺を見る。
僕はアイスピックを一本だけ指で回した。
その穏やかな返事に、マスキュラーは大笑いする。
その時。コン、コン。
死柄木がテーブルを指先で叩いた。
一瞬で部屋が静かになる。
誰も口を挟まない。
黒霧が巨大な地図をテーブルへ広げた。
森全体の地図。高台、川、宿舎。訓練エリアなど…
細かく印が付けられている。
死柄木が地図を見下ろす。
短い。しかし、その一言だけで十分だった。
マスキュラーが笑う。
死柄木は冷たい目を向けた。
その返事がどこまで本気かは誰にも分からない。
死柄木は視線をマスタードへ移した。
そこからは、弔が、一人ひとりにやって
もらいたいことを指示していった。
そうして、最後の僕の番。
死柄木は朱鷺を見る、黄金の瞳が死柄木を見る。
いつもとは違う呼び方。
なんだか嫌な予感がする奴らがいる場で、
まだ舞台の幕が上がっていない事を
暴かれて狂わされるのは、
たしかにスパイスとしては丁度いい。
けど…まだそれは始まっちゃいない。
始まるべきではない。
だから弔には仮面と呼ぶようにお願いした。
彼も僕の事情を理解しているし、
僕らの良いリーダー。
僕は静かに耳飾りを触った。
死柄木の口元がわずかに歪む。
僕はゆっくりとうなずいた。
その返事には、俳優として新しい役を
受ける時のような高揚感が滲んでいた。
部屋の空気が再び静まり返る。
そうして…死柄木は全員を見渡す。
その一言に、誰一人として異論を唱えなかった。
僕は静かに窓の外を見つめる。
そうして、夜空に浮かぶ月を見上げ、小さく微笑む。
その笑みを見た荼毘だけが、
煙草の煙を吐きながら小さく呟く。
幼なじみのその笑顔が、本気で「面白い」と
思っている時のものだと、誰よりも知っていた。
→ #012


















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!