諸用により 、
あなたの名前(漢字)は帝に呼び出されていた 。
顔を見られる訳にもいかず小さな小路の方を通ると 、
やはり下女達が忙しなく往来していた 。
しかし顔を覆っていてもそれが高貴な身の者と分かり 、
下女たちは慌てて荷物をおいて頭を下げるのだった 。
楽にしていて欲しいのだけど 、 とあなたの名前(漢字)は思う 。
帝が待つ御殿に立ち入ると 、
あなたの名前(漢字)はようやく覆面を外した 。
通された部屋に入ると 、
帝はまさに従者に碁盤を運ばせているところであった 。
二人がけの小さな机の上に碁盤が用意され 、
あなたの名前(漢字)は従者に促されながら席に着く 。
帝はどこか親しみを込めた笑みを浮かべ 、
あなたの名前(漢字)を見つめている 。
壬氏が訪ねる際は 、 一応帝にも断っているという 。
しかし帝が “ 御通り ” という語を用いるのは 、
決して皮肉からくるものなどではなかった 。
帝のからかいはまだ尽きぬようで 、
あなたの名前(漢字)は苦笑した 。
帝は眉を顰め 、 視線を碁盤へと落す 。
ふた月に一度から二度ほど 、
あなたの名前(漢字)の元には帝の通いがあった 。
誰の元へとまでは行かずとも 、
当然後宮中にはその噂が蔓延している 。
しかし実の所 、 あなたの名前(漢字)は帝の暇つぶしに過ぎない 。
当然手つきもなければ 、 寝殿に連れることもない 。
噂ばかりが立つだけで 、 昇級の兆しもない 。
帝の本意は 、 あなたの名前(漢字)にも分かりかねていた 。
碁石を打ちながら 、 帝は溜息混じりに呟いた 。
あなたの名前(漢字)はたしかに碁が得意であった 。
だがそれを知る相手も 、 披露する相手も 、
この目の前のやんごとなき方のみである 。
騒ぎというのが園遊会の事であるのは知っている 。
上級妃に毒が盛られたという話は 、
女官達の噂において行きがかりでも何度も耳にした 。
その痛ましい表情に 、あなたの名前(漢字)は小さく首を振った 。
静かに呼ばれ 、 あなたの名前(漢字)もまた顔を上げる 。
帝はただ 、 自身の姪を真っ直ぐに見つめていた 。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!