2022年の冬。私が怪盗になると決意してから1年経った頃。
まだAegisさんにパルクールやマジックを叩き込まれていたり、情報屋さんや武器の管理屋さんなど、Aegisさんの協力者であった各方面の方々と連絡を取り始めたり、と本格的に怪盗になる前の修行と準備をしていた時期の話だ。
その日は珍しく雪が降り、なんとなくだが地域全体が浮足立っているような日だった。
一人で夕食を買い出しに行き、おおよそ1週間分の食事を詰め込んだ買い物袋を両手に下げて私は歩いていた。
ふと、なんとなく近道がしたくなって、人気の少ない細い道路に足を踏み入れたんだ。
そこ見かけたのだ。血塗れの少女を。
今にも死にそうな、生気のない少女だった。へたり、と床に座り込んでいる。
白くて長い髪はぼさぼさに絡まり、ところどころ血を浴びていて固まっている。深い赤色の目は虚ろで、その目には何の光も映っていなかった。
そして何より特徴的なのが服装と所持物だった。まるで、異世界ファンタジー漫画で見かける騎士のような服装をしている。黒と赤色の騎士服の上に、軽い鎧を着ていた。そして手には剣。剣も手も鎧も血塗れで、思わず顔をしかめてしまうような強い血の匂いがした。
コスプレを疑いたくなってしまうような格好だが、こんなところであんな表情をして座り込んでいるということは、コスプレなどではないだろう。
目を疑うような光景だった。
「えっと……君、大丈夫……?」
無視する訳にもいかなくて思わず声をかける。少女はしばらくぼーっとしたままだったが、突然徐ろに口を開いた。
「……異界への戻り方を知らないか」
「い、異界?」
予想外の答えに思わず声が裏返った。異界。異界? 確かに異世界の人みたいな見た目ではあったけれど、まさか「異界への戻り方を知らないか」なんて言ってくるとは全く思っていなかった。異界の戻り方なんて知るはずもない。
「ごめんね、私には分からないな」
なるべく相手を刺激しないよう、できる限り優しい声を作って答える。少女は、元々無表情だった顔を沈んだ顔へと変化させ、短く「……そうか」と答えた。
元々気力の無さそうな彼女が更に死に近づいてしまっていそうで非常に怖い。
何か声をかけなければ、と思い口を開いたその時。
ぐう、と、少女のお腹から音がした。
お腹が空いているのかもしれない。私は両手にある買い物袋を持ち上げて、彼女に提案した。
「えっと、うちでご飯でも食べてく?」
これが私と、異界からやってきた聖騎士「ソホ」の出会いだった。
ソホが現世に馴染むまで、私が怪盗として独り立ちするまでの5ヶ月間、一緒に暮らすことになるのだが、それはまた別の話。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。