松川𝓈𝒾𝒹𝑒.°
花巻「泣いてたな」
松川「……だな」
及川と岩泉と別れてから、帰路についた俺達は烏野の体育祭を思い返していた。
借り物競争、烏野の美人マネとリベロが歓声を浴びる中で、メガネミドルブロッカーとあなたが2人、グラウンドから出ていくのが見えた。
あなたの頬には、涙が伝っていて。
嫌でも分かってしまった。
花巻「ははっ、俺……好きかもしれねぇわ」
ポケットに手を突っ込んで、笑う。
“かも”……ね。
俺は、“好き”だよ。
もう、歯止めかける必要無くなったな……。
今度、晩飯作ってもらおう。
友達の妹とか、関係ない。
花巻「狙おうかな~」
松川「……そうだな」
花巻「え」
あー……あの時、既成事実でも作ってれば良かったか。
まぁ、いいや。
時間はたっぷりあるし……ね。
渡瀬𝓈𝒾𝒹𝑒.°
体育祭が終わり、ファンクラブ幹部でコンビニに集まった。
No.eight「麗しきあなた様が……泣いておられた……」
そう、借り物競争直後のあの事件についてだ。
No.two「情報を集めたけど……多分あの背の低い2年生……西谷という男が原因ですね」
渡瀬「あなた様の想い人、か。しかし失恋なさった今、下手に我々が動くことはできない。あなた様の幸せを1番に考えるならば_____」
?「(あなた様……?あれ、烏野の制服だよな。失恋……?)」
??「おーい国見、行くぞ」
国見「……うん」
??「どうかした?」
国見「別に……攻めていこうかなって思っただけ」
??「(?)」
真綾𝓈𝒾𝒹𝑒.°
1-4の打ち上げは、カラオケで盛大にすることになった。
ジュースをつぎに廊下に出て、3人で話す。
真綾「綾乃~、大丈夫だってば」
綾乃「うん……まぁ私が落ち込んだところでなにも変わらないんだけ、ど」
確かにあなたのことは心配……。
でも、月島くんがついてるしなぁ。
綾乃「月島くんと2人……大丈夫かなぁ」
真綾「失恋には新しい恋だよ!」
さくら「でも私、あなたには影山くんがいいと思ったんだけど……」
真綾「放っといてもあそこは一緒にいるでしょ~」
?「……ね、君ら烏野だよね?」
とりあえず今は月島くんに任せよう……。
ジュースを持って部屋に帰ろうとすると、よく分からない人に話しかけられた。
綾乃ともさくらとも、知り合いじゃなさそう。
綾乃「はぁ……そうですけど」
?「1年?」
さくら「(チャラい……でもそれでいてイケメン!)はい!」
?「さっきの話……あなたって、岩泉あなたのこと?」
……え?
どうしてあなたのこと……。
私たちの動揺に確信したのか、その人は「ふぅ~ん」と意味深に笑った。
??「お~い。はよ戻れ!」
呼ばれたその人は、「おー」と手を振って私たちに背を向ける。
?「君らあなたの友達なんだよね?」
真綾「まぁ……」
そして振り替えって、見るもの誰もを虜にしそうな不適な笑みを浮かべた。
二口「堅治が、「本気でいくから覚悟しといて」って言ってたって、伝えといてよ」
五色𝓈𝒾𝒹𝑒.°
岩泉あなたさんに一目惚れしたと伝えてから、1週間以上が経過した。
あれから、連絡はとっていない。
俺の誕生日に、「お誕生日おめでとう。こないだはごめんね」と来ていたけどまだ返せていない。
何て返せばいいのかわからなくて。
だって、あの子は悪くないから……謝られても、俺が悪いだけだから……。
だけどやっぱり、もう一度会って話したくて、俺はメッセージを打った。
五色「え!?」
暫くしてから、思ってもなかった通知に思わず声を出してしまった。
……あれ、なんか予想外の展開に。
というか。
五色「好きな人いるから無理って言ってたよな……?え、失恋した、ってこと?」
ぶつぶつ呟いて、よく分からなかったので明日聞こうとスマホを閉じた。
白布𝓈𝒾𝒹𝑒.°
五色「え!?」
ん?
寮の共同スペースでソファーに正座してスマホをつついている次期エース。
すぐ後ろにいる俺に気がつかず、ぶつぶつ言っている。
五色「好きな人いるから無理って言ってたよな……。え、失恋した、ってこと?」
失恋……?
悪気ありでスマホを覗くと、どうやら連絡相手は“あいつ”。
好きな奴いたのか……。
ん、それで失恋?
あ、そういえば、監督が明日は1年居残りって言ってたな……。
ふーん……5時に公園、ね。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。