第484話

お知り合い?
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2020/11/12 12:00
雲雀田「驚いたな……侑とも知り合いなのか?」


あなた「あ……えっと、前のセミナーの時にお世話になって……」


侑「っえ、え???」


影山「????????」






こんがらがる中、とりあえず自己紹介を促された。






あなた「えと、岩泉あなた……宮城県立烏野高校1年ですっ」



雲雀田「彼女はアナリスト志望で、うちのチームのアナリストの講義を聞きに来たんだが所用でね。今日から3日間練習を見ることになってる」



あなた「よろしくお願いします」





頭を下げると、低い声で「しゃぁす」と返事。



ただ、微妙な空気が漂っている。






雲雀田「基本、我々と一緒に練習を見る程度だから、練習は今まで通り行うように。以上っ」



「「「ぁす!」」」


「よし、それじゃあ練習再開!」



コーチらしき人の声かけでコートに戻っていく選手たち。


数人が、こちらをチラチラ見ながら声をひそめて話しているのが耳に入った。





"アナリスト志望"って……あの子何者なんだ?
誰かの親戚とかじゃね?どうせコネだろ
宮侑と知り合いっぽいし、なぁんかやな感じするな
え、でも普通に可愛くね?ウチマネージャーいねぇからさぁ
顔は関係ねぇだろっ






うぅん……やっぱり、よくは思われないよね。



呼ばれてきたわけでもないし。






影山「あなたっ」


あなた「あ、カゲくん。昨日ぶりだね」


影山「なんで……、」




さっき雲雀田さんが説明してくれたの、多分理解できてなかったんだろうなぁ……なんて考えつつ、「それは後で話すね」と背中を押した。




あなた「ほらっ、とりあえず練習集中して。"ちゃんと見てるから"」


影山「!……おぅ」






私の言葉に、しっかりと頷いたカゲくんは小走りでコートに戻っていった。



入れ違いに、侑がボールを拾い上げるついでに耳打ちをしてきた。





侑「混乱止まらんわ。後で時間とりぃや」






"拒否権なんてない"とでも言いたげな雰囲気に、小さく頷いて返した。




「ナイスキー!」


「ネット超えるくらいなら、Aパス意識し過ぎなくていいよ」


「はい」


「セッターは構える位置、もうちょいネットから離れていい」


影山「はい!」




キュッ……キュッ、



「ナイスキー!!」





大好きな音が、質良く耳に入ってくる。



カゲくんの調子も良さそうだし、何よりこのメンバー。



相当な刺激になってるはず……。



とりあえず、私は……っと。






佐久早𝓈𝒾𝒹𝑒.°




……なんか、嫌だ。





古森「なになにどーした?しかめっ面して」


佐久早「……あれが無性に嫌だ。見られたくない」


古森「??……あぁ、あの子?」




確か、影山の子守係だった奴……。


ただの子守じゃなかったのは分かったけど、あの"目"にプレーを見られるのは心底嫌だ。





その容姿からは想像できない、獲物を狙う獰猛な動物のような目。







佐久早「……」






あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°



「前々!」


「ナイス!!」




侑が上げたボールを、セッターがレフトに綺麗に上げる。



青いTシャツの背中を丸めた、ツンツン頭の男の子は、そのボールを目で追ってから流れるような助走に入った。




キュッキュッ……_________




___________ドンッッ!!!





あなた「____________っ、!」




綺麗に、高く、高く、



飛んだ。





バシュッ





「お見事っ。エンドライン!」





隣で拍手を始めたコーチの音で、我に帰った。



日向よりは身長高そうだけど……それでもものすごいバネだ。



雑誌でも見たことのない選手。




あなた「___________、」


雲雀田「星海光来」


あなた「、」




雲雀田さんが腕を組んで歩いてきて、彼の方を見た。




雲雀田「気になるのか?」


あなた「「気になる」…………。そう、ですね。。」






雲雀田𝓈𝒾𝒹𝑒.°



……驚いたな。



彼のジャンプ力に驚いた____という訳ではなさそうな彼女の表情が、影山と重なった。




待ちに待った新しいゲームを買い与えられたかのように期待と高揚を隠しきれていない顔。




まったく……末恐ろしいね。

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