台所からガサガサと音を鳴らし、何かを手にして、
ソファに座る俺のもとに戻ってきた髙地。
いつも通りの笑顔で、
俺にパックのりんごジュースを差し出してきた。
かわいい、だってさ。
嬉しいけど、やっぱり俺はまだまだなんだな、って。
髙地の家にお邪魔したときは、
大抵このジュースをいただいていた。
きっと相当気に入っていたんだろう。
髙地からしたらそう遠い記憶でもないと思うけど、
俺にとっては懐かしい。
そう思い出に浸ったところで、会話は途切れた。
お互い、どんな言葉を選ぶのが最適か迷っている。
どうやって、どんな言葉で、
この俺達のこれからに関わる話をするのか。
先に話を再開させたのは、優吾の方だった。
なんだか不思議な空気になる。
髙地のお家、何度も来ているのに、
初めての場所みたいで。
詰まる息を整えていると、
髙地が発した言葉に再度息を乱された。
だいすき
その言葉が、頭の中で何度も響く。
そっか。
やめてよ
そんな言葉、別のときに聞きたかったよ?
だよね。
わかってたよ。
だから別に傷つく必要はない。
だって、
人生で初めての感情を抱いた人が、
幸せになろうとしてるんだから
なのに、
やめてよ、謝らないで、
髙地には好きな人と好きに生きてほしいのに
こんな汚いエゴを見せてごめんね。
だって俺、髙地が死ぬほど、
ほんとに死んじゃうくらい好きだから。
髙地がどこに行こうとついていくから。
だから、
だからこそ、
できるなら俺が幸せにしたかった。
急に話題が転換された。
いや本人は真面目に申し訳なく思ってるんだろう。
だってすごく悲しそうな顔をしてる。
ごめんだけれど、かわいい。
そりゃ食べてくに決まってる。
あ、けど、そんなことしたら、
あなたの大切な人は嫉妬しないの?
なんにもわかってないじゃん。
俺も心配だよ。
そう言って立ち上がり、髙地の後を追う。
正直今の髙地の言葉からも、
まだまだ弟扱いされていることがわかって虚しい。
敗因はそれなんだろうなぁ
でも、それも悪くないのかもね。
どうせ、一生一緒なのは決まってるし。
樹。
俺はひとつ、お前に自慢できる。
それは、髙地と俺がいっしょにいる時間。
これは俺の勝てる、
絶対に負けることのないステータス。
だから、俺以上に幸せを贈れよ
「恋人」に、なったんだろ?












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。