どの学校もだいたい9月下旬から10月くらいに体育大会的なやつあるよね
ということで作者がノリで書きました。
でもこの話は体育大会ではないです(?)
申し訳ございません。
いつもそうですが、今回は一ノ瀬視点なので一ノ瀬に共感する形で読むのではなく、一ノ瀬を愛でる感覚で読むと萌えを供給しやすいと思います。
前編と書いてますが、すぐに後編を出せる状態ではないので気長に待っててくださいませ。
私は一ノ瀬 光。
夏休みも終わり、2学期が始まった。
生徒会長を引退して喪失感はあれど、少しずつ慣れてきている。
今日は学級活動ばかりの日。
いつもあんなに授業を詰め込んで生徒を苦しめているのに、こんなにも学活ばかりでいいのだろうか。
はっきり言うとそんなことはどうでもいい。
深刻な問題が発生した。
──体育大会の種目決めだ。
数ヶ丘高校では文化祭と体育祭を一年ごとに交互で開催するが、秋の体育大会は毎年開催される。
3年生である私たちにとって、最後の学校行事だ。
つまり3年生は、やる気のある生徒が多い。
別にそれは悪いことではなく、むしろ良いことだ。
なぜそれが嫌なのかと言えば──
私は運動が本当にできない。
本当にだ。勉強以外に取り柄がない。
体育の授業ならばチームでやるもの以外は個人の問題だ。
私の技能が低いという成績がつくだけで終わる。
しかし、体育大会ではそうもいかないのだ。
体育大会は学校行事であり成績にはほとんど関係ない。自分が足を引っ張るのは目に見えている。
だからこそつらい。
チームは縦割り。1組チーム、2組チーム、3組チーム……と3学年で組ごとにチームをつくる。8組まであるから8チームが戦うのだ。
そこで、一人ひとつ競技に参加する。
その種目決めを今、学級委員を中心に話し合っているわけだが……
皆、様子をうかがっていて一向にすすまない。
だからといって私がなにかできるわけでもなく、無情にも時だけが過ぎていった。
教室の隅にある時計に目をやると、あと少しでチャイムが鳴ることだけがわかった。
今日はなぜだか頭がうまく働かない。夏休み明けで頭が慣れていないのだろうか。
結局、その時間では決まらず、次の授業も学活だったため持ち越しとなった。
今は休み時間で、教室から出てきた綺に声をかけて一緒に屋上にいる。
屋上には誰もいなかった。一応、科学研究部地学科の天体観測のために解放されているが、学校側が屋上に行くことを推奨していないからだろう。
二人で並んで塔屋を背もたれに座る。
なぜ呼んだのかと言われると困るが、綺に会いたかった。
とりあえず、体育大会でどの競技に出るか困っていること、クラスでの話し合いが進まないこと、どの競技に出るべきかを綺に聞いてみた。
そう言って額に唇を落とされた。
殺す気だろうか。
照れ隠しでとっさに出た言葉の矛盾に、色々な意味で顔が熱くなる。
綺が破顔した。
その顔はとびきりの笑顔で、すごくどきどきする。
この顔は私に萌えているときに出る顔だと夏休みに綺が教えてくれた。
つまり綺が今、私に萌えているわけで、それもどうしようもなく恥ずかしい。
綺が声をあげて笑った。
その笑顔になぜだか惹き付けられる。
目が離せない。
綺は数秒黙り込んだ。
そのまま綺は立ち上がり、笑顔で言う。
綺は万能で、勉強はもちろん運動も得意だ。
毎年100m走に出場して1位をとっている。
本当にすごいと思う。私は勉強一筋で今の位置にいるが、綺は私以上に忙しくも私と首席争いをしているのだ。
恥ずかしいからまだまだこの先も言えないだろうが、本当に尊敬している。
そんなことを考えていて、綺が発した言葉への反応が遅れてしまった。
わかっている。これは綺なりの冗談であり、挑発であり、応援であると。
なぜだかその挑発に、乗らずにはいられなかった。
次の学級活動の授業で、やりたい種目にひとり一回挙手をすることになった。
思えばこの3年間の中で体育大会や体育祭に関することで、自分からすすんで挙手することなどなかった。背中を押してくれた綺には感謝しかない。
ただ、100m走は人気な種目だ。
予想通り、定員を超えたためじゃんけんで決めることになった。
色々あったが、結論から言うと
負けた。
昔から運任せの勝負には弱い。
小学校の給食のじゃんけんでは勝てたことがない。
……そもそも、食べるのが遅かったため参加した回数自体少ないが。
次の休み時間、私と綺はまた屋上で塔屋を背もたれに作戦会議(?)を開始した。
今度は綺の方から誘ってくれたため少し、いや、かなり嬉しかった。
クラスの男子生徒からは「お前、二階堂のこと好きすぎだろ。犬みたいなしっぽと耳が見える!」と言われ、綺との関係がバレたのかと焦った。
ただ単に茶化されただけで、バレたわけではなかったが、本当に焦った。
すごく恥ずかしいからだ。
綺はバレてもいい、むしろバレたいと思っているようだが、私が死ぬ。
もし周りに私と綺が恋人だとバレたら綺は今以上に人目を気にせず私を甘やかすだろう。
嬉しい気持ちもあるが、恥ずかしすぎてとても耐えられない。
その言葉に、色々な意味で泣きそうになる。
そういえば、負けたショックが大きくて何も考えずに余った種目を選んだが、この種目は誰一人としてやりたがらなかった。
唯一の長距離走種目だからだろうか。
次の瞬間、私は綺に顎をすくわれていた。
声が出ない。何もできない。綺が近い。
頭が真っ白だ。
そう言われてはっとした。
たしかに、1学期とは何もかもが違う。
心を入れ替えなければいけない、変わらなければいけない。
卒業に向けて、もう針は動き出しているのだから。
少し考えればわかったはずなのに、この時の私は全く気がつかなかった。
私の慌てっぷりが余程お気に召したのか、綺が満足そうに笑って手を離してくる。
いつの間にか、この名残惜しさに違和感を感じなくなった。もう重症だ。
そう言ってにやにやと綺が笑った。
本当にずるい。安心している反面、残念に感じている自分もいる。
また好きを自覚されられてしまった。
穏やかに言われたその言葉に、胸がじんわりと温かくなる。
そういえばそうだったか。
ならば尚更こんなことで止まっていられない。
私も頑張らなければ。
未来の私と、今の私のために。
チャイムが鳴った。
このチャイムは、4限目開始のチャイム。
つまり、遅刻だ。
急いで階段を駆け下りる。
3年の教室は下の階にあるから登校が楽だと思っていたが、今は上の階にあってもいい。そう思った。
その後、教室に戻った私は初めての反抗期を迎えたかのような目で先生含めみんなに見られた。
もちろんそんなことはないので弁明するのが大変だった。

















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。