周りを見回すが、あなたの下の名前の姿はない
(あなたの下の名前ちゃんって確か…)
蘇枋はあなたの下の名前を探しながら来た道を戻り出す
あなたの下の名前は蘇枋に駆け寄ると、一気に安心したような表情になる
そんなあなたの下の名前を見て蘇枋はほっとした表情で微笑む
言い訳するでもなく、素直に謝るあなたの下の名前
いつもなら反発してくるが、しおらしい反応に蘇枋も少しキョトンとする
(あれ?やけに素直だ…迷子になって不安だったのかな…?)
なにかないかと辺りを見回すと、目に付いたのは射的の屋台
この辺りは射的や金魚すくいなどの娯楽屋台が場所をとっていて、飲食系屋台が立ち並ぶ通りと比べると時間帯的にも人通りも少なめだった
あなたの下の名前が指差したのは、そこそこ大きくて重量もありそうな猫のぬいぐるみ
(うん、あのくらいなら)
蘇枋は屋台のおじさんから5つのコルクを受け取って、射的銃を手に取る
他のお客さんたちは身を乗り出したり手を伸ばしたりして目的のものを狙っているのに対し、蘇枋はまるでプロ顔負けの立ち居振る舞いで構え、目的のものを狙う
1発目…
ぬいぐるみの左下側に命中し、少し斜めに傾く
次のコルクを銃先に詰めて、真剣な表情で狙いを定める
2発目…
宣言通り、右下側に命中し、ぬいぐるみはさっきとは逆方向に傾く
はしゃぎ喜んでいるあなたの下の名前をチラッと見る
(やっぱりあなたの下の名前ちゃんは笑ってるほうが可愛いな)
狙いを定めて引き金に指をかける
その瞬間…隣から小さく悲鳴が上がった
突然のことに驚いて、射的銃を下ろしあなたの下の名前を見る
あなたの下の名前は涙目で太もも辺りを摩りながらフルフルと震えている
その様子を見て、沸々と怒りが込み上げてきた
蘇枋は鋭い目つきで辺りを見回すと、次々に女性の下半身を触っている男が目についた
口調はいつもの蘇枋、だけど目つきは鋭く男を追っていた
射的銃を持ったままスッと歩き出す蘇枋
音を立てずに男の背後に近付き、射的銃を突きつける
男はビクッと体を揺らして蘇枋に向き直る
蘇枋の鋭い視線と向けられた射的銃の銃口は、男に圧をかける
男は「ヒィッ」と小さい悲鳴をあげて、蘇枋の指示通りに手を上げた
顔は血の気が引いて、汗を吹き出しながらブルブルと体を震わせていた
鋭い視線のまま追い詰める蘇枋
銃口は男の顎辺りに突き付けられている
男は動けないまま「ごめんなさい」を繰り返していた
騒ぎを聞きつけて警備員が蘇枋たちのところまで駆けつけた
事情を説明し、男は警備員に連れられてその場を後にした
いつも通りの和やかな笑顔で話す蘇枋
あなたの下の名前もホッとする
屋台に戻り、再度狙いを定める
3発目…
発射されたコルクはぬいぐるみの顎に当たり、その勢いで見事に後ろに落ちた
屋台のおじさんは蘇枋に景品のぬいぐるみを手渡し、プロ顔負けの射的の腕前を褒めまくっていた
満足気ににっこりと微笑む蘇枋
あなたの下の名前はぬいぐるみを抱きしめて嬉しそうにはしゃいでいる
夕飯時も過ぎて、娯楽屋台の通りも賑わい始めていた
人通りも多くなり、蘇枋はあなたの下の名前に手を差し出す
ぎこちなく手を繋いで通りを抜ける
蘇枋はあなたの下の名前が歩きやすいように手を繋いだまま前を歩く
神社の本殿前に差し掛かると人混みも少なくなり、辺りは先ほどより静かになった
誰も座っていないベンチを見つけて、そこまであなたの下の名前を誘導する
ベンチに座り、膝にぬいぐるみを座らせて蘇枋を見つめる
蘇枋はあなたの下の名前の前にしゃがみ、目線を合わせてあなたの下の名前の手に自分の手を重ねる
真剣な眼差しであなたの下の名前を見つめ返しながらそっと呟く
…next kiryu's case












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。