第2話

幸福の終焉と、黒い招待状
132
2026/05/01 09:00 更新
Nn 桃 百
最高のライブだったね、みんな!
ライブ会場の熱気が冷めやらぬ楽屋。
リーダーのないこが、タオルで汗を拭いながら満面の笑みでメンバーを見渡した。
東京ドームという大きな目標を掲げ、一歩ずつ、確実にその階段を登っている実感がある。
ファンの歓声、色とりどりのペンライト、そして隣で笑い合う、家族よりも長い時間を共にする仲間たち。
ないこにとって、この光景こそが守るべき「世界」のすべてだった。
H h 水 瑞
もー、りうちゃん最後のソロかっこよすぎでしょ! 
嫉妬しちゃうなー!
ほとけがいつものように、りうらの背中に抱きつく。
l L 赤 赫
ほとけっちだって、ダンスキレッキレだったじゃん
l L 赤 赫
初兎ちゃんもラップの時めちゃくちゃ煽るから、
僕もテンション上がっちゃったよ
sS 白 紫
当たり前やん
俺らの良さを引き出すのが俺の仕事やからな
初兎が少し照れくさそうに笑い、Ifと悠佑もそれを見て目を細める。
Yy 黒 黄
よし、じゃあ今日は打ち上げだ! 肉、食いに行くぞ!
悠佑の威勢のいい声に、一同が「おー!」と拳を突き上げる。
それが、彼らが「いつものいれいす」として過ごした、最後の幸福な記憶になるとも知らずに。
深夜。打ち上げを終え、ほろ酔い気分でシェアハウスへの帰路についていた時だった。
街灯が不自然に点滅し、周囲の喧騒が嘘のように消え去った。
iI 青 碧
…何これ
fが足を止める。空気が重く、耳の奥を刺すような高周波の音が響き始めた。
『キィィィィィィィィン――……』
H h 水 瑞
痛っ……! 何、この音……!
ほとけが耳を塞いで蹲る。
Nn 桃 百
逃げ……ろ……
ないこが声を絞り出すが、体は鉛のように重く、一歩も動けない。
その時、闇の奥から一人の男が現れた。漆黒の法衣を纏い、手には不気味な鈍色に光る蓄音機を持っている。
???
???
素晴らしい……
純粋な絆ほど、汚した時の音色は美しい
男が蓄音機のレバーを回すと、そこから流れてきたのは「歌」ではなかった。
それは、人間の脳を直接かき回し、記憶の繊維を一本ずつ引きちぎるような、冒涜的な「ノイズ」だった。
❤🩵💜
が、はっ……ぅ、ぅぁぁぁあ!!
特に、年齢が若く感受性の強い子供組の3人に、そのノイズは牙を剥いた。
りうらの瞳からハイライトが消え、ほとけの体から力が抜け、初兎の表情が憎悪に歪んでいく。
Nn 桃 百
りうら! ほとけっち! 初兎ちゃん!!
ないこが必死に手を伸ばすが、男が指を鳴らすと、3人の周囲に黒い霧が立ち込めた。
iI 青 碧
…返せ……俺たちの、子供組を返せ!!
Ifが魔力を込めた拳で霧を殴りつけるが、霧は煙のようにIfをすり抜け、3人を飲み込んで消え去った。
後に残されたのは、静まり返った夜の道と、地面に落ちたりうらの愛用のマイクだけだった。
Yy 黒 黄
……嘘、だろ
悠佑の声が、震えている。
リーダーとして、何があっても冷静でいようとしてきたないこの心も、音を立てて崩れていった。
最年少のりうら、ムードメーカーのほとけ、相方の初兎。
自分たちの光の半分が、一瞬にして奪われたのだ。
翌朝。いれいすの公式チャンネルに、一本の動画が投稿された。
本来ならスタッフが管理しているはずのアカウントだが、アクセス権は完全に奪われていた。
動画のタイトルは『【重大告知】いれいすの終焉と、真実の目覚め』。
ないこ、If、悠佑が震える指で再生ボタンを押すと、そこには見慣れたはずの、
しかし全く「別人」の3人が映っていた。
無機質な部屋の中、豪華な玉座に座るりうら。その左右に侍るほとけと初兎。
彼らの瞳は、かつての優しさを失い、冷酷な紫色に光っていた。
l L 赤 赫
…ハロー、ないこさん、Ifさん、悠佑さん
りうらが、氷のように冷たい声で話し始める。
l L 赤 赫
驚いた?
l L 赤 赫
……でも、感謝してほしいな
僕たちはやっと、君たちという「枷」から解放されたんだ
H h 水 瑞
アニキ、今まで僕を「可愛い弟」として扱ってくれてありがとう
H h 水 瑞
…でも、あれすごく苦痛だったんだよね
君の独りよがりな愛情に、吐き気がしてたんだ
ほとけが、かつてないほど鋭い、蔑むような視線を悠佑に向ける。
sS 白 紫
まろちゃん…あんたとのラップ、時間の無駄やったわ
あんたみたいな凡人と並んでる自分が、惨めで仕方なかったんや
sS 白 紫
これからは、僕らだけで「真実の音楽」を奏でさせてもらうわ
初兎の言葉には、かつての信頼など微塵も残っていなかった。
画面越しに突きつけられる、残酷な「言葉のナイフ」。
ないこは唇を噛み切り、血を滲ませながら画面を見つめた。
Nn 桃 百
…洗脳されてる
あいつらの言葉じゃないよ
Nn 桃 百
…そうだよね?
動画の最後、りうらが画面に向かって指を指した。
l L 赤 赫
1週間後、かつて君たちが「聖地」と呼んだスタジアムに来て…
そこで君たちの偽物の歌を、僕たちが完全に消去してあげる
l L 赤 赫
…いれいすを終わらせるためのレクイエムを始めよう
動画がプツンと切れる。
リビングには、重苦しい沈黙と、絶望だけが残った。
彼らが信じてきた「絆」が、今、最大の敵となって自分たちの前に立ちはだかろうとしていた。

プリ小説オーディオドラマ