目を覚ますと、そこは白い霧で覆われた不思議な場所だった。
あたり、白、白、白。
その間からちらちらと誰かの声が聞こえる。
どこかで聞いた、懐かしい声。
ひとまずここにいても埒が明かないので、そこら辺を探索してみることにした。
真っ白な霧がまるでオレの見つけたいものを隠しているようで、ぐしゃぐしゃと景色をかき乱している。
しばらくすると、さっきの白い霧とは打って変わって、真っ黒な靄が出てきた。
霧と靄の違いなんていうのはあまりよくわからないが、それは確かに靄、と言えるものだった。
しかしそれは、オレの事を拒んでいるようだった。
まるで「触るな」と言いたげに蠢く黒い靄。
でも、触らないと、何も始まらないような気がした。
一足、その黒い靄に足を踏み入れた。
ーー目の前の靄が晴れると、そこは神山高校だった。
オレがずっと通っているあの高校。
なんの変哲もない、ただの高校。
ただ、オレにとってはトラウマでしかない場所だった。
その場にしゃがみ込んで吐きそうになる。
けれどこれが何かの舞台だとするなら、舞台に乗らなければ演劇は始まらない。
覚悟を持って神山高校に足を踏み入れる。
どうせならそのまま誰もいないといいが…。
教室に入れば、クラスメイトが普通にいた。
そりゃあそうだよな、教室にはクラスメイトがいる。
それになぜ怯えるのか。
至極当たり前のことに怯えている自分が馬鹿馬鹿しかった。
それとも、彼らに怯えなくてないけない理由でもあるのだろうか。
そもそもなぜ想い出ーーまあ大半は類に飛ばされた記憶だが。があるのにここを怯える必要がある?
その理由は、一瞬で分かった。
ドンッ
突き飛ばされた。ちょうど踏ん張れば椅子の足に引っかかって確実に転ぶ場所で。
ゴンッ
頭上から国語辞書が降ってきた。
痛みのあまり立ち眩む。
不意に、誰かが叫んだ。
反論したクラスメイトが黙り込む。
そりゃそうだ。誰でも自分はいじめられたくない。
…ああ、思い出した。
オレは、いじめられていたんだ。
だから、学校はトラウマになっていたんだ。
咲希にも心配かけて、寧々や冬弥も嫌な目に遭って、オレさえいなければ、起こらなかった。
オレのせいで、KAITOやミクも消えた。
オレのせいで、類にも心配をかけた。
オレのせいで、えむも不安にさせてしまった。
オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレオのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで、オレのせいで…!
その時、周りに居たクラスメイト達も教室も全部消えて、オレが最初に目覚めた場所に戻っていた。
ただの声だった存在は、
不意にオレの目の前に姿を現した。
オレとそっくりな形相。
違うところは、服や髪型、口調ぐらいか。
まるでオレのドッペルゲンガーと言っても違和感がない
懐柔してくるような態度に恐怖感を覚え、反論する。
オレの身代わり?別人格?そんなの聞かされておちおち眠れるわけがない。
それにお前はオレと同じ姿をしている他人にすぎない。
信じれるはず無かった。
すると、彼は余裕そうに笑っていた表情を崩して、静かにオレに語りかけてきた。
それは、悲痛な叫びだった。
やめてくれと、眠れと、懇願していた。
そう思えば、答えはもう出ていた。
そう聞き返すと、彼は決心したような表情でこう告げた。
彼は少し微笑んで話す。
聞き返すと、彼はオレの頭を優しく撫で、まっすぐ目を見てこう言った。
そう告げて彼はそのまま居なくなってしまった。
視界がゆっくりと狭まっていく。
オレは、ねむ…て………
………………………
幾らかの時が過ぎて、聞こえてきた声。
考えることをやめて、偽っていた感情を捨てて
何も無くなったオレに届いたことば。
「きっと、今度は僕が君を笑わせて見せるから」
あれは、誰のことばだったのだろう
続く













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。