学園の校舎を抜け、私たちはAMPTAKxCOLORS(と私)だけが住む「特別寮」へと続く道を歩いていた。繋がれた手からは、ぷり先輩の体温が熱いくらいに伝わってくる。
ぶっきらぼうな口調。けれど、私の歩幅に合わせて、いつもより少しだけゆっくり歩いてくれているのが分かった。
夕闇が濃くなり、街灯がぽつぽつと灯り始める。ふと横を見ると、ぷり先輩は何かを耐えるように唇を噛み締めていた。
そう言って、彼は繋いでいない方の手で、私の頭を乱暴に、でもどこか慈しむように撫でた。その瞳は、私を見ているようで、もっと遠い「過去」を見ているようにも見えて。
特別寮の重厚なドアが閉まり、カチリと鍵がかかる音が静まり返った室内に響いた。外の喧騒はもう届かない。ここには、私とぷり先輩の二人だけ。
二人だけの特別寮の部屋に戻っても、室内の空気は重いままだった。
振り返ったぷり先輩の瞳は、吸血鬼としての本能と、私へのどうしようもない愛おしさで染まっているように見えた。彼は私を無理やり引き寄せると、包み込むように優しくベッドへ抱き寄せた。
耳元で囁く声は、驚くほど低く、掠れていた。彼が私の首筋にそっと触れる。その指先があまりにも優しくて、私の緊張がふっと解けていく。
誓うような言葉の直後、首筋に柔らかな唇が触れ、続いてちくりとした小さな痛みが走った。けれど、すぐにそれは心地よい熱へと変わっていく。
ぷり先輩は、私を慈しむように、ゆっくりと、優しく吸血していく。いつもの強引さはどこにもない。ただ、私をどこにも行かせないように、そっと背中に回された腕に力がこもるだけ。意識が甘い霧の中に溶けていく。
首筋に残された、温かくて愛おしい契約の印。吸血を終えた先輩は、私の肩に額を預けたまま、愛おしそうに私の髪を撫で続けた。
窓の外では、織姫と彦星の星が、二人の静かな夜を静かに見守っていた。
翌朝。
カーテンの隙間から差し込む朝日に目を覚まし、私はベッドの上に体を起こした。隣のベッドはすでに空っぽで、部屋の中にはかすかに、ぷり先輩の冷たくて心地よい魔力の残香だけが漂っている。
そう思いながら洗面台の鏡の前に立ち、制服の襟を少し下げて息を呑んだ。
私の首筋に残された、淡い赤色の痕。
昨夜の、壊れそうなほど優しかったぷり先輩の声が耳元で蘇り、急に顔が熱くなる。
昨日の短冊を見た時の、あの胸を引き裂かれるような痛みは、彼の優しい吸血によって嘘のように消えていた。
考えても答えは出ないまま、私は痕が隠れるように制服の襟をきっちりと締め、部屋を出た。
[七夕編end] 次回に続く












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。