<不死川side>
気付けば俺は、竈門の過去に返る前にいた、冨岡の千年竹林の道場にいた。
竈門の過去を見終わって、帰ってきたようだ。
冨岡ももちろん俺から少し離れたところに立っており、ぼけっとどこかを見つめていた。
その手は、しきりに左側の羽織の併せを、、、錆兎の形見の方をさすっていた。
するりと撫で下ろし、また上側に触れてするりと撫で下ろし、、、というのを繰り返している。
無意識なのだろうか。
ここ最近でついたクセとは思えないほど、自然にそんなことをしていた。
俺が話しかけようとすると、道場の入口からひょっこりと竈門が顔を出した。
そして俺を見て、不死川さんもいたんですね、とこちらに笑顔を向けてくる。
竈門の存在に冨岡ももちろん気がついたようで、冨岡は木刀を置いて竈門に近づいた。
竈門はそう言って、持っていた風呂敷を広げ、中から大きくて立派な大根と鮭を出した。
今朝、出ていた屋台に立派なのが売っていたから買ってきたのだそう。
にこにこと話をする竈門と、相槌を打ちながらやや和らいだ表情を見せる冨岡。
お互いに心を許しあっている雰囲気がして、俺はいたたまれなくなる。
この場にいることが何となく居心地が悪くなった。
だが、勝手に帰るわけにもいかないと思い、俺はどうしたら良いのかわからず後頭部を掻く。
そんな俺をチラリと一瞥した冨岡の視線を追って、竈門もこちらを見た。
どうしてそうなるのか。
やはり、この2人の考えていることはよくわからない。
だが今は、それがなんとなく愉快だった。
俺がそう言うと、竈門が嬉しいというのを表現するように笑い、冨岡も表情をやや穏やかにする。
いつも無表情鉄仮面な冨岡の色んな表情を見て、何となく視線を逸らした。
竈門と冨岡はそんな俺のことを気にせず、というか気が付かず、2人で鮭大根の話で盛り上がる。
会話を続ける(というか竈門が一方的に喋っている)のを見て、あの2人は仲が良いのだなと何となく思う。
竈門は冨岡を慕っているようだし、そんな弟弟子を冨岡も何かと気にかけている。
俺のかつての兄弟子であり友人でもあるアイツの顔を思い出し、少し目を細める。
匡近も、何かと事件を巻き起こす俺を気にかけてくれたっけ。
そういうことがあったからこそ、それを思い出させてくるようなコイツらは嫌いだ。
嫌なことを思い出させてくる。
だけど同時に、嫌いになりきることもできない。
俺が言うと、竈門と冨岡はきょとんと同時に俺を見た。
水の中に風が混じっているような歪な3人だが、まあ悪くない。
そう思える程度には、俺はこのおかしな水ノ兄弟弟子を嫌いになりきれていないのだった。
こんにちは。「藤」です。
今回のチャプターでこのお話は完結です!
これを書きながらひとつ思ったことがありまして。
それは、炭治郎本人が過去に戻っていないから、本人を慰める的な話が書けないということです!
というわけで、帰ってきてからはこの1話だけとなってしまいました、すみません。
それから、この場を借りてもうひとつ謝罪せねばならないことがありまして。
実は、私が小説の表紙に使っていた画像、Google先生で検索したものをそのまま使っているものでして。
他の小説で著作権は大丈夫なのかとご指摘があり、デフォルトのものへ変更させていただきました。
変更になっていないものは、私が自分のない画力を絞って描いたものなのでご安心ください。
プリ小説の作者様方が公式の画像や絵師様が描かれたファンアートを使っておられるのも多く見るので、プリ小説はそれを許可しているものかと勝手に思い込んでおりまして。
今後もいろいろとわかっていないようなことがございましたら、遠慮なくご指摘お願いします。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
不束者ですが、何卒これからも「藤」を、よろしくお願いします!











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。