<不死川side>
カツ、カツ、カツ、カツ、と木の棒が比較的硬い道を突く音が響く。
空は既に暗く、星が瞬いていた。
そんな空の下を、竈門が長くて太い木の棒を支えにしてゆっくりゆっくり歩いている。
額には包帯が巻かれ、着物も汚れ、散々な姿だ。
肩からかけた支給服すら重いというように顔を顰め、それでも歩く。
ところどころ転びかけながらも、何とか重い身体を引き摺って歩く。
師である鱗滝さんのところに帰るために、眠れる妹の元へ帰るために。
やっと狭霧山の鱗滝さんの家に竈門が到着した頃には、夜も更けていた。
真っ黒に塗りつぶされた夜の空の下、比較的急な道を必死で登っていく。
もう少しで鱗滝さんの家に着く、という時、鱗滝さんの家の扉がバキャッッ!!と蹴り飛ばされた。
見えてきた鱗滝さんの家を前に表情を緩めていた竈門の顔が、ポカンとしたものになる。
扉を蹴り飛ばした本人は、そのままひょっこりと家の中から顔を出しててくてくと外に出てきた。
それは、竈門の妹の竈門禰豆子だった。
竈門が、思わずというように驚いた声を出す。
名前を呼ばれて、竈門禰豆子はそちらに顔を向け、じわりと目を見張った。
竈門が急いで竈門禰豆子に寄っていこうとして、思いっきり足がもつれて転んだ。
ゆっくりと起き上がった竈門の頭を、駆けて来た竈門禰豆子が抱きしめた。
俺はその光景に、息を呑む。
竈門禰豆子が人を襲わないことは証明できたが、まだ俺はアイツを信用していなかったから。
襲わないだけではなく、こんな、人間のようなことまでするのか。
その顔は、ほぼ無表情だが。
そんな騒ぎ声を聞いてか、鱗滝さんが蹴り飛ばされた扉を気にしながら家から出てきた。
そして、竈門禰豆子が抱きしめている竈門を見て、カラカランッ、と持っていた薪を落とす。
大声で泣いて竈門禰豆子に縋るようにしている竈門に駆け寄り、鱗滝さんは竈門禰豆子ごと竈門を抱きしめた。
そう言う鱗滝さんの声は涙声で、やや震えていた。
そういえばこの人は、最終戦別に出した弟子をことごとく殺されているんだった。
過去のたくさんの弟子たちを考えても、帰ってきたのは冨岡だけだったということか。
冨岡は途中であの『錆兎』という少年と別れたから、あの鬼と会うことはなかったのだろう。
あれだけ弟子を出しておいて、帰ってきたのは竈門で2人目。
感極まりもする。
鱗滝さんは、天狗のお面の下で大粒の涙を零していた。
山に、竈門の泣き声が響く。
それが悲しみの涙じゃなくて良かったと、竈門兄妹のことは嫌いなはずなのに、そう思った。
視界が白くなる。
やや暖かみのある乳白色に、俺はもう戻るんだろうなと思いながらも目を閉じた。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!