第4話

CASE 2
19
2026/03/04 09:00 更新






 鬼塚 「集合!三列縦隊!!日朝点呼番号!」



鬼塚教官の鋭い声が訓練場に響き渡る



 伊達 「鬼塚教場、気をつけィ!」



伊達の号令に全員の背筋が反射的に伸びた



────なんでだ?



昨日はあれだけ長時間眠ったはずなのに

欠伸が止まらない…



肺いっぱいに朝の冷たい空気を吸い込んでも

瞼の重さは取れなかった



 鬼塚 「ん?どうした?松田と降谷…その顔…」



鬼塚教官の視線が隊列の中の2人に向けられる



言われなくとも目立っている



陣平と降谷の顔にはこれでもかというほど

ガーゼと絆創膏が貼られていた



頬の腫れも全く隠しきれていない



一体どうやって言い訳するつもりなんだ…



 松田 「聞きたいっスか?」



陣平がどこか挑戦的に口の端を上げる



 鬼塚 「あぁ…ぜひお聞かせ願いたいねぇ…」



鬼塚教官の疑いの視線がより強くなった



そこで1歩前に出たのは伊達だった



 伊達 「実は…昨夜、自分の部屋にゴキブリが

大量に出ましてその2人にも

手伝ってもらったんですが、

退治するのに夢中になり過ぎて

机に頭をぶつけるわ

立て掛けたベッドが倒れてくるわで、

散々な目にあいまして…」



───は?



いや流石に無理があるにも程があるだろ…



訓練場に一瞬奇妙な静寂が落ちる



 鬼塚 「なるほど?しかし…」



鬼塚教官が何か言いかけた瞬間伊達が声を張り上げた



 伊達 「とはいえ大切な学校の備品に

傷を付けてしまった罰として

我々鬼塚教場は一周多く周ってきます!

行くぞ!」



 「「「「「オウ!!」」」」」



 伊達 「二列縦隊マラソン始め!」



 「「「「「1・2!1・2!」」」」」



 鬼塚 「お、おい、まだ話は…」



鬼塚教官の制止を華麗に無視して

先頭の問題児集団は勢いよく走り出した



他の班は苦笑いをしながら後方から追いかける



何故あいつらの苗字がスラスラと出てくるのか



陣平と萩は幼なじみだから知っているのは

当たり前なのだが、こいつら5人…

伊達班はもう同期の中で問題児集団として有名だからだ



走っていると再び欠伸がこみ上げてきた



酸素を全身に巡らせるように大きく息を吸い込んで

それを無理矢理噛み殺していると

風に乗って前方の会話が耳に届いた



 萩原 「よォ、陣平ちゃん…何だよその面…

色男が台無しじゃねぇか」



 松田 「うるせえよ萩…」



 萩原 「おまけに差し歯まで抜かれてやんの…

超ウケるゥー♪ 」



遠目でも調子に乗ってる萩を

じとっと睨む陣平の不機嫌オーラが

ひしひしと伝わってくる



 萩原 「しかし降谷って奴もやるねぇ…

プロボクサーの親父さんに仕込まれた

陣平ちゃんとここまでやり合うとは…

んで?どっちが勝ったんだ?」



 松田 「そりゃー当然…」



 松降 「俺/僕だ!!」



声が怖いほど綺麗に重なっている



 松田 「はぁ?テメェ、殴られ過ぎて

頭いっちまったんじゃねーか?」



 降谷 「それは君だろ?」



そういえばあいつは喧嘩っ早くて負けず嫌いだったな



視線を前へ向けると2人は走りながら押し合い、

今にも取っ組み合いを始めそうな勢いだ



そこへ伊達が割って入る



 伊達 「おいお前ら…何があったか知らねーが…

次は…俺も混ぜろよ!!」



ガタイのいい体が2人の間に入り込む



それでも睨み合いは止まらない



────仲裁も喧嘩でやるつもりか?



成人した男たちのはずなのにやっていることは

まるで小学生だ



 鬼塚 「コラきさまら、真面目にちゃんと走れ!」



 「「「「「「1・2!1・2!」」」」」」



ほら言わんこっちゃない



朝の冷たい風の中、今日も鬼塚教場は

騒がしく1日を始めるのだった





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