✧︎五色の雷恐怖症です
✧︎それでもいい方はどうぞ!!
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その日の夜は、梅雨明けを思わせるような激しい夕立だった。夜遅くになり、稲光と雷鳴が轟き始めたとき、五色はベッドの中で縮こまっていた。
五色は、人一倍負けん気が強く、コートの上では向かうところ敵なしとばかりに自信満々だが、こと雷となると話は別だ。幼い頃のトラウマからくる雷恐怖症で、その轟音を聞くたびに身体が硬直し、呼吸が浅くなる。
激しい雷鳴が寮の部屋を揺らした瞬間、五色は思わず布団を被り、息を殺した。しかし、一度始まると止まらない。稲妻が走るたびに部屋が一瞬真っ白になり、間髪入れずに地面を叩きつけるような轟音が響く。
「ひゅっ……は、ぁ……」
五色の胸は激しく打ち鳴り、過呼吸の初期症状が出始めた。全身の力が抜け、手足が冷たくなっていく。
「や、め……っ、やめ、て……」
恐怖と息苦しさで、五色の目からは生理的な涙が溢れ出した。声を上げたくても、喉が締まって息だけが漏れる。パニックになり、布団の中で身体を丸めて震えることしかできなかった。
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その異変に最初に気づいたのは、隣室の白布だった。
あまりにも激しい雷鳴と、壁越しに聞こえる規則的でない小さな異音に、白布は不審を覚えた。
ノックもせず、白布が五色の部屋のドアを勢いよく開けると、そこには布団の塊の中で震え、浅く速い呼吸を繰り返す五色の姿があった。
「五色!おい、大丈夫か!」
白布が慌てて駆け寄り、布団を剥がすと、五色の顔は涙と脂汗でぐしゃぐしゃだった。
パニックで焦点の定まらない目で白布を見上げ、五色はか細く泣きじゃくっている。
「過呼吸か……落ち着け、五色。ゆっくり息を吐け!」
白布はまず、五色の手を握り、自分に意識を向けさせた。
次に、自分の呼吸をわざと深く、ゆっくりとしてみせ、「俺に合わせて、ゆっくり吸って……ほら、ゆっくり吐く。大丈夫だ、雷なんてただの音だ」と繰り返し声をかけた。
状況を察した川西が部屋に入ってきて、白布に水とタオルを差し出す。そして、五色の部屋の電気をつけて、少しでも外の暗闇と稲光を遮断するようにした。
「ほら、五色。少し顔冷やせ」
川西が絞ったタオルで五色の額を拭い、白布は五色の背中を規則的に摩り続けた。
上級生二人に囲まれ、安心感と、身体を摩られる温かさで、五色は少しずつ呼吸を取り戻していった。
数分後、五色の荒い呼吸は嘘のように落ち着いた。
しかし、恐怖から解放された安心感で、今度は堰を切ったように嗚咽が漏れ出した。
「うっ……ああ……こわか、っ、た……!」
声を押し殺すことなく、五色は子どものように泣き出した。普段の自信満々なエース候補からは想像もつかない、
情けない姿だった。
白布は何も言わず、ただ五色の背中に手を当てていた。川西も、静かに五色のペットボトルに水を入れて差し出した。
「…大丈夫だ。もう、落ち着いたか?」
雷鳴の合間に、白布が静かに言った。その声はいつもより優しく、五色は泣きながらも、その温かさに感謝した。
しばらくして、五色が涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げた。
「す、すみません……お、俺、エースなるのに……」
「エースだろうがなんだろうが、怖いもんは怖いだろ」
と白布はため息交じりに言ったが、表情は穏やかだった。
「いいからもう寝ろ。俺たちはここにいるから」
白布と川西は五色が再び眠りに落ちるまで、その部屋に留まった。
翌朝、五色は二人に向かって頭を下げたが、白布は「馬鹿。口外したらぶっ飛ばす」と一言残して去っていった。しかし、その顔はどことなく穏やかな顔をしていた。
雷恐怖症は治らないかもしれないが、五色は知った。
自分がどんなに情けない姿を見せても、この白鳥沢のチームメイトたちは、静かに、そして力強く自分を支えてくれるのだと…………。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。