第3話

2.理由
907
2021/02/28 00:03

現在、私のアパートから徒歩約5分ほどの距離にある、無一郎のアパートに来ている。


無一郎
無一郎
《A302にノート忘れたから、部屋まで持ってきてくれる?》




本当は面倒だったけど、毎回小テストを行う授業のノートだったので、仕方なく!持ってきてあげた。
そう、仕方なく!



部屋の前にあるインターホンを押して約10秒。
気配なし。
もう一度押して約10秒。
気配なし。



わざわざ持ってきてあげたのにこの仕打ち。
がっくりと肩を落とし、ドアポストにノートを入れようとした時、いきなりドアが開いた。
長髪が視界の端に映ったので、文句を言ってやろうと顔を上げると、無一郎ではなかった。

女子
次の子 ・ ・ ・
お先ー。



中から出てきたのは、綺麗な女の人。
普通は驚くだろうけど、"またか。"しか思わない。



その女の人はきつい香水をぷんと匂わせ、ヒールをコツコツと鳴らしながら階段を降りていった。
そして、部屋の奥からやっと無一郎が出てきた。

無一郎
無一郎
あ、あなたありがと。
お茶でも出すから、よかったら上がる?
あなた
遠慮します。



誘われてすぐに断った。
上半身裸+香水の匂いで、さっきまで行為に及んでいたことが分かる。
そんな部屋に入りたくもない。

無一郎
無一郎
え、妬いちゃった?
ごめんね。
あなた
そんなわけないでしょ!



そう、これが、私が無一郎を好きにならない一番の理由。
女たらしなのだ。
モテる理由がいくら眩しくても、マイナスポイントが大きすぎる。

無一郎
無一郎
そっか、残念。じゃあ部屋まで送るよ。
待ってて。



無一郎は私の頭をぽんぽんとし、急いで部屋の奥に消えていった。
送ってくれるなら、取りに来てほしかった。
そう思ったけど、未だに鼻の奥に残る香水の匂いで、"無理だった"ということが頭をよぎった。

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