第2話

【1】5周年のあとで
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2026/02/13 02:00 更新
窓の外は、夜の街が静かに光っていた。


大晦日の生配信も、事務所のカウコンも、


ドームツアーも無事に幕を閉じた。


SnowManデビュー5周年。


振り返れば眩暈がするほどの速度で


駆け抜けた一年だった。


6回目のデビュー記念日を迎える数日前。


グループ仕事を終えて楽屋へ戻る廊下。
阿 部 亮 平
もうすぐSnowManも6周年目に突入かぁ…
宮 舘 涼 太
当たり前のように過ごしてきたけど、
ここまで来れたのも奇跡みたいだよね。
深 澤 辰 哉
6年目かぁ〜…とりあえず全員で休暇取ろ?
もうさ、1ヶ月くらい海外逃亡しよ!わら
佐 久 間 大 介
いいね〜!俺ハワイ行きたい!
向 井 康 二
ほな俺はタイやな!ขอบคุณครับコップンクラップ🙏
ラ ウ ー ル
俺はパリ!ファッションウィーク見たい!
目 黒 蓮
……俺は、海ならどこでも。あ。あと、
星空がきれいなところに行きたいな。
誰かが笑い、誰かが冗談めかして予定を語る。


デビュー5周年を走り切った直後の解放感が、


メンバーの声色と会話に広がっていた。


軽口が飛び交い、空気はいつものSnowManだった。


達成感と少しの未来への期待を膨らませていた。


楽屋に着いて岩本が口を開く。

岩 本 照
俺は…5周年でやったことを“最高”で
終わらせたくないな。それを更新して
いかないと、いつかは止まる…。
“止まる”という言葉が、軽く放たれたはずなのに、


楽屋の空気を切り裂いた。


その言葉に、誰もすぐ返事をしなかった。


エアコンの低い音と、遠くの街の


クラクションだけが楽屋に流れる。


5年間の景色が、誰の頭にも一瞬でよぎった。


渡辺は椅子にもたれかかり、腕を組んだ。
渡 辺 翔 太
ちょっと聞き捨てならない。
止まるって何だよ。俺たちもう
十分前に進んで来てるだろ。
岩 本 照
前に進んでるだけじゃ足りない。
常に上を目指さないと意味がないんだよ。
岩本の目は真っすぐだった。


彼の言葉に誰も反論しなかった。


だが、誰も頷きもしなかった。


その沈黙こそが答えだ。


その言葉に、楽屋の空気が少し硬くなる。
渡 辺 翔 太
メンバーも海外の仕事増えてきてる。
環境も文化も違うし、時差もある。
まずは体調を優先するべきだろ。
渡辺の声が聞こえているのか否か


向井は何も言わずに机を見つめ、


目黒は指先を絡めていた。


ラウールは窓の外を見たまま動かない。
岩 本 照
それでパフォーマンスのクオリティを
落としていい理由になるわけ?

岩本の声は冷たい。
渡 辺 翔 太
ならねぇだろ。でも、潰れたら終わりだ。
俺たちは商品じゃねぇ。人間なんだ。
岩 本 照
見せる側なんだから商品だろ。
アイドルは夢を売る仕事なんだから。

その一言で、空気が完全に変わった。


そこに廊下でスタッフに呼び止められていた


深澤が遅れて入ってきた。
深 澤 辰 哉
ごめん遅れた〜!わら
楽屋に入ってきた瞬間、異変を察知した。


声の温度、視線の鋭さ、沈黙の重さ。


いつもなら冗談が飛び交う場所が、


別の場所みたいだった。
深 澤 辰 哉
あ、ちょっとさ。めめと康二とラウール、
スタッフさんに頼まれごとしてるんだけど
一緒に手伝ってもらっていい?
3人は一瞬戸惑ったが、何も言わずに立ち上がった。


深澤は3人を連れて楽屋を出る。


扉が閉まる音が遠ざかる。


若い声が消えた分、空気はさらに重くなった。


深澤は楽屋の声が届かないほどの距離で


空いてる部屋に入った。
向 井 康 二
ふっかさん?頼まれごとって何なん?
深 澤 辰 哉
ん?あ…スタッフさん呼んでくるからさ、
とりあえずここで待っててもらっていい?

すぐ戻るから〜。と部屋をあとにする深澤。
宮 舘 涼 太
ねぇ、照。もういいんじゃない…?

宮舘が言った。それと同時に深澤も楽屋に戻ってきた。
宮 舘 涼 太
5周年あれだけ走りきった。
1ヶ月とは言わないけど休みもなしに
さらに追い込む必要ある?

ある。岩本は即答した。
岩 本 照
追い込まなきゃ、俺たちはいずれ落ちる。
渡 辺 翔 太
落ちない。俺が落とさない。

間髪入れず渡辺が反論する。
岩 本 照
翔太一人で守れると思ってんの?
言葉が鋭くなる。


佐久間が立ち上がった。
佐 久 間 大 介
ちょ、ちょっと待って二人とも!
せっかく5周年走り抜けたね!って話を
してたのに喧嘩するつもり!?
だが、岩本と渡辺は止まらない。
岩 本 照
若いうちに限界超えなきゃ意味がない。
渡 辺 翔 太
若いからこそ俺たちがあいつらを
守らなきゃだめなんだよ!
渡辺の声が震えた。


佐久間と宮舘が仲介に入ろうとするが、


ヒートアップする一方だった。


阿部はさっきから何度も口を開きかけては閉じていた。


言葉を挟めばもっと火に油を注ぐと


分かっていたからだ。

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