集まった大量の砂鉄を抱え、私たちはルリに話を聞くために、一度村の入り口へと戻ってきた。
しかし────。
「貴様があなたの兄だとしても、村には一歩も入れんと言っただろう」
冷徹な声が響いた、その刹那。
ガツゥン!!と硬い音を立てて、金狼の鋭い矛先が千空の首元へとピタリと突きつけられた。
寸分の狂いもない、文字通りの警告の一撃。
「ひゃっ」
目の前でギラリと光った刃に、私が思わず小さく悲鳴を上げて肩を揺らす。
(あ、れ。なんかやばいかも────)
脳裏に、1年前の記憶が最悪な鮮明さでフラッシュバックした。
村に初めてたどり着いたあの時も、今と同じように冷たい石の刃が私に容赦なく向けられたんだ。
ガチガチと勝手に震え出した私の肩に、千空の手が触れた。
千空は私の悲鳴と異変に即座に反応し、私の腕をぐいっと引っ張って、自分の大きな背中の後ろへと強引に引き隠した。
「お、お兄ちゃん」
「あなたは下がってろ」
千空の背中越しに、低く、絶対に譲らない声音が降ってくる。
私を完全に自分の体で遮り、矛先から遠ざけるように片手で私の頭を自分の腰のあたりに押し留めている。
千空の大きな背中があるだけで、嘘みたいに世界が安全になった気がして、私はその上着をぎゅっと握りしめた。
「金狼やめろ、あなたが怖がってるじゃないか」
コハクが、鋭い声で金狼を窘める。
「す、すまない!」
千空の背中からひょっこり顔を覗かせた私の、青ざめて震える顔が目に入ったのだろう。金狼は目に見えて狼狽し、慌てて千空の首元から矛を大きく引き戻した。
「俺は別に、あなたを脅かすつもりでは!」
「ククク、俺とあなたの対応が違いすぎやしねぇか?」
首をさすりながら、千空がジト目で金狼を見る。
そのいつもの調子に、私の心臓のバクバクもいつの間にかすっかり落ち着いていた。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。