「当たり前だ。あなたは長に認められ、貴様は認められてない。それだけだ」
フンと鼻を鳴らし、金狼は一瞬にしていつもの生真面目な門番の顔に戻る。
その一切のブレがない言葉に、千空は「あー、そーかよ」と、呆れた様子で耳の穴に小指を突っ込んだ。
「おぅ、どうせ科学の万能薬が完成すりゃ通らざるをえねぇんだ。とっとと作っちまおうぜ。科学王国の夜明け。鉄ってやつをよ!!」
クロムは抱えた砂鉄を掲げながら、ニカッと不敵に笑っている。
「あなた」
「ん? なに?」
千空に突然名前を呼ばれたかと思えば、脇の下に大きな手が滑り込んできて、ひょいっと私の体が宙に浮いた。
そのまま手慣れた動作で、千空の細いけれど意外とがっしりとした腕の中に、すっぽりと横抱きに回収される。
「最近お兄ちゃん、抱っこするの好きだね」
腕の中に収まったまま見上げて問いかけると、千空は私と視線を合わせないようにフイッと顔を背けた。
「あ"? 偶然だ。偶然。さっさと拠点戻って鉄を生成すっぞ」
「ハッ! 千空、君は砂鉄取りで疲れているだろう。ここは私があなたを抱っこしよう」
そう言ってコハクがこちらに手を伸ばしてくれる。
────そうだった。
千空はミジンコ体力って知ってたはずなのに、ついつい甘えてしまっていた。
(お兄ちゃんを無理させたくないしなー)
私がコハクの手を取ろうと、千空の腕の中で小さく身を捩る。その瞬間。
「──動くんじゃねぇ、バカ」
「うぇ??」
低い声と共に、私の体を支える千空のふたつの腕に、ぎゅっと強い力が込められた。
「俺は、自分の妹を抱っこできねぇほど疲弊してねぇわ」
そう言って私をがっちり抱えたまま、科学の拠点へ向かってザクザクと歩き出した。
絶対疲れてるはずなのに、歩きづらそうな素振りなんて1ミリも見せない千空を見つめながら、私はなんだか無性に嬉しくなって、首にぎゅっと腕を回す。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。