第40話

優しい嘘
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2026/07/25 14:00 更新
「当たり前だ。あなたは長に認められ、貴様は認められてない。それだけだ」


​フンと鼻を鳴らし、金狼は一瞬にしていつもの生真面目な門番の顔に戻る。


その一切のブレがない言葉に、千空は「あー、そーかよ」と、呆れた様子で耳の穴に小指を突っ込んだ。


「おぅ、どうせ科学の万能薬が完成すりゃ通らざるをえねぇんだ。とっとと作っちまおうぜ。科学王国の夜明け。鉄ってやつをよ!!」


​クロムは抱えた砂鉄を掲げながら、ニカッと不敵に笑っている。


「あなた」

「ん? なに?」


​千空に突然名前を呼ばれたかと思えば、脇の下に大きな手が滑り込んできて、ひょいっと私の体が宙に浮いた。


そのまま手慣れた動作で、千空の細いけれど意外とがっしりとした腕の中に、すっぽりと横抱きに回収される。


「最近お兄ちゃん、抱っこするの好きだね」


​腕の中に収まったまま見上げて問いかけると、千空は私と視線を合わせないようにフイッと顔を背けた。


「あ"? 偶然だ。偶然。さっさと拠点戻って鉄を生成すっぞ」

「ハッ! 千空、君は砂鉄取りで疲れているだろう。ここは私があなたを抱っこしよう」


そう言ってコハクがこちらに手を伸ばしてくれる。


────そうだった。


千空はミジンコ体力って知ってたはずなのに、ついつい甘えてしまっていた。


(お兄ちゃんを無理させたくないしなー)


私がコハクの手を取ろうと、千空の腕の中で小さく身を捩る。その瞬間。


​「──動くんじゃねぇ、バカ」

「うぇ??」


低い声と共に、私の体を支える千空のふたつの腕に、ぎゅっと強い力が込められた。


「俺は、自分の妹を抱っこできねぇほど疲弊してねぇわ」


そう言って私をがっちり抱えたまま、科学の拠点へ向かってザクザクと歩き出した。


絶対疲れてるはずなのに、歩きづらそうな素振りなんて1ミリも見せない千空を見つめながら、私はなんだか無性に嬉しくなって、首にぎゅっと腕を回す。

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