プシュー
ガタガタ
バスの座席に座りスマホを取り出す
綾に連絡を入れようと思いLINEを開く
メッセージを送り終わると、すぐに返信が来た
了解というスタンプだ
最近は、学生の流行りに乗ろうとスタンプを積極的に使っているらしい
ゆるい猫の顔がなんだか笑えてきてしまう
外の景色をぼんやりと見る
そうしているうちに時はあっという間に過ぎていく
「◯▽駅 ◯▽駅」
バスのアナウンスが僕の目的地を読み上げる
タッ
プシュー
ブロロロ
バス停で降り、真っ直ぐに道を歩いて行く
少し先の所で綾が手を振っていた
少し速足で歩く
隣に来ると、綾は僕の額に手を当てた
ぼんやりと雑談をしながら歩いて行く
数分後、白い壁の家が見えてきた
綾の家だ
そう言われて玄関に入った
花瓶の花が今日は「ゆり」になっている
中に入ると、いつもの様に、優斗くんと智瑠さんが迎えてくれた
智瑠さんは綾の夫で、優斗くんは綾と智瑠の子供だ
洗面台で手を洗うと、ソファに荷物を下ろす
僕はそう返事をすると、バッグの中からエプロンを取り出した
さっと身につけると綾と並んでキッチンに立つ
綾が鶏肉を取り出すと、包丁で筋を切っていく
僕も母がやっているのを見ていたため、見よう見まねで進める
綾からのアドバイスももらいながら調理を進める
優斗くんがキッチンに走ってくる
そう言って綾は竹串に刺した唐揚げを1つ渡した
智瑠さんも1個手に取り、口へと運ぶ
サクッ
2人が微笑む
そんな3人を見て、幸せな家族だなと思った
ある程度もらうと僕は荷物をまとめ、上着を着た
3人に見送られバス停まで歩く
僕はこのやりとりが最後だなんて、思いもしなかった
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!