痛む左足を少しだけ引き摺って,屋上の階段を一歩一歩降りた。
六年二組の扉を開けると,教室に残っていたエイコー達が振り返る。見回したけど,結衣ちゃんはいない。
トモヤが教えてくれる。
お姉ちゃん達に,応援される。ランドセルを手にして,私は教室を飛び出した。
五年生の春。図工の時間。
私と結衣ちゃんは完成した「友達の絵」を見せ合っていた。
ツインテールの似顔絵はパステルカラーで纏められていて,本物の私よりずっと可愛く描かれていた。水彩絵の具で色を塗るのが好きと言うだけあって,結衣ちゃんの絵はクラスで一番上手だった。私がうっとり画用紙を眺めていると,それを男子が横からさっと取り上げた。
絵を取り戻そうとして,私は相手の腕を引っ張った。するとバランスを崩してコケそうになったその子は,自分の腕ごと私を振り回した。次の瞬間。私がつかんでいた手の間から,ふっと男の子の腕が抜けた。
怒りに任せて私に向けて振り下ろそうとしていた手を,結衣ちゃんが横からつかんだ。
何時も笑顔の結衣ちゃんが,その時だけは凄く恐い顔で男子を睨む。
結衣ちゃんの迫力に圧されて,男の子は捨て台詞を吐いて逃げていった。
あの時・・・・・・。友達って言ってくれたの,本当に・・・・・・本当に嬉しかった。
結衣ちゃんを追いかけて通学路を歩いていると,何時も渡る橋が見えてきた。
橋の真ん中を少し過ぎたあたりで,結衣ちゃんを呼ぶ声が聞こえた。慌てて橋から河原の方を見下ろすと,女の子達が話し込んでいるのが見える。
ひとりの女の子に,結衣ちゃんが肩をドンと押されて倒れた。
橋から回り込んだ私が河原に下りた時,結衣ちゃんは服についた泥汚れを払い落として,黙って立ち上がるところだった。
女の子達の後ろから呼ぶと,結衣ちゃんの目が真ん丸に見開かれた。
振り返った女の子達が,私をじろっと見る。
え,私?えーと,そのー・・・・・・私は・・・・・・。
あ。でもでも,
もじもじしたら,女の子達は「はぁ?」と変な顔をした。
私が言うと,三人はげらげらと笑い出した。
キツイ言葉にも,結衣ちゃんは何も言わない。
びっくりして結衣ちゃんを見ると,泣きそうな顔で俯いている。





















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。