甲斐田視点
貴方と歩んだ、沢山の日々。
僕は、それを抱えて、生きていかなくてはいけない。
でも、僕には無理だったみたい。
独りは、淋しいよ、ハヤトさん。
それから僕は、沢山の時間をかけて、
とあるものを書いた。
配信と研究をしながら、
何度もやり直した。
何度も考え直した。
やっと、出来た。
ああ、たくさんの人に迷惑をかけちゃうなぁ…
でも、もう辛いんだよ、
会いたいんだよ。
拝啓、ライバーの皆様、リスナーの皆様へ。
今まで、本当にありがとうございました。
共に歩んできた時間、思い出、全て、忘れません。
僕は、皆様のおかげで、今日まで生きてこられました。
でも、もう無理だったみたいです。
彼が亡くなってから、もう4年の月日が経ちましたね。
それまでにも、新しいライバーが増えたり、
たくさんのことをしてきました。
それが嫌だったわけでは無いです。
むしろ、楽しかった、嬉しかった。
でもね、ハヤトさんがいなくちゃ、意味がないんだよ。
2人になってしまったROF-MAO、
出せなくなった2人の新曲、
もう二度と更新されることのないXのアカウント。
本人は居ないのに、それだけが残る。
ハヤトさんが生きていたこと、それが、
思い出になって、過去になって、歴史になって。
それが、嫌だった、辛かった。
また、会いたいと思ってしまった。
だから僕は、12月2日、ハヤトさんに会いに行きます。
たくさんの人に迷惑をかけることも、
また悲しみを生むことも全てわかっております。
こんな、自分勝手な僕をどうか許してください。
そして、僕たちが皆様に嘘をついていたことも、
謝らせてください。
本当は、何かの記念で言おうと思っていた。
周年か、誕生日か、記念日か。
いつか言おうと思っていた。
約束していた。
でも、その日が訪れることはなかった。
ハヤトさんはきっと、自分のことなんか忘れなさい、
って言うんでしょう?
僕は、絶対忘れないから、忘れたくないから、
貴方と過ごした思い出、全部、全部、忘れないから、
3年前は、そう思っていた。
でも、言えなかったのが、相談できなかったのが、
つらかった。
ハヤトさんと約束したこと、全部守れなかった。
2人で海に行くことも、2人で旅行に行くことも、
2人の新曲を出すことも、2人で配信をすることも。
全部守れなかった。
だって、貴方がいないと、叶わないことだから、
決して、事実から逃げようと、
救われようとしたいんじゃない。
ただ、ただ、会いたい。
それだけなの。
こんな最後になっちゃってごめんなさい。
でもね、僕は幸せ者だったよ。
ハヤトさんのおかげで、みんなのおかげで。
僕は最後まで、幸せだよ。
ありがとう。
僕もまた、
思い出になって、過去になって、歴史になって。
同じ道を歩むんでしょう。
それでも、よかった。
僕たちが生きた足跡は全部、
歴史になってしまうのだろうけれど、
僕たちがいた、その事実だけでいいんだ。
だからどうか、貴方達は前を向いて、
乗り越えて、生きてください。
嘘つきな僕たちより。
遺書は家の机において、
鍵は前日にマネージャーに渡しておいた。
海には何を持っていこう。
財布もスマホも要らないよね。
2人のお揃いのキーホルダーと、
ハヤトさんに初めてもらったプレゼント
でも持っていこうか。
もう、心残りはないよね。
今日で最後の、
海へは車で行った。
いつもなら、ハヤトさんと他愛のない雑談をして、
くだらないことで笑い合っていた。
でも、もういない。
……会いに行く、から。
待っててね、
海についた。
冬の海は風が強く、寒かった。
海岸に靴を置いて、
キーホルダーとプレゼント以外はここにおいてゆこう。
僕は、キーホルダーとプレゼントを握りしめて、
海へ、踏み出した。
生きてて欲しかった。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。