主人公 side
ジュノンが帰ったあと、
一日中スマホを見ていなかったことに気づき
開いてみると、
ソウタから大量のメッセージと、数件の着信履歴が残っていた。
から始まり、
最後のメッセージは
だった。
いや、勝手に殺さないでよ…とツッコミつつ、
焦る顔が頭に浮かんで、少し笑える。
てゆうか、ソウタに伝染ってなくて良かった…。
正直、……ちょっとめんどくさいけども、
心配かけたみたいだし、だいぶ体調も良いし
折り返しかけてみようかな。
そう思い、電話をかけてみると
ワンコールも鳴り終わらない内に、
安心したようなソウタの声に、
少しだけ芽生える罪悪感。
……まぁ、うん、"ほとんど"寝てたし。
嘘ではない……よね、うん。
今日のこと、誰にも言わないように
あとでジュノンにもクギ刺しておこう…。
彼らが私のことを、それだけ心配してくれた気持ちはとても嬉しい。
だけど、彼らは表に立つ人間で、私は裏側の人間。
例え、私がいなくなったってどうとでもなるけれど、
彼らがいなくなってしまうことだけは、あってはならない。
怒って止めてくれたスタッフさん、ありがとう…。
心の中で思いつつ、不本意とはいえ改めて
ジュノンに看病をさせてしまった自分を、心底情けなく思う。
"あんなこと"
ソウタの言葉に、思わず言葉が詰まってしまう。
そうだ……私、昨日、
一瞬 自分の意思で、ソウタと一線を越えてしまいそうだった。
ジュノンとだって、熱でぼーっとしてたとはいえ、
……流されそうだったし……
所属アーティストに手を出すなんてこと、
あってはならないのに……
いくら彼らが魅力的だからといって、
そんなのは言い訳にならないし
これからもっと……気を引き締めないと。
突然、真剣なトーンで
そんなこと言い出すもんだから
なんだかこちらも改めて、気恥ずかしくなってしまう。
恥ずかしいながらも、一生懸命した提案を
一刀両断されて
拍子抜けした声を出した私に、ソウタは言葉を続ける。
……あぁ、まただ。
私が知ってる、ソウタじゃない。
音楽以外のことを、こんなに真剣に話すソウタの声は、……知らない。
………それは、どういう意味………?
問いかけたいけれど、
そこから先は、踏み込んではいけないような気がして。
黙り込んでいると、ソウタはいつもの明るい声で
そんなありきたりな一言で、切られた電話。
熱のせいで、ただでさえ高い体温が
やたらと早く動く心臓のせいで
より上がっていくような気がする。
…………所属アーティストに手を出しちゃいけない、
彼らは私たちの"宝物"だから。
表に立つ彼らと、裏側の私、では
立場が違う。
そんなことは、じゅうぶん理解しているけど
………こんなん、
ときめくなって方が、無理じゃない……?
誰も居ない部屋で、呟きながら
冷えピタを貼ったままの頭を抱えた。
他の長編は、なんとなく話の流れからラストまで
決まってたりするんですけど
こっちの長編は、あんまり深く考えてなくて
ただただ自分がときめきたいがために書いてるんですが、
自然とソウタくんの攻め方がグイグイになりますね()
(ちなみに、この長編はラストがどうなるかも全く決まってません☆←)
お読み頂き、ありがとうございました。
また次回もお時間ありましたら、ぜひ…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!