彼女に腕を引かれるように、
いや、着いてきてと言わんばかりの
背中を追いかけた。
僕はこのまま
彼女の兄の墓前に行くことになるのだろうか。
初対面でこうなるのも随分おかしいけれど…
すると彼女はくるりと振り返って長い髪を揺らした。
クスッと笑い声を漏らしたのが聞こえた。
1人で家にいるのもさ、お墓に行かないと会えない気がして。と彼女は続けた。
その言葉が耳に入り頭で噛み砕くと
より一層僕は「君」のことを
忘れっぱなしにしていることを思い出させられる。
まだ君は、
この世界に取り残されているんじゃないだろうか。
まだ、君は…
芝生を踏む音で気が引き戻される。
彼女の背中は少し先を行っていた。
ここは、墓地だった。
彼女は墓石の前にしゃがみ、
その石に刻まれている文字を見つめた。
長い睫毛がほんの少し揺れた気がした。
彼女の瞳は相変わらず何処か儚かった。
僕とは違う光を放っていた。
でもその事実を前にしても、
僕の心の中は案外穏やかだった。
長い長い時間をかけて、
冬が終わり春が訪れたように。
そんな風な…君は当たり前の話が好きだった。
当たり前の話だった。普通に考えたら。
でもその言葉が、一体何を意味して、
僕に何を与えてくれていたのか………
頭が少し痛い。
雨が降る前の、そして降った後…
晴れる前の痛みみたいに。
それは痛みと言い切るには少し変で…
もっと曖昧で…けれどそれは確かに
「何かが残っている」感覚だった。
空が見えないとき、君は僕の肩を叩いて言った。
ニッと笑った君の顔は
ずっと子供っぽくて…
目からしずくが零れ落ちたのに気がついた。
僕は一体どれだけ
あの言葉に助けられていただろうか。
後悔にも似た感情が僕の胸をやわく締め付ける。
風が吹き、そらの髪がふわっと揺れる。
その姿が…
錯覚でも「君」に似ていると感じてしまって。
勝手に気持ちがざわついた。
いつのまにか差し出されていたハンカチを、
僕は大事そうに握りしめていた。
少しあたたかい、夕暮れだ。
こんにちは、春咲です。
描写にちょっと気をつけて書いたつもり…です。
凪斗くんとそらちゃんの対比をもう少し濃くしてもよかったかな…という反省になりました。
さてこれから、
凪斗は記憶を取り戻すことができるのか。
「君」と凪斗の運命の末路は?
次回の投稿をお待ちください、
ご愛読ありがとうございます!
ちなみにタイトルは「せいくう」と読むそうです
(調べました)












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。