世界の終わりは、こんなにも静かだった。
崩れかけたビルの屋上、灰色の空に落ちていく夕日。
風は冷たく、どこまでも乾いていた。
けれどその中心にいたふたりの間だけは、
痛いほど、熱かった。
銃口が向けられている先には、ホンジュンがいた。
けれど、もう”キムホンジュン”ではなくなりかけていた。
肌は青白く、血管が浮き、目は濁りきっている。
口元には、乾いた血がこびりついていた。自身の血か、それとも_________
先ほどまで、必死で理性を保っていた彼の声は、今にも消えてしまいそうなほど掠れていた。
hj「 성화…、」
その一言が、まるで祈るようだった。
hj「 …助け、て…、早く、はや、く…お願い、だ…」
ソンファの指が、引き金にかけられていた。
けれど、指先は震え、少しも動かなかった。
sh「 できない……ホンジュン。君に、銃を向けるなんて……できないんだ、
…俺達は一緒にここまで逃げて来たのに、」
ホンジュンは一歩、近づいた。
足元には割れたガラスと血の跡。
その姿は、まるで悪夢の中から現れた怪物のようだった。
それでも、ソンファには見えていた。
その瞳の奥で、懸命に”自分”でいようとする彼の叫びが。
hj「…怖い、怖…い…、お、前を、…ソンファを…ッ!!」
彼は自分のこめかみを掻きむしるようにして呻いた。
ソンファの目から、涙が溢れた。
そのまま、銃を落とす。
sh「 一緒にいよう。壊れても、終わっても、2人なら怖くない。」
ホンジュンの瞳が、微かに揺れた。
ソンファは一歩近づき、
その腐りかけた身体を、ゆっくりと、両腕に抱きしめた。
sh「 たとえ牙を立てられても、俺は君の名前を呼ぶよ。
噛まれても、壊されても、君を愛してるって、何度でも言うから…… 」
その瞬間――
ホンジュンの身体が震えた。
喉の奥から低いうなり声が漏れる。
獣のような、けれど、泣いているような声だった。
然し、それは確かにホンジュンの声だった。
hj「 ソンファ…ッ、だめだ、俺… 」
sh「 いいんだよ。最後まで、俺が君を人間にしてあげる 」
ホンジュンの牙が、首筋に近づいた。
息が荒くなる。
でも、ソンファは一度も怯えなかった。
「 君は壊れても、俺はずっと、君の名前を呼ぶよ。
김홍중… 」
ホンジュンは強ばって震えていたけど、ソンファはのその声は何処か優しくて暖かかった。
涙が落ちた瞬間、
ゆっくりと、爪が、背に食い込む。
牙が、喉元に触れる。
苦痛ではなく、
終わりの始まりでもなく、
ただ――哀しみと愛だけがそこにあった。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!