第5話

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2025/06/19 15:44 更新

世界の終わりは、こんなにも静かだった。




崩れかけたビルの屋上、灰色の空に落ちていく夕日。
風は冷たく、どこまでも乾いていた。












けれどその中心にいたふたりの間だけは、
痛いほど、熱かった。









銃口が向けられている先には、ホンジュンがいた。
けれど、もう”キムホンジュン”ではなくなりかけていた。



肌は青白く、血管が浮き、目は濁りきっている。

口元には、乾いた血がこびりついていた。自身の血か、それとも_________




先ほどまで、必死で理性を保っていた彼の声は、今にも消えてしまいそうなほど掠れていた。



hj「 성화…、」


その一言が、まるで祈るようだった。



hj「 …助け、て…、早く、はや、く…お願い、だ…」



ソンファの指が、引き金にかけられていた。
けれど、指先は震え、少しも動かなかった。


sh「 できない……ホンジュン。君に、銃を向けるなんて……できないんだ、
…俺達は一緒にここまで逃げて来たのに、」



ホンジュンは一歩、近づいた。



足元には割れたガラスと血の跡。
その姿は、まるで悪夢の中から現れた怪物のようだった。


それでも、ソンファには見えていた。
その瞳の奥で、懸命に”自分”でいようとする彼の叫びが。


hj「…怖い、怖…い…、お、前を、…ソンファを…ッ!!」



彼は自分のこめかみを掻きむしるようにして呻いた。




ソンファの目から、涙が溢れた。

そのまま、銃を落とす。



sh「 一緒にいよう。壊れても、終わっても、2人なら怖くない。」




ホンジュンの瞳が、微かに揺れた。



ソンファは一歩近づき、
その腐りかけた身体を、ゆっくりと、両腕に抱きしめた。



sh「 たとえ牙を立てられても、俺は君の名前を呼ぶよ。
 噛まれても、壊されても、君を愛してるって、何度でも言うから…… 」



その瞬間――



ホンジュンの身体が震えた。



喉の奥から低いうなり声が漏れる。
獣のような、けれど、泣いているような声だった。


然し、それは確かにホンジュンの声だった。



hj「 ソンファ…ッ、だめだ、俺… 」



sh「 いいんだよ。最後まで、俺が君を人間にしてあげる 」


ホンジュンの牙が、首筋に近づいた。
息が荒くなる。


でも、ソンファは一度も怯えなかった。



「 君は壊れても、俺はずっと、君の名前を呼ぶよ。
 김홍중… 」



ホンジュンは強ばって震えていたけど、ソンファはのその声は何処か優しくて暖かかった。



涙が落ちた瞬間、


ゆっくりと、爪が、背に食い込む。


牙が、喉元に触れる。


苦痛ではなく、
終わりの始まりでもなく、


ただ――哀しみと愛だけがそこにあった。

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