そう思ったのは朝の教室だった。
名前を呼んだのに返事がなかった。
正確には司はそこにいた。
机に座ってノートを開いている。
なのに一瞬、空気が抜け落ちたみたいだった。
もう一度呼ぶと、今度はちゃんと顔をあげる。
いつもどうりの声。
でも胸がざわつく
名簿をめくる手が止まる。
教室がざわつく
類は反射的に言った。
先生は類を見て、少し困った顔をした。
その"思い出した"ような言い方に、背中が冷える
放課後2人で歩く
言葉を選びながら、類は続けた。
司の足が止まった。
夕焼けのなかで司は笑った。
でもその笑顔はどこか薄い
即答だった。
あまりにも慣れた否定
類は確信する
類は司の前にたつ
司が驚いたように目を開く
類は司の手首を掴んだ
ちゃんと、温度がある。
ちゃんと、触れられる
それを確かめて、類は息を吐いた
司は目を閉じた
声が少しだけ震えている
その質問はあまりにも直球だった。
類は、答えを間違えたくなくて少し黙った。
正直に言った。
司の指がギュッと握られる
夕日のなかで司の輪郭が揺らぐ気がした。
一瞬、焦点が合わなくなる
類の心臓がはねる
司は、かすかに笑った。
その問いに、類は即答した。
---なのに
帰り道、類は思う
司は自分を差し出そうとしている
誰かのかわりに
類は、夕闇のなかで拳を握った。
類はそう決めた。











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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。