風雅の家を出ると、夜風が少しひんやりしてた。
あなた「うわ、夜なると寒いなぁ」
大我「昼めっちゃあったかかったのにな」
風雅「お前ら薄着やねん」
3人並んで歩く、いつもの帰り道。
さっきまで笑ってた空気のまま、ゆっくり住宅街を進んでいく。
そのとき。
「風雅ー!」
後ろから大きい声。
振り返ると、サッカー部っぽい男子が手振って走ってきてた。
友達「お前明日の練習試合の紙、まだ出してへんやろ!」
風雅「……あ」
友達「先生探しとったで」
風雅「うわ、だる」
あなた「忘れてたん?」
風雅「完全に忘れとった」
友達「今から職員室来いって!」
風雅「マジかぁ……」
めっちゃ嫌そうな顔。
思わず笑ってしまう。
あなた「いってきたら?」
風雅「しゃーないやろ……」
そう言って頭をぐしゃっとかく。
風雅「悪い、先帰っとって」
あなた「え、大丈夫?」
風雅「すぐ終わるし」
大我「兄ちゃん、また忘れたん?」
風雅「うるさい」
友達「はよ行くぞー!」
風雅「はいはい」
少し面倒そうに歩き出して、途中でふと振り返る。
風雅「……あなた」
あなた「ん?」
風雅「ちゃんと帰れよ」
あなた「子供ちゃうって!」
風雅「……まぁええわ」
小さく笑って、そのまま友達と学校の方へ戻っていった。
⸻
静かになる帰り道。
さっきまで3人やったのに、急に少し広く感じる。
あなた「風雅ってたまに抜けてるよな」
大我「兄ちゃん昔からそうやで」
あなた「たいがの方がしっかりしてるかも」
大我「え、ほんま?」
嬉しそうに笑う。
大我「あなたに褒められるん、なんか嬉しいわ」
あなた「なにそれ」
思わず笑うと、大我も照れたみたいに笑った。
少し沈黙。
街灯の光だけが、静かに道を照らしてる。
大我「……なぁ」
あなた「ん?」
大我「今日さ」
少しだけ視線を下げる。
大我「高校でもあなたといっぱい話せて、めっちゃ嬉しかった」
あなた「え、今までも毎日話してたやん」
大我「まぁそうやねんけど」
少し笑う。
大我「中学のときとはまたちょっと違う感じする」
あなた「……あー、わかるかも」
制服変わっただけやのに、不思議な感じ。
大我「あなた、学校でもめっちゃ人気やったな」
あなた「え?」
大我「男子めっちゃ話しかけとった」
あなた「普通やって」
大我「普通ちゃう」
少しだけ真面目な声。
あなた「え?」
大我「……いや」
すぐ目を逸らす。
大我「なんでもない」
その横顔が、ちょっとだけ赤い。
あなた「たいが?」
大我「あなたって昔からかわいいし」
あなた「はぁ!?」
思わず変な声出る。
大我「な、なんでそんなびっくりすんの!」
あなた「いや急に言うからやん!」
大我「ほんまのことやし……」
ぼそっと呟く。
その瞬間、変に心臓が跳ねた。
あなた「……たいが、今日なんか変」
大我「えっ」
あなた「なんか素直すぎへん?」
大我「そ、そう?」
明らかに焦ってる。
あなた「熱でもある?」
大我「ないし!」
思わず笑ってしまう。
でも。
なんか今日の大我、ちょっとだけ違う。
背も伸びて、声も前より低くなって。
昔みたいに“弟っぽい”だけじゃない感じ。
そんなこと考えてしまって、私は慌てて前を向いた。
あなた「……あ、うちもうすぐや」
大我「送る」
あなた「え?」
大我「家まで送るわ」
あなた「いや近いで?」
大我「でも夜やし」
あなた「大丈夫やって」
大我「……俺が送りたいねん」
一瞬、言葉が止まる。
街灯の下で見る大我の顔は、少し照れてるのに、ちゃんと真剣で。
あなた「……じゃあお願いしよかな」
大我「うん」
ぱっと嬉しそうに笑う。
その顔が、なんかずるかった。
⸻
その頃。
職員室前。
風雅「……はぁ」
紙を提出しながら、小さくため息をつく。
友達「お前さっき彼女?」
風雅「は?」
友達「一緒おった子」
風雅「……幼なじみ」
友達「ふーん」
ニヤニヤ笑われる。
風雅「きもい笑い方すんな」
友達「でもめっちゃ仲良さそうやったやん」
風雅「まぁ……昔からやし」
そう答えながら、
ふと頭に浮かぶ。
——並んで歩いてた、あなたと大我。
風雅「……ちゃんと帰っとるやろか」
小さく呟いた声は、
夜の廊下に静かに消えていった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!